モネ、ルノワール、シャガールの絵がメインということなので以前から注目していた展示会です。シャガールはともかく、モネやルノワールはここ1年でだいぶ本も買っていたので、これは見なければと思っていました。
場所は渋谷駅から徒歩10分ほどの東急 Bunkamura。Bunkamura は今回初めて行きましたが、なかなかよい場所でした。Bunkamura (文化村?)という名前の通り、建物内は閑静な郊外の雰囲気を持った美術館や劇場が多数入っていました。
前回見に行った MoMA ニューヨーク近大美術館名作展は、印象派後の絵が多く、私個人としては満足のいかない展示内容でした。
代わって今回のコーポレート・アート展は、印象派からキュビズムの時代までを時代順に展示している内容で非常に満足できました。
ただ、「これだ」という、心奪われるような絵はありませんでした。絵を見に行き、1枚ぐらいそういう絵があれば大満足なのですが、今回は残念ながらありませんでした。
今回で第4回を迎えるというコーポレート・アート展。「コーポレート・アート」という名前の通り、企業所有の美術品を借り受け展示しています。
驚くべきことなのですが、今回の展示物69点は全て吉野石膏株式会社の所蔵品だそうです。100年に渡り吉野石膏が集めてきた美術品。1企業の所蔵品だけで展示会が開けるなんて凄いと思いました。
それでは以下、展示されていた絵の作家と簡単な感想をまとめていきます。
(注:文中の写真は図録を斜めから撮っているので縦に縮められています)
● 1.コロー、ミレー、ブーダン:自然へのアプローチ
暗めの絵が多かったです。個人的には目を引く絵はなかったです。
● 2.ピサロ、セザンヌ:大地の画家たち
セザンヌの絵は特に心に来るものはなかったのですが、ピサロの絵は心に来ました。
ピサロの絵の中では、モンフーコーの冬(雪景色)と、ポントワーズの橋がよかったです。色のトーンが淡く柔らかで、見ていて落ち着く絵でした。特にモンフーコーの冬(雪景色)は大きな絵なので印象が強かったです。ただ、絵の色が少し弱めな気がしました。
パッと見で楽しむ絵というよりは、部屋に飾って生活の中に溶け込ませたい絵だと感じました。
● 3.モネ、シスレー:水辺、光と反映と風
去年の冬ぐらいからモネの本を数冊買い、読んでいました。目的は、印象派的な明るい色彩でゲームの背景にも合うような絵柄の研究です。
ただ、色々と本を見て思ったのは、モネがそういう絵を描いている時期は案外短いということです。私が望んでいる絵柄の時期は思いのほか短く、だいぶ挫折していました。
今回の一番の収穫は、シスレーの絵が私の望んでいる絵に非常に近いことを知ったことです。
印象派風の筆致で、淡い色使いながら、その画面は強烈な夏の陽光を反映しているように照り輝いています。
本当に陽の反射を感じさせる絵です。そして自然を表現する色が美しい。ちょっと惚れました。
シスレー:モレ・シュル・ロワン
● 4.ドガ、ルノワール、カサット、ボナール:室内の人物、日常の生活、色彩の魔術
ドガの踊り子たち、ピンクと緑は非常に美しかったです。
個人的に気に入ったのは、少女でした。また、チケットに印刷されていた幼年期の絵の人物が、実は8歳の男の子だと知ったときには正直びっくりしました。この時期のフランスでは、男の子に女の子の格好をさせるのが流行っていたそうです。いったいどんな流行なんだ……。
ルノワール:幼年期
● 5.マティス、マルケ、ヴラマンク:色彩の革命、表現と抒情
野獣派(フォーヴ)の絵です。個人的に引かれる所はほとんどありませんでした。
● 6.ルソー、ユトリロ、キスリング、ルオー:素朴と罪、都市生活者の歌
絵とは全然関係ないのですが「アルコール依存症の少年として出発するユトリロは……」というユトリロの紹介はいかがなものかと。
これじゃあ、まるで屋根裏さんネタです。
● 7.ピカソ、ブラック、ローランサン:キュビズムとその女神
今回の発見は、ローランサンについてです。私の頭の中にあるイメージより、だいぶ暗めの絵でした。思った以上に灰色が多用されており、有彩色もかなり地味めの色でした。もっと明るいイメージがあったのですが。
また、キュビズム時代はあまり本で読んだことがなかったので知らなかったのですが、ローランサンがピカソ、ブラックたちと同じ穴のムジナだったとは意外でした。
「ピカソ、ブラックたちと一緒の場所で製作していたローランサンだが、自分にはキュビズムは向かないと悟り、袂を分かつ……」みたいな説明がおこなわれていました。
いや、普通の人はキュビズムには向かないと思うのですが。向くほうが異常だと思います。
個人的には、キュビズムの絵で本気で人の心を震わす絵を描いてる人はピカソだけのような気がします。他の人の描いたキュビズムの絵で心が奮えたことはないです。見ている点数が少ないだけだとは思いますが。
● 8.ミロ、カンディンスキー:記号と象徴、抽象に向かって
ここら辺になると、だいぶ訳が分からなくなってきます。でもミロの絵は、まだ理解可能な時期の絵だったのでよかったです。後期はさっぱり謎絵ですので。
● 9.シャガール:20世紀の語り部
シャガールの絵は空中浮遊と言われるようですが、本当に飛びまくっています。今回の絵の中には、心が奮えるような絵はなかったです。
過去に見たシャガールの絵の中では、記念日の花がよかったです。思わず足が動かなくなってしまったことを覚えています。
● 10.シャガール「ダフニスとクロエ」
連作版画です。相変わらずシャガールはぶっ飛んでいます。
今回の展示会は満足でした。次回はウィーン分離派ということで、クリムトからシーレまでの展示があるそうです。
クリムトは少し興味があります。けっこう大きな絵が多いので見ごたえありますし。あと、やたら豪華なのもたまに見ると気持ち良いです。
結局、入館料1200円、音声ガイド500円、図録2200円、シスレーの本2000円と5900円も使ってしまいました。美術関係は高くつきますね。映画だとこんなにはかからないのですが。
でもまた懲りずに行こうと思います。