●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●   …………………………………………SEEK…………………………………………   第 0 回 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 柳井政和 (C)1995 Masakazu Yanai Reproduction 1998.12.19 =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=--------- ■ ■■■●オープニング●『ブレイド陛下! 早く脱出を!』 ■ =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------  老将軍ラドは叫んだ。脱出の道は既に窓しかなかった。窓を抜け堀に飛び込むしか。幾 重にも城を包囲された今、他に選択の余地はなかった。  始まりは1カ月前。ウェイン王国は突如ザイン帝国の侵攻を受けた。その兵力差は歴然 であり、帝国は瞬く間に国中を攻略していった。食料を奪い、女をさらい、ついに帝国軍 はウェイン王国の城内まで兵を進めて来た。「さあ、サラ。君から行きなさい。そしてラ スヴィル……気をつけるのだ」  王室つきの大地母神の神官サラ。王子ラスヴィル。国王ブレイドは、自分は堀に飛び込 まず、2人の若者たちを促した。  「陛下。お急ぎになられた方が」参謀ヨタが促す。  「爆炎魔球!」扉の向こうより呪文が唱えられた。その瞬間ラドの立っていた扉が吹き 飛んだ。「ラド将軍!」ヨタが叫ぶ。ラドの体は宙を舞い、ヨタの所まで飛ばされた。 「見つけたぞ! ウェイン王国国王ブレイド! 貴様の首、ザイン帝国軍軍団指揮官テス ラがもらった!」  黄金の鎧の男が叫ぶ。そして、帝国軍兵士がなだれのように侵入して来た。この兵士の 先陣を走るテスラは、凶刃をブレイドの首にたたきつけた。「取ったぞ!」テスラが首を 掲げ高らかに笑った。 「陛下!」  ラドが傷ついたその体を引きずりテスラに迫ろうとした。 「ラド将軍! ここはいったん引きましょう。我々には、まだやらなければならないこと があります」  そして、ヨタはラドを捕まえ、窓へと飛び出した。「テスラ様」兵士がテスラに問いか ける。「放っておけ。2人逃げたからといって大勢には影響はあるまい。それよりも、国 王の首だ! 我々はこの国をとうとう手に入れた!」テスラは高らかに笑った。 ────────────────────────────────────────  暗闇の中に篝火が虚ろに燃えている。炎はその体を揺り動かしながら嘲るように笑って いた。ここウェイン王城の城内には、その本来の主の姿はなく、支配者として訪れた帝国 軍兵士たちの姿で埋められていた。彼らの目は、城壁の張り出しの上で演説している男の もとに集まっていた。勇壮な整列。きらびやかな武具。一糸乱れぬ統制。帝国軍はその最 強の軍隊を誇示しているかのようであった。張り出しの上の男、帝国軍将軍ファラドは高 らかに声を上げた。「ボルト皇帝に誓って! 我らが帝国に栄光あれ!」  兵士たちの歓声が沸き起こる。この日、帝国はウェイン王国を占領した。そして帝国の 支配は幕を開けた。その様子を城内の窓から伺っている女性がいた。「馬鹿だね」その人 物はささやくような声で言った。その人物は、美しい黒髪を夜風になびかした。帝国の宮 廷魔術師ミュー。年齢不詳の美女。帝国一の魔術の使い手にして、……邪悪な存在。「愚 かな愛国者たちが。お前たちは、つかの間の白昼夢でも見ておればよい」  ミューは夜の空に向かってそうつぶやくと城内に姿を消した。 ────────────────────────────────────────  1年後。ランプの明かりはその狭い部屋を煌々と照らしていた。ここは反乱軍本部作戦 会議室。この部屋で、2人の人物が話をしている。反乱軍の指導者ラド、そして参謀のヨ タ。ラドは机の上の地図をじっと見ながら声を漏らした。「やはり、指導者となる人物が 必要だ。私ではなく、血が全ての民を納得させる人物が……」  あの日、王城を脱出した2人は堀を抜け川に出た。そしてラスヴィルとサラを探した。 しかし、彼らの姿を見つけることはできなかった。そしてラドとヨタは、帝国に抵抗する 組織を結成した。ラスヴィル王子という旗印を欠いたまま。  ヨタは静かに読んでいた本を閉じ、ラドの方を向いた。「ラド将軍。君はよくやってい るよ」  ラドは押し黙ったまま地図を見つめ続けた。 「ウェーバーの第一部隊が、王子を見つければいいですね。あと、帝国が女神の娘を探し ているといううわさ、全ての部隊長に通達しましょう」  ラドはうなずいた。そして拳を握り締めた。 ──────────────────────────────────────── 「ウェーバーさん。大変です。後方から帝国軍が!」  街道を馬で駆ける一団があった。夜の闇に紛れて王国を移動する反乱軍第一部隊だ。 「ちっ! 帝国の反乱軍狩りか。魔法に気をつけろ! なんせやつらの武器は全て魔宝具 ときたもんだ。割に合わないぜ。やつらは、魔法は魔宝具で垂れ流しだし、若い女はみん なさらって行くし、……くそっ! 俺の道具の方が絶対やつらより立派だぞ!」「ウェー バーさん! 光の矢が!」  馬で疾駆するウェーバーの背後から、光の矢が飛来した。ウェーバーは素早く剣を抜き、 振り向かずにその光の矢をたたき切った。「まだ俺たちの首を貴様らにくれてやる気はな いぜ!」  ウェーバーは、号令一下部隊を闇に散開させた。闇に悲鳴がこだまする……。 =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=--------- ■ ■■■舞台背景 ■ =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------  帝国と反乱軍の二極対立。  北方より侵略して来たザイン帝国は、圧倒的軍事力により、ウェイン王国を占領した。 ウェイン王室は滅ぼされ、唯一生き残った王子も行方不明となった。帝国は圧政をしき民 を苦しめた。また、王国中の若い娘たちを集め続けた。これは、ウェイン王国のどこかに いると言われている、大地母神の娘プリムローズを見つけるためであった。しかし、この 帝国に対し抵抗を続ける組織があった。「反乱軍」と帝国が呼ぶその組織は、帝国がプリ ムローズを探していることを嗅ぎ付けた。そして、帝国より先にプリムローズを探すため に活動を開始した。 ●[ザイン帝国]  北方の強国。荒れた土地にあるが、魔宝石の豊富な鉱脈を持ち、古くから魔宝具(マジ ックアイテム)の生産が盛んであった。皇帝ボルトの命により、将軍ファラド率いる大軍 勢がウェイン王国に侵攻した。帝国軍兵士たちが使う魔宝具はウェイン王国の軍隊との決 定的戦力差につながった(もちろん軍勢の数でも勝っていた)。 主要登場人物 ・皇帝ボルト(男/現在帝国の城内にいる) ・将軍ファラド(男/現在ウェイン王国での最高権力者) ・参謀アンペア(男) ・軍団指揮官テスラ(男) ・宮廷魔術師ミュー(女/年齢不詳の妖艶な美女) ●[ウェイン王国]  気候の温暖な小国。大地母神の神殿がある。豊かな森林と肥沃な土地を持つ。 主要登場人物 ・ブレイド(男/テスラの凶刃により死亡) ・ラスヴィル(男/現在行方不明の王子) ・サラ(女/現在行方不明の大地母神の神官、王室に仕えていた) ●[反乱軍]  帝国の圧政を覆すために日夜抵抗し続ける組織。 主要登場人物 ・ラド(男/王国の老将軍、反乱軍の中心人物) ・ヨタ(男/若き参謀) ・ウェーバー(男/第一部隊の長) ●[大地母神の神殿]  大地母神に仕える神官たちによって組織された神殿。大地母神の神官は女性しかなれな い。 ●[プリムローズ]  大地母神の娘。ウェイン王国が温暖な自然を持っているのは、プリムローズがどこかに 住んでいるためだと言われている。 ●[魔宝石]  ザイン帝国で取れる、魔法を帯びる性質をもつ金属。他の金属に魔法をかけた場合は、 その魔法は1回しかもたない。しかし、この魔宝石に魔法をかけて加工をすると、魔法の 力を何度も使えるようになる。こうして作られたものを魔宝具(マジックアイテム)と言 う。この加工技術はザイン帝国以外にはほとんど知られていない。 =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=--------- ■ ■■■今回のシナリオ ■ =---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------=---------  今回参加者を募集するシナリオは、以下の2種類です。あなたが参加するシナリオをど ちらか1種類だけ選択して下さい。 ●シナリオ01『大地母神の神殿』  帝国軍団指揮官テスラは、手勢を連れ、密かに大地母神の神殿に向かっていた。これま で何回か、帝国軍部隊が神殿を落とそうとしたが、激しい抵抗に合い失敗してきた。そし ていよいよ、指揮官自らが出向くことになったのである。目的はプリムローズについての 情報を集めること。そして折しもその時、反乱軍のヨタが、大神官に会うために神殿を訪 れていた。何も知らない神殿の人々に、テスラの奇襲作戦が始まる。 ・テスラの一言「神殿も、後々まで放っておくとやっかいな存在だ。ここらで根絶やしに  しておくか」 ・ヨタの一言「しょうがないですね。女性ばっかりの所はあまり得意ではないんですが。  大地母神の神官はみんな女性ですから」 ●シナリオ02『王の血と神の血』  反乱軍のウェーバーとその第一部隊は、ラドの命により行方不明の王子探索を行ってい た。そして、王子らしき人物のうわさを聞いて、テナンテの村に立ち寄った。しかしそこ には既に帝国軍の姿があり、帝国軍は若い女たちを捕らえ、馬車に乗り込ませていた。ウ ェーバーたちは、この馬車の中に、行方不明であった大地母神の神官サラの姿を見た。こ の時帝国軍は、奇妙なうわさをもとにある少女を探していたのである。そのうわさとは 「最近この村の近くで光をまとった少女が現れた」というものである。時を同じくして帝 国の宮廷魔術師ミューは、その様子を魔法の水鏡で見ていた。 ・ウェーバーの一言「いやだねー。また先を越されているのかよ、おい! 帝国は本当に  気が利くぜ。まったく」 ・ミューの一言「フッ。全ては予定通りに。邪魔が入るようだったら……。私も手を出さ  ないといけないわね」