● 本のお話 ● |
● 2003.11.22(土)01 珠玉のメイドさんマンガ「エマ」3巻 竹本泉も登場「エマ ヴィクトリアンガイド」 (森 薫) 11月25日発売今週の水曜日ぐらいに、「エマ」3巻と、「エマ ヴィクトリアンガイド」が届き、先ほどようやく読み終わりました。 左 「エマ」3巻(森 薫) 右 「エマ ヴィクトリアンガイド」(森 薫&村上リコ・共著) なぜ、水曜日に届いて土曜日に読み終わったかと言うと、「エマ ヴィクトリアンガイド」のボリュームがかなり大きかったからです。単行本と同じ厚さがあります。その厚さで、絵だけでなく文字がかなりいっぱいなら、そりゃあ時間がかかります。 この「エマ ヴィクトリアンガイド」。「副読本」と言っておきながら、かなりボリューム感のあるヴィクトリア朝時代イギリスの解説書になっています。内容は後述しますがかなりいいです。ちなみに、本のサイズは、エマの各巻と同じサイズです。本棚の同じ位置に置けるのは嬉しいです。 1巻、2巻と既に感想を書いているので、どんな本(メイド! イギリス! ロンドン! ヴィクトリア朝!)かお分かりだと思いますので、早速感想に入っていきたいと思います。 ● 「エマ」3巻さて、「エマ」3巻の内容を、5枚の画像でダイジェストで紹介します。 その兄を心配する家族 「階級(クラス)がそれほど大事だと言うなら」 「一生その上流階級(ジェントリ)として生きてやる」 エマとの別れは、ウィリアムの心にとって大きな影響を残す : : その頃 新しい職場で生活を始めるエマ 新しい職場は、多くの使用人が勤めるお屋敷だ ウィリアムとの別れを我慢していたエマだが 使用人たちのパーティーでお酒を飲み 思わず涙を流す お話はだいたいこんな感じです。別れたウィリアムとエマは、それぞれ新しい生活を始めます。しかし、お互いに相手のことを忘れられず、引きずることになります。次に出会うための伏線も用意されながら、話は進みます。 と、お話の流れとしては王道なのですが、この巻の見所はエマの新しく入ったお屋敷での使用人たちの描写にあります。 今までエマとケリーの2人だけの生活だったので、使用人の仕事や生活について詳細に描く必要性がなかったのに対して、3巻では、大きなお屋敷で色々な立場の使用人たちが描かれます。ストーリーの必然性は置いといて、この巻では主にこれが描きたかったんじゃと思わせるような内容です。趣味大爆発というか。 個人的には、アニメの小公女セーラの落ちぶれた直後の生活の所を思い出しました。エマでは、別に落ちぶれたわけでもなく、生活自体に悲劇的要素はないのですが。 色んな職種の使用人が出てくるのは、そのまま「エマ ヴィクトリアンガイド」にリンクしています。 この時代好きなんだなあということが、かなり強烈に伝わってきます。私も大好きなので、諸手を挙げて大歓迎です。 さて、このマンガでは、マンガ表現自体についても感想があるので、今回はその点についても書こうと思います。 この作者のコマ割は、最近のマンガ家では珍しく、長方形だけで構成されています。それに、時間の区切りも間白の幅で示しています。かなりクラシックなコマ割だと思います。加えて、カメラもほとんどの場合が水平です。この長方形だけのコマと水平なカメラが、感情の起伏をフラットに押さえて、エマ的時間空間を作っていると思います。 普通はコマに角度をつけたり、カメラの高さに変化をつけることで感情の起伏をつけたり、劇の盛り上げを行なうのですが、意図してかどうかその逆をやっています。そのため、抑制された時間感覚を産み出し、非常に静穏な空間を作っています。 また、この作者のマンガは時々、時間文節が楳図かずお的に妙に引き伸ばされるのですが、この巻でも随所にそういったコマ割が見られました。楳図かずおではそれが恐怖に向かうのですが、森薫ではそれが静謐さに向かうのが面白いなあと思いました。 しかし、今回の巻は何か顔のコマが多い気もします。1巻の頃よりもあからさまにカメラが顔に近くなっているというか。アップを描くのが怖くなくなったのかなあ、それとも服を描くのにだいぶ満足したのかなあ、もしくは作品と作者の距離が近くなったのかなあと感じました。私の勝手な感じ方なのですが。 あと、非常に個人的な感想なのですが、11話で出てくるミセス・トロロープが美人でかわいいです。歳は取っているのですが、表情や仕草が非常に素敵です。こういった人物は非常に好きです。いいですねえ。3巻の新登場人物の中では一押しです。このミセス・トロロープが、2人の再会のキーパーソンになりそうなので、今から楽しみです。 それでは前回同様、目次を以下に掲載しておきます。
● 「エマ ヴィクトリアンガイド」結論から言うと、非常によいできのガイドブックです。内容的には、「エマ」のガイドブックというよりは、ヴィクトリア朝時代のイギリス(ロンドン)のガイドブックです。作った人の趣味がそのまま反映されているというか。 それよりも何よりも、私が「ズルイ!!!!!」と思わず叫んだのがこれです。 特別対談! 竹本泉×森薫 ギャー!!! 竹本泉ファンなんですよ。単行本も買っているし。一時期、竹本泉的マンガとはどういうものかを調べるために、1ページごとのコマの数とか、台詞の文字数とかを調べて集計していたし。同人誌で竹本泉の絵を模写して描いていた事もあるし。 えー、竹本泉ファンの人は、これだけでも必買です(涙) 話が逸れました。 ヴィクトリアンガイドの、ガイド部分の話に戻ります。内容の充実具合は、目次を掲載するのが一番分かりやすいと思いますので、先に掲載します。
えー、マジでこのボリュームです。仕事の合間に読むペースでは、数日かかるわけです(泣) 読んでまず真っ先に思ったのは、「学生時代スチームパンクRPGのマスターをやっていた時にこの本が欲しかった」ということです。イラスト付きの職業紹介から、当時の価格まで記載された風俗やアイテム紹介、年表付きの歴史的背景紹介。資料として非常に使えます。ボリューム満点なのに、持ち歩きやすいコンパクトなサイズにまとまっていますし。 ただ、TRPGをしている場所に持って行くとすぐにボロボロにはなりそうです。マンガの単行本と同じサイズだけでなく、紙もマンガと同じですので。仕事で移動中も読んでいたのですが、今週は雨が多かったので濡らしそうで怖かったです。 本自体よい仕上がりになっているのに加え、巻末に参考文献一覧があるのもよかったです。どういう本を読んで描いているのかなあというのは気になるところですし。しかしまあ、外国の本はDover社の本の多いこと多いこと。私もよくDover社の本を買うので、なるほど、ここら辺の絵もやっぱり参考にしているのかと思いました。 以下、「エマ ヴィクトリアンガイド」内の代表的なページをいくつか紹介して、まとめにしたいと思います。 見開きの口絵イラストが、各章の始めについています。 また巻頭には、カラー口絵が数点見開きでついています。 1ページ1職業で多数の職種の使用人が紹介されている使用人ガイド。 マンガ中ではなかなか出てこない全身像を見ることができます。 一番の見所は、文句なしに客間女中(図左)です。絵の力の入れ様が違います。 19世紀末ロンドンマップ。 各スポットの解説も、このページ以降たっぷりとついています。 ヴィクトリア朝アイテム事典。 色んな事物が、挿絵と本文で紹介されています。 挿絵は基本的に作中からの引用なのですが、 作中にたくさんの要素を入れて描いているんだなあと 改めて思い知らされます。 歴史も網羅しています。 この後、延々と続きます。 かなりのボリュームです。 特別編のマンガやラフスケッチ集もあります。 ● 「アンケートハガキ」「エマ」3巻にも、「エマ ヴィクトリアンガイド」にも、毎度お馴染みの手書きアンケートハガキがついています。 相変わらずのアンケートハガキ。 もったいなさ過ぎて送れません(泣) いつも思うのですが、これとは別にアンケートハガキをつけてくれないと送れないのですが。もったいなさ過ぎて。 本当にもう、別に「送り用のアンケートハガキ」も付けて欲しいものです。かなり多くの人がそう思っているのではないかと思います。 いや、全員がそう思っているはず……。 あと、12月12日発売のコミックビームには森薫さん描き下ろしの特製ブックケースがつくそうです(参考:COMIX:大場 渉の日記:2003-11)。よみきりもののブックカバーの時と同じように、ビームを売っている本屋さんを探して歩き回らないと行けなさそうです。 ● 参考リンクエマ 3巻 森 薫 エマヴィクトリアンガイド 森 薫 (著), 村上 リコ (著) エマ 2巻 森 薫 エマ 1巻 森 薫 シャーリー 森 薫 ドレ画 ヴィクトリア朝時代のロンドン 個人的お薦め本なんですが、在庫ないみたいですね。ガックリ。 |