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2011年09月16日 13:18:56
ゆきゆきて、神軍
 映画「ゆきゆきて、神軍」のDVDを六月上旬に見ました。

 1987年の日本のドキュメンタリー作品。監督・撮影は原一男。出演は奥崎謙三です。

 映画の本で何度も名前を見ていて「いつか見るべき作品リスト」に入れていた一本です。

 いやあ凄かった。凄まじいとしか、言いようがありません。文句なしで「見ておくべき作品」だと思います。

 あと、この作品を見て「カメラの存在の大きさ」を感じました。人はカメラを向けられると、色々なものを隠そうとする。そしてそれがある一線を越えると、様々なものが剥き出しになる。

 マイケル・ムーアが「生涯観た映画の中でも最高のドキュメンタリー」と語っているのも分かります。傑作でした。



● 奥崎謙三という人物

 取材対象(主人公)になっている奥崎謙三という人物が、もういきなり凄いです。Wikipediから略歴を抜粋します。

□Wikipedia - 奥崎謙三

1920年、誕生。
1941年、岡山連隊に入営。
1943年、当時激戦地だったイギリス領東ニューギニアに派遣される。
1946年、復員。船中で復員者の食料を横領しようとした船長の腹部をハサミで刺す。
1956年、店舗の賃貸借をめぐる金銭トラブルから不動産業者を刺殺。懲役10年の刑に服す。
1969年、皇居の一般参賀で昭和天皇にパチンコ玉を発射。暴行罪で懲役1年6ヶ月の刑に服す。
1976年、ポルノ写真に天皇一家の顔写真をコラージュしたビラ約4,000枚をまく(皇室ポルノビラ事件)。猥褻図画頒布で懲役1年2ヶ月の刑に服す。
1977年、獄中から参院選全国区に出馬し、神軍新聞を発行。
1980年、ふたたび参院選全国区に立候補。
1981年、田中角栄に対する殺人予備罪で書類送検されるが不起訴。
1982年、記録映画『ゆきゆきて、神軍』の撮影開始。

 もうなんというか壮絶です。アナーキストです。

「ゆきゆきて、神軍」は、この奥崎謙三の1982年以降の動向を同行取材したものです。

 普通ドキュメンタリと言えば、結論が出ないか、結論に向けての取材が多いのですが、この映画は「本当にどうなるか分からず」「結論が出たら、想像の遥か斜め上だった」という内容になっています。



 以下、ネタバレも含めて感想を書きます。

 ネタバレが嫌な人は読まないでください。



● ミステリ

 この映画は、奥崎謙三がある人物たちの死について、その真相を調べていくという話になっています。

 その「ある人物たち」というのは、激戦地だったニューギニアで、終戦時期に軍法違反で射殺された人たちです。

 当時、現場にいた人たちは口を噤んでおり、上官たちも何も語っていません。そのため遺族たちには、ある疑問が残されています。

 それは終戦前だったのか、終戦後だったのか?

 終戦前だったのなら、それは軍の命令としてなされたことのはずです。そしてもしそうなら、彼らが何故殺されることになったのか? その理由について、遺族たちは何も知らされていません。

 そして、終戦後だった場合、それは単なる「殺人事件」になります。

 この事実について、奥崎謙三が聞き込み調査をしていくというのが、この映画の筋になります。



● 事実の追跡

 この調査方法が凄いです。まさに突撃取材です。関係者の家に行き、監督がカメラを向け、奥崎謙三が執拗に事実を聞きだそうとします。

 時には責め立て、時には暴力を振るい、蛇のようにしつこく、相手が精神的に参るまで付きまといます。

 また、遺族を連れて行って精神的な圧力を掛けたり、遺族が行けない場合は、偽者の遺族を仕立てて追い詰めていきます。

 ともかく、正面突破で、何時間でも逃げさせずに話を聞きます。

 そして凄いのは、この人は何度も警察に逮捕されているので、警察扱いが上手い(?)ことです。

 奥崎謙三は、普段から周囲に警察(公安)がいて監視されているのが当たり前の生活を送っています。なので警察を顎で使います。

 彼は、相手を追い詰める際に、監禁罪にならないように事前に警察を呼んでおいたりします。また、警察を呼んでその場に常駐させることで、相手に精神的圧力を掛けたりします。

 その聞き込み調査の様子だけでも圧巻でした。



● 暴かれていく戦中のニューギニアでの地獄

 そして何よりも凄まじかったのが、徐々に明らかになっていく、ニューギニアでの地獄の光景です。

 なぜ、被害者たちが殺されなければならなかったのか? 奥崎謙三は、自身もニューギニアに兵士として行っていたので、薄々その理由を察しています。

 それは食料が不足していたからです。

 何も食べるものがない場所で、何を食べれば生き残れるのか? 兵士たちの周囲には、実は生肉があります。それを食べると兵士の数が減っていきます。

 加害者たちや、その場にいた人たちが口を閉ざしているのは、そういった非人道的な行為が日常になっていた、あの時期の戦場の悪夢があるからです。

 彼らは共食いをしていたのです。そしてそのために、一人一人、理由を付けて殺していたのです。

 そのトラウマをえぐるようにして、奥崎謙三は事実を本人たちの口からしゃべらせて、その告白の過程を映像に残していきます。

 相手がどんなに拒絶しても、何時間も居座って、罵倒し、なだめ、暴力を振るい、その言質を取っていきます。そして殺人現場の責任者へと、一歩一歩近付いていきます。

 これほど息が詰まり、目を離せないドキュメンタリーは今まで見たことがありません。

 ともかく、「凄まじい」の一言に尽きる作品でした。



● 想像の斜め上を行く予想外の結末

 そしてラストは衝撃の結末になります。

 この結末は、新聞記事として飛び込んできます。

 奥崎謙三は、首謀者の元中隊長の家に、改造拳銃を持って押し入ります。

 そして応対に出た元中隊長の息子に発砲して殺人未遂罪で逮捕されます。まさに斜め上です。

 これが、筋書きのないドキュメンタリーというのが恐ろしいです。神掛かった作品でした。



● 粗筋

 粗筋は、既に全部書いたので今回は割愛します。
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