史表の基本情報が公開された時期に、 主催者に送りつけた舟大家関連の想定資料です。 異文明との接触はそもそも扱ってみたいと思っていたテーマでした。 主催者に「そんな要素はありません」と却下され、 しょうがなく黒都探査に切り替えましたけど。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「史表」の中の或る組織の設定を考えてみました。 本当であればキャラクターの生い立ちや人となりについて 考えた方がいいのだろうと思うのですが、どうも一人称の文章を書くのは苦手で、 かといってなにもないのも味気ないかなとも思ったので、 それに代わるものとしてキャラクターが属する組織の設定を考えてみました。 ヒストリカルなシナリオの場合、キャラクター個人の力や行動だけでなく、 組織との係わり合いも重要な要素かなと思うので、 ま、こういうのもありか?と思った訳です。 いや、もっと正確に言うと仕事中に不意に浮かんできた考えをまとめただけで、 初めはそんなつもりもなかったのですが。 内容は「舟大家」の或る一組織の成り立ちについてです。 (というより、「舟大家の設定資料」になってしまってますが。) 公式設定(公知の事実)や歴史的必然性と矛盾するところはそんなにないだろうと思います。 まあ、読者投稿とでも思って読んでもらえれば幸いです。 「舟大家」及び、外洋探査の位置付けについて ○舟大家とは   舟大家は大家と呼ばれる商業貴族の中でも有力な五大家の一員である。   大家は取り扱う商品により、暗黙のうちに勢力範囲が棲み分けられており、   舟大家は船舶の建造・販売、中小商人向けの共同輸送航路の運営、   海上航路の安全維持、航路に関する情報提供などに携わっている。   まさに商売における基盤的役割を牛耳っているわけであり、   この商家が現在この大陸での商業活動における圧倒的優位を確立して   いるのも、或る意味必然とも言える。   (例えこの商家が舟大家とならなくとも、同業の商家が五大家としての   商業権力を得ていたであろう。) ○舟大家の組織運営   舟大家は高度に組織化された部局組織により、運営されている。   各大家も似たような傾向にあるが、船舶の建造は大人数での集団作業が   不可欠であるため、舟大家ではその傾向が強く際立っている。   ただし官僚的な組織硬直の弊害を避けるため、家長には大きな権限が   与えられ、その施策は即座に実行されるようになっている。 ○舟大家の組織構成   舟大家は以下の3つの部局により、構成されている。   @造船廠     舟大家の中心となる部局。     船舶の建造、各大家への販売、船舶の補修など   A運送局     舟大家は元々廻船業者の連合体がその基盤となっている。     これが海上運送の発達とともに規模を拡大し、     造船事業に乗り出し、現在の大家となるに至った。     専用の輸送船舶を持たない中小商人に向けて各都市間を結ぶ     海上・大河定期運送航路の運営を行っている部局である。     現在においても重要な収入源の一つとなっている。   B通商部     家長の決定した商業施策の実施、商館からの情報収集、     海図の作成・更新、航海技術の開発などの間接部門である。     商館に付属する小艦隊の運用もこの部門に任されている。     この部門が事実上、舟大家の活動を取り仕切っているといってもよい。          白大国が大陸を制圧する以前の分裂時代には、群雄諸侯が     各地に勢力を競い、また海上では海賊が勢威を奮っており、     大河・海上輸送の安全は保障されていなかった。     そのため大家は共同で交易の要衝に武装商館を配置し、     小規模な艦隊を配備、自らの手で航路の安全を図らざるを得なかった。     この商館と艦隊の管理・運営を委託されるようになったのが、舟大家である。     (もちろんそうした形に落ち着くまでには、大家間での権力闘争など紆余曲折があった。)     こうして舟大家は独自の海軍力と情報収集網を作り上げていったのである。     これが商業活動の拡大に貢献したことは言うまでもない。     (ただし軍事部門の持つ負のイメージが商業活動へ悪影響を与えることを恐れ、     自衛以外の大っぴらな軍事力の行使には積極的ではない。)     この他にも通商部には、定期航路などにおける海図・大河図・星図の作成、     航海技術の開発などにあたる部局が存在する。    ○「外洋探査局」   舟大家における外洋探査準備機関であり、その前身となる部局は   今から10年前に設立されている。   このプロジェクトの最終目標は異文明圏との定期貿易航路の確立である。   現在知識人の間では、中華圏の他にも「西域」「西胡」といった文明圏の   存在が知られているが、これらとの交易は座礁・海賊・怪物の襲来などの   大きな危険と長期間の航海を伴う冒険的な航路によるもののみであり、   定期的な貿易航路と呼べるものはいまだ確立されていない。   ※我々の世界において中華文明圏とインド洋地域との海上交易が    盛んであったのは、唐代(7世紀)、宋代(13世紀)、明代(15世紀)などです。     異文明圏にはチョウジ・胡椒・龍涎香などの香辛料、香木、象牙などの   珍重される産物が産出するため、定期貿易航路の確立は莫大な利益を生む。   しかしこれほどの長期間に渡る外洋航海を成功させるには大型航海船の開発、   海図の整備、外洋航海技術の開発など、費用も莫大なものとなるため、   国家的な支援を必要とするプロジェクトとならざるを得ない。   そのため白大国による大陸統治が現実のものとなり始めた10年前に   異文明圏との定期貿易航路の可能性を探る準備機関として、   「未探査領域海図作成班」と「外洋航海技術開発班」が設立された。   「未探査領域海図作成班」は「海図作成局」の下に置かれ、   辺境の地へ赴く舟大家との契約商人、外洋航路を通って中華文明圏へと   辿り着いた冒険船長からの情報収集、時には自ら航海しての海図作成による   未探査領域の海図作成が主な任務であった。   「外洋航海技術開発班」は「航海技術開発局」の下に置かれ、   外洋航海に欠かせない航海技術・船体構造などの開発にあたった。。   これまでに「羅占盤」「三文儀」「船体水密区画」などの画期的な航海技術の開発に   成功していたが、信頼性・耐久性が低く、舟大家の船乗りからさえも実用性に乏しい   「玩具」としか思われていない。   ※羅針盤や船体水密区画は中国では少なくとも12世紀には実用化されていたようです。   これら二つの部門は、準備段階や間接部門ということもあり、たいした予算も   計上されておらず、これまで目立った成果を上げるには至っていない。   そのため、お荷物とか金食い虫とか揶揄する声も聞こえてくる。   この二つの部局を「外洋探査局」として統合させたのが、家長になったばかりの   青美鶴である。   華々しい成果を上げていない(もちろん直接的な利益を生むこともない。)   この2部門を統合した時の彼女の言葉が残っている。   「どうせ似たもの同士なんだから、一緒にしちゃったほうがすっきりするでしょ。」   「そんな長ったらしい名前の組織って、成果を上げた試しがないんだから。」   この統合の真の狙いは白大国の大陸制圧が間近であることを睨み、   両部門の統合による相乗効果を得て、外洋航海航路を確立することにあると思われる。      以上です。 初めは適当なアイデアだったのですが、書いているうちに何やら大仰なものになってしまいました。 生来、凝り性なのでしょう。 こういう組織や歴史、地誌の設定とか考えるのは結構好きなんですけどね。 人物とか行動とか考えるのはどうも苦手です。 もしこの設定が使えるのなら、キャラクターはこの組織の一員ということにしたいなと思ってます。 でも仮に許されたとしても、これだと完全な海洋系キャラクターになってしまいますね。 内陸国っぽい白大国と、完全な内陸国の赤族の戦記物なのに、海洋系のキャラクターが シナリオに絡める余地があるんだろうか? もう少しシナリオを考えたキャラクターにした方がやりやすいのかなとも思ったり。 では。