● 2005.05.09(木)02 「空の上のおもちゃ」体験版感想

さて、どこから話を始めればいいでしょうか。

ある日、「求道の果て」の「らじ」さんから、mixiのメッセージが飛んできました。

半端マニアソフトのノベルゲームがよかったので、最新作の空の上のおもちゃを応援していると。ついては、体験版をプレイして、感想などを書いて宣伝をして欲しいと。

というわけで、体験版をダウンロードしてプレイしてみました。

プレイした理由は、「らじ」さんから話があったからではなく、絵師が「ネコにテルミン」の「kashmir」さんだったからです。この方の絵は大好きなので。

というわけで感想を書くのですが、その前に、18禁ノベルゲームに対する私の経験と、プレイしたゲームに対する評価を書いておきます。

そうしないと、私の感想をどう判断するのか、本文を読んだ人が混乱すると思いますので。




● 18禁ノベルゲーム

私がプレイしたことのある18禁ノベルゲームは「to Heart」「Kanon」「デモンベイン」の3作だけです。

物凄く話題になったゲームしかプレイしていません。

話題になったゲームでも「月姫」をプレイしていないのは「誤字が滅茶苦茶多い」という評判を周囲からたくさん聞いたからです。「えー、それは嫌だな」と思い、プレイしませんでした。社会人なので、時間は有限ですので。

さて、私がプレイした3作の感想を簡単に書いていきます。この感想を書くことで、私の立ち位置が見えてくるかと思います。

まずは「to Heart」。

これは、非常に楽しんでプレイしました。こういう明るい話はいいですね。少女マンガなどにある、ドタバタコメディのような雰囲気が楽しめました。

少女マンガには、少年マンガにはない「仲間内の、閉じた人間関係の楽しさ」というのがあります。

この「to Heart」からは、その雰囲気が非常に伝わってきました。

あと、「to Heart」で感じたのは「天然」という言葉です。実際にどう作っているのか知りませんが、「右脳で作っている空気」が伝わってきました。

それは、「少女マンガ家が若くしてデビューして、感覚が突出することで世間の闇を感じさせない陽性の雰囲気を作り出している」のに近いような感性だと感じました。

「これは素直に楽しんでよいものだ」と思い、「to Heart」は素直に楽しみました。

ゲームのシステム的にも、物凄く分かりやすい「フラグ立て」で、ほぼプレイヤーが望んだ通りにプレイでき、選択肢の間違いを犯しても、それはそれで楽しめるようになっていることに好感が持てました。

次は「Kanon」です。

こちらをプレイして最初に感じたことは「OVA的雰囲気」です。

「to Heart」が、誰もが明るく楽しめる作品に仕上がっているのに対して、「Kanon」は、コアなファンに向けた作りに感じました。

「OVA的雰囲気」と書いたのは、そういったマイナー臭を感じたということです。決してメジャーではない雰囲気。そう感じました。

それと共に「Kanon」に対して感じたのは「狡知」という言葉です。

「うわ、プレイヤーを操ろうとしているよ」というのが端々から感じられ、「素直に楽しんだらあかんよな」と思いました。プレイ時間が長いのも、ちょっと社会人には辛かったです。

ファンが多いのは分かるけど、評価としては私は「Kanon」よりも「to Heart」を上に置くなと思いました。

なんというか、作り手の意図はもう少し隠してくれるとありがたいなあと思いました。

最後は「デモンベイン」です。

これはぶっちゃけ言って、「アニメを作る予算まではなかったのかな」という感想でした。

やりたかったのは「アニメ」であって、その予算がないから「ノベルゲーム」にしたと言われても仕方がないだろうという作りでした。

まあ、クトゥルフや西洋魔術は好きなので楽しめました。

最初の10分ぐらいで出てきた人名や単語を見て、「オイオイ、そういうネタについてこられるのは少数派だろう」と思いましたが、作品としては、きちんと万人向けに仕上げてあったので、好感が持てました。

こちらは製作者の意図が透けているというか、前面に出ていたのですが、きっちりそのツケを清算している作りになっていたので、素直に楽しめました。

「to Heart」にも「Kanon」にも「デモンベイン」にも言えるのですが、18禁とついているわりには、これっぽっちもエロくありません。「18禁ノベルゲーム」と呼ぶのならば、33%は失格だなと思いました。ゲームとしても失格。「ビジュアルノベル」という呼び方もありますが、こちらで呼ぶのが適切だなと思いました。

ただ、「ビジュアル」と「ノベル」の融合という点では、相当改善の余地があるなと思いました。パソコンのディスプレイで文字を読むのは、かなり大変です。それに、横書きというのも物語を読むのには少し辛いかもしれません。

なんだか、「ビジュアルノベル」に対して否定的な意見しか書いていないように見えるかもしれませんが、絵と文字の融合という点については、「マンガ」に遠くおよんでいないというのが、現時点における「ビジュアルノベル」に対する私の評価です。

では「サウンドノベル」という言い方があるぞという意見があると思いますが、音声や音楽をつけたジャンルとしては「アニメ」や「映画」に遠くおよんでいないというのが、私の評価です。

ゲームとしても言わずもがな、エロも足りていないと感じています。ノベルとしては、小説の方が歴史的蓄積と洗練度では勝っていると思います。

ファンの方には非難を浴びるでしょうが、「18禁ノベルゲーム」の多く(全部ではない)は、開発者側のコスト面と商売面の点で有利であり、ユーザー側のプレイアビリティとしては不利だと感じています。

まず最初に、私の立ち位置を明確にする必要があると書いたのは、このように私が考えているからです。そういった前提で、私はノベルゲームを評価しています。




● 「空の上のおもちゃ」感想

さて、以上を踏まえた上で、「空の上のおもちゃ」の感想を書きます。

体験版では、1日目だけがプレイできるということでした。

私のプレイ時間は約30分。

社会人にとっては、体験版のおおよそのプレイ時間が示されているといいなと思いました。どれだけ時間がかかるか分からないものには、手を出しにくいので。

さて、内容なのですが「天文部を中心としたドタバタコメディ」といった感じでした。

1日目では、キャラクターや登場シーンの初期配置が行なわれ、微エロなシーンがあって終わりという感じです。

ファーストインパクトはそれほどなかったです。きっちりしている感じはありましたので、徐々に後半に向けて盛り上げていくプロットなのかなと思いました。そういう意味では、一般向けではなく、好事家向けなのかなと感じました。

さて、肯定的な面と否定的な面を書きます。

まずは肯定的な面。

テキストは安定しています。システムグラフィックもきれいです。音楽や、声も入っています。キャラも、「kashmir」さんの絵が好きならありだろうと思います。

いろいろと天文関係の話が出て来るので、そういうのが好きな人はまったりと楽しめるかなと思いました。

部活系のお話ですが、「究極超人あ~る」ほどの突き抜けはありません。まあ、ノベルゲームは、立ちキャラを2人ぐらいまでしか出さないのが基本なので、部活系のゴチャゴチャした雑駁感を出すのには、それなりの工夫をしないと無理だしなと思いました。

総論としては、ノベル系のゲームとしては、並以上だろうと思いました。安心して遊べる内容になっていると思います。

しかし、1日目だけの体験版ということもあり、野心的な挑戦や、革新的な提案は感じられませんでした。また、1日目だけで、全てのプレイをしてみたいと思わせる強烈なフックはありませんでした。

さて、以下は否定的な面です。

否定的な面は2つあります。

1つは絵師の使い方、もう1つはテキストに関してです。どちらも、私の個人的な好みの問題ですので、他人の感じ方は違うであろうことは、先に断わっておきます。

ゲームに絵師を起用するには、2つの使い方があります。1つは、企画に合わせて絵を描いてもらうことです。もう1つは、絵師の特性を生かした企画を立てることです。

「空の上のおもちゃ」は、前者の起用の仕方をしています。しかし、私は「kashmir」さんの絵が好きなので、後者の使い方をして欲しかったです。それが素直な感想です。

では、「kashmir」さんの絵の魅力は何なのか。

それは「溶けていく世界」です。

「kashmir」さんの絵が世界観を感じさせるのは、周囲に溶けて広がっていく感覚を絵から感じさせているからです。それは端的に言うと「枠のない絵」です。そして、「強い色(黒含む)から余白に溶けていく色彩の落差」です。

そういった「kashmir」さんの絵の特性を生かすのならば、背景はまったく違った雰囲気になっているはずです。正直言って、「空の上のおもちゃ」では背景の使い方が間違っていると感じました。

画面を全部絵で埋めるのではなく、余白を残して、不定形に白を残す背景の使い方にするべきだと思いました。

ゲーム内で使われている背景で、1箇所だけ、青空が画面の半分を占めているシーンがあったのですが、その画面は美しい雰囲気になっていました。

絵に関してもう1つ感じたのは、色彩設計で損をしているということでした。

ゲームとしての規格化された色使いになってしまっているのですが、この色設計が「ネコにテルミン」で使われている「kashmir」さんの色感覚とはだいぶ違う気がしました。

じゃあ、その色で統一されているかというと、そうはなっていません。ところどころ「ネコにテルミン」の色彩感覚が現れています。その色感覚が、背景の一部(主に自然物)で現れます。こちらの色使いに統一して欲しかったなと思いました。

あと、キャラクターの原画のサイズは倍ぐらいがよかったと思いました。

これらの絵に対する感想は、私が「kashmir」さんの絵を見たいので「空の上のおもちゃ」をプレイしたからで、素直にノベルゲームをプレイするのが好きな方には、関係のないことだと思います。

最初に、ノベルゲームに対する私の立場を明らかにしたのは、こういう感想を書くことで、普通のノベルゲームのファンの方に誤解して欲しくなかったからです。私の意見は、偏った意見だと思われるので。

次はテキストに関してです。

これも、完全に好みの問題です。

外部の作品(マンガなどの商業作品)に対するネタはどうなのかなと思いました。同人ゲームなのでありなのでしょうが、これをやると同人ゲーム止まりになります。いや、同人ゲームなので、間違っていないのですが。

あと、1回の表示で4行分の文字が入るときがあるのですが、2~3行にとどめてくれればいいなと思いました。その方が読みやすいので。

それと、これはテキストではなく、N-Scriptの問題でしょうが、キーボードを連続で叩きながら読み進めていると、いつのまにか選択肢が選択されているのは困りました。すみません、ノベルゲーム初心者なもので。




● まとめ

というわけで、否定的な意見が多いようですが、結論としては「1日目だけでは評価はできないな」というのが感想です。

それほど時間が掛かったわけでもなく、安定した内容で、並以上のできなので、私の感想を見て「実際はどうなんだ?」と思った方は、プレイしてみて下さい。

私は、最初に立ち位置を明確にした通り、18禁ノベルゲームに関しては、かなり斜に構えた見方をしていますので。

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