●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●           PBeM     猪槌城(いづちじょう)                第四回シナリオ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●                                     柳井政和 ver 0.01 2000.02.05 今回は、第8話だけです。 =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=--------- ■ ■■■第8話「婚礼の儀」 ■ =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------  再び記憶の糸がつながれた。  猪槌城、城下町。≪豪雪≫(ごうせつ)は娘のことを思い出していた。下忍より、≪雪 姫≫(ゆきひめ)の件の報告を受ける。 「猪槌城城主、千重様が、雪組頭領が娘、雪姫様と挙式を上げると、町中で触れを立てて います」 「千重様が、雪姫と」  何故。「誰か、忍び込んで確かめたか」≪豪雪≫が問う。否。すぐに調べに行かせる。  城下町を占拠して、≪雪姫≫を助ける。そのために、必要とあらば、≪千重≫(せんじ ゅう)の首を取る。しかし、≪雪姫≫と≪千重≫がなぜ。≪豪雪≫は、知らせを待つこと にした。 ────────────────────────────────────────  城下町に潜んでいた月組忍者たちに、伝令が走る。≪爪牙≫(そうが)が本陣を城下町 に移したことを、月組衆に知らせるためだ。程なく伝令が戻ってくる。  ≪爪牙≫は報告を聞いて頷いた。どうやら、この城下町で跋扈しているのは月と雪だけ ではなさそうだ。あらゆる組識が、それぞれの目的のために、猪槌の城下町に集っている。 「もっと情報を集めよ。城下町の状況を把握するのだ」  短く指示を出す。≪爪牙≫は報告を待ちながら、万字賀谷で急変した。自分の周りの状 況を思い起こしていた。  猪槌の里で、かつてない何かが起こりつつある。そんな予感がした。 ────────────────────────────────────────  城下町の西、万字賀谷を通って来た移住者の多い地域。この地域にある剣術道場雷神。  その道場に、太り肉を揺らしながら、男が飛び込んできた。この道場の所有者≪蜻蛉≫ (とんぼ)は、汗を拭きながら口早に語った。 「千重様が、婚礼をなされるそうだ」  道場内にどよめきが起こる。  「相手は誰なんです」当然の疑問を≪二重≫(ふたえ)が発する。 「雪姫という、雪組の頭領の娘だそうだ。挙式は七日後」  「急だな」≪鍬形≫(くわがた)が答える。 「ああ。すぐにでも挙式を上げたいそうだが、流石に今日と言われても準備が間に合わな いからな。先程、千重様に呼び出されて登城してきた。場所は、猪槌城の正門前。武家屋 敷の辺りだな。あそこで盛大にやるそうだ。触れも町中に立てられている。  俺は、千重様に、色々と市中で必要な物を手配するように言われてきた。何せ急だ。み んなにも手伝ってもらう」  ≪蜻蛉≫は事細かに、それぞれの者に指示を出すと、雷神の道場を飛び出した。  その日以来、忍者たちの動きは、表面上なくなった。統べての勢力が、≪千重≫の婚礼 の日に動きを定めたかのようであった。 ────────────────────────────────────────  猪槌城内。≪千重≫の居室。黒衣に身を包んだ≪千重≫は、眼前にある猪槌の里の箱庭 を眺めていた。箱庭と言っても、畳三十畳ほどもある。その箱庭の西にあたる場所、万字 賀谷に、無数の小石を置いた。谷を塞ぐほどの量の小石である。  はるか西方で音が響く。その後、≪千重≫は黒衣を脱ぎ捨てた。そこには一人の若く美 しい男が姿を成していた。  「逝き秘めよ、参ろうぞ」男が部屋を出る。  「あなた様となら、どこへなりとも」女が付き従った。部屋には、≪千重≫の呪の箱庭 が残された。 ────────────────────────────────────────  万字賀谷に岩が降ってきた。巨大な岩石が空より落ち、谷を塞ぐ。≪深雪≫(みゆき) たちは、その岩の雨を避けるように蛇背に出た。 「千重め、呪を使いやがったな」  ≪深雪≫が毒づく。  「深雪様。これからどういたしますか」<氷室>(ひむろ)が、≪深雪≫に問うた。 「そうさな。まずは手始めに豪雪の娘を押さえようか。そうすれば、豪雪が悔しがる顔が 見られる。月組も皆殺しにしてやろう。雪組は、我が死の王道楽土に住まわせてやろう」  ≪深雪≫は空を見上げる。朝、白い満月が空に浮かんでいた。 ────────────────────────────────────────  猪槌城、城下町の南。清水に近いこの町では、まだ火がくすぶっていた。その地より、 少し南に淡い光が浮かんでいた。その淡い光は、徐々に城下町へと近づいていた。  空にはまだ、満月がある。 =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=--------- 今回の主なシナリオ ■忍者組織「雪組」 内容=城下町占拠、雪姫奪取 場所=城下町 ■忍者組織「月組」 内容=雪組掃討 場所=城下町 ■猪槌城護衛団「十六夜」 内容=外夷討伐 場所=城下町 ■忍者組織「花組」 内容=婚礼襲撃 場所=城下町 ■剣術道場「雷神」 内容=婚礼参加 場所=城下町 ■外夷「明光院の一党」 内容=婚礼襲撃 場所=城下町