2001年12月6日、午後6~8時にオンラインソフトウェア大賞の授賞式と懇親会がありました。
私は「めもりーくりーなー」で入賞しましたので、この懇親会に参加してきました。
懇親会と言えば豪華な食事。懇親会の席上で授賞式があると聞いていましたので、朝飯しか食べず、お腹をめいっぱい空かして会場に向かいました。
会場のパシフィコ横浜までは電車とバスを乗り継いで30分。4時半に部屋を出て、5時には会場につきました。
「あの、授賞式に来たのですが」
不思議そうな目をする会場のお姉さん。どうも準備がまだのようです。少し早めのつもりが、だいぶ早めに着いてしまったようです。
会場には、私とお姉さんの2人だけ。気まずい空気が流れます。お姉さんは小動物のように怯えています。
どうしようと辺りを見渡すと、もう1人お姉さんがやってきました。
「まだ少し早いようですね。奥の席で待っていてください。夜景がきれいですよ」
救われました。
案内されるままに奥の席に着席。美しい夜景を30秒ほど眺めます。
残り59分30秒。
あと119回夜景を見ないと懇親会は始まりません。誰か来ないかなあと、空腹も手伝ってかなりグロッキー状態の私。
そうこうするともう1人、年の頃が同じぐらいの授賞者が現れました。
テキスト音楽「サクラ」の山本さんです(OSPの受賞作品ページに掲載されている名前表記で書きます)。
暇と空腹で死にそうだったので早速会話を開始。互いに初対面なものの、年が近いので会話は弾みます。
山本さん「いや~、おにたまさんも受賞と聞いて、HSPの本を持ってきましたよ。サインを貰おうと思って」
るてん「ぐはっ、その手があった」
私も散々HSPを使い倒していながら、まだ1度もおにたまさんには会ったことがないのです。今日はお会いすることを楽しみにしていました。そうか、本にサインを貰うという手があったか。そりゃ記念になる。
そんなこんなで話は続き、どうにか懇親会開始。2人して立ちあがると、他の人たちは入り口付近で雑談をしているではないですか。
謀られた。
どうやら、早く来すぎた我々2人はお邪魔虫だったらしく、他の方々から隔離されていたようです。嗚呼(泣)
● 懇親会
受賞者は若い人が多く、全員ソフト開発をしているので話は盛況です。
でも、はた目から見ていると異常な会話です。ほとんどプログラムの話ばかりをしています。怪しい魔術師が肩を寄せ合って呪文を呟いているようにしか見えません。
怖いなあ。
でも話は盛り上がりました。
それでは以下、会場で実際に話をした受賞者の方々を紹介していきます。
まずは宝永噴煙禄のするめのお二方。現在大学院で工学デザインの勉強をされているそうです。
「工学デザインって、どんなことをするんですか?」
山本さんが興味津々に質問をします。
「いや、まあ。電子レンジを描いたり、ポットを描いたり」
「……楽しいんですか?」
「……いや、それはあまり」
味のある会話が繰り広げられます。
するめのお二方は1人がプログラム担当、もう1人がグラフィックや企画担当とのことでした。次の企画も温めているんですよと意欲満々でした。
次はNoah、caldixの稲葉さん。ミッション・トゥ・マーズの主役をやっていたゲイリー・シニーズや、処刑人の弟役をやっていたノーマン・リーダスを彷彿とさせるクールな顔立ちの人でした。
「年はおいくつですか?」
「19歳です」
ぐはっ、未成年か。
懇親会の前に、サクラの山本さんと私で「最近は小学生プログラマーが増えてきて凄いですね。私がパソコンを使い始めたのって大学4年生ですよ」「私もそれぐらいですね」と盛りあがっていたのですが、そういった「凄い」人種が目の前に。
山本さんが聞いた話だと、稲葉さんは凄い大学に行っている模様。住んでいる世界が違います。
でも稲葉さんは、Air や Kanon に号泣するいい人です。よかった、よかった。それほど遠い距離の人ではなさそうです。
遠い距離と言えば、するめのお二方は福岡から新幹線に乗って横浜まで来たそうです。
るてん「私は実家が北九州なのですが、新幹線は随分と時間がかかるでしょう」
するめの方「ええ、だから4時に起きて、新幹線に6時間乗って来ました。あっ、朝4時にご飯を食べたっきりだ」
思い出したように驚くするめの方々。朝4時……。18時に懇親会が始まったので、空白の8時間があるんですが。謎。
さらに通い距離と言えば、YSFLIGHTの山川様はアメリカ在住らしく不在でした。そりゃあまあ遠すぎますし。
後で聞いた話だと、過去にイスラエルの会社のソフトが受賞したときは、日本法人があるにもかかわらず、イスラエルの本社の社長さんが授賞式に出てきたそうです。社長さんやる気満々です。
みんな気合を入れて遠方から来ています。でも私だけ30分の至近距離。イスラエルで授賞式があればイスラエル旅行ができたのに。何だか少しだけ損した気分です。
そして、私にとって最も重要な、Hot Soup Processor のおにたま様。
おおっ~。会えました。握手しました。名刺交換しました。
私の作っている「めもりーくりーなー」は、HSP製のソフトです。私が子供なら、おにたま様は親。「一度きちんとご挨拶をしておかなければならない」と思っていたのです。
るてん「あの~、コミケの準備はどうですか?」
おにたま様「そろそろ追い込みが厳しいです」
ナチュラルにコミケの会話をしています。あれ?
まあ、同人をやっている人がこの時期最も関心があるのはコミケの話ですし。そんなこんなで、名刺におにたまさんのサインをもらってきました。他の受賞者の方もおにたま様のサインを貰っていて、おにたま様は大人気でした。
授賞式もつつがなく済み、食べて、話して、食べて、食べていました。お腹が空いていたので。
Vectorの方ともお話をしました。主にウィルスやワームの話を。
どうやら BadTrans は凶悪だとのことです。Vectorのメールシステムがヤバくなるぐらいにたくさんメールが来ていたそうです。「初めてじゃないかなあ、うちのメールサーバーがヤバイことになったのは」などと語っておられました。
サーカムのように、ローカルのキャッシュのWebページ内にあるURLに、自分自身を送りつけるタイプのワームはいろいろと周りに迷惑をかけるみたいです。
「Vectorが個人情報を流したから、うちにウィルスが届くようになったんじゃないか」
と、まったく分かってないソフト作者さんからの抗議メールもきていたそうです。こんなメールがたくさん来たら鬱になります。
財団法人インターネット協会(IAJapan)の方ともお話しをしました。女性の方です。
IAJapanの方は、なぜか私の趣味ログニュースのページをプリントアウトして持ってきており、「すみませんね、間違えてしまいまして」と、プリントアウトしたページをぐいぐいと私に見せてきます。
許してください、すいません。私が悪うございました。
うひゃー、根に持たれています(T_T
世の中めったなことは書けません。ちょっと敗北。
● 解散後
いろいろと話しをしているうちに、解散の時間になりました。みんな帰り仕度です。
山本さん「これから宿を探さないと」
るてん「じゃあ、うちで寝床貸しますよ」
強引にうちに泊まっていくことをお勧めしました。昔からよくあるパターンです。
うちは人がよく宿にしていくので布団もあります。会社を辞めてから、毎週誰かしら私の部屋に泊まっているような気がします。
帰りのバスを探そうとすると、目の前にするめのお二方が。
るてん「バス停の場所わかります?」
するめのお二方「わからないです。行きは走ってきたので」
走って? どうも走りたい気分だったそうです。
走ってきたのか……。
しゃべり足りないこともあったので、いろいろとソフト作りのことを話しながら歩く4人(するめのお二方、山本さん、るてん)。
駅につきません。
「行きはまっすぐ走って来たのですが、この道ではなかったです」
するめの方がボソリと一言。
いい年した4人が迷子になりました。
駅は近くに見えません。仕方がないので記念撮影をする4人。何の解決にもなっていません。
それから20分近く横浜の町をさまよい、工事のおじさんに道を聞きまくり、ようやく駅に辿りつきました。どうも、駅のまわりをぐるぐる回っていたようです。1周半も大回りで。
無事に駅に辿りついた4人は解散、山本さんと私は2次会をするべく私の部屋に向かいました。
● 2次会
2次会です。飲み会には2次会がつきものです。というわけで私の部屋で2次会開始です。帰りがけのコンビニで買い出しです。
るてん「酒のつまみを買いますけど、何か駄目なものはありますか?」
山本さん「お酒が駄目です」
2次会撃沈。
仕方がないので烏龍茶4リットルを買って2次会開始です。ひたすら烏龍茶で2次会です。結局、2人で3リットル以上烏龍茶を飲みました。茶豪な2人です。
酒はともかく、話の方は滅茶苦茶盛りあがりました。
山本さんは、テキスト音楽「サクラ」以外にも、日本語プログラム言語「ひまわり」も作っています。
私は現在、JAVA+XMLベースのゲーム制御言語を作っています。
盛りあがる盛りあがる、スクリプト言語談義。
普通、その日に初めて会った2人がスクリプト言語談義で白熱するなんてありえないです。貴重な体験をさせていただきました。面白かった。
また山本さんは学生時代、上海に留学していたそうで、その話も興味深く聞かせていただきました。
中国の裏路地でエヴァンゲリオンの同人ソフトが売られていたとか。
そのほか、物作りをする人間同士、いろいろと話しが盛り上がりました。2人の考え方はだいぶ近いみたいでした。その日は以下のような話が出ました。
・世の中には、何かを作り続けないと倒れてしまう人種がいる。たとえ1円もお金が入らなくても、時間がありさえすれば物を作り続けずにはいられない。私たちはそういうタイプの人種。
・自分のことをプログラマーだとは思っていない。ただ単にプログラムという紙とハサミを使っているだけ。プログラムも絵も音楽も同じ。違う時代に生まれても、やはり何かを作りつづけていたと思う。
そのほかにも、ソフトのコーディングの手法や、ソフト開発の手法、様々な情報を交換しました。こういったオンラインソフトの作者が交流する機会がもっとあったらよいのになあと思いました。
懇親会の会場で、おにたま様が「HSPのオフ会をしたいと思っているのだけど、全国に人が散らばっているのでなかなかできない」と言っていたことを思い出しました。
もっともっと交流して刺激をし合いたいなあと思いました。
結局深夜の3時過ぎまで話は白熱。6時間近くぶっ通しで話をしていました。
オンラインソフト大賞の授賞式だけでなく、オンラインソフトの作者がもっと交流できる機会があれば面白いのに。それが今回の感想でした。
非常に充実した1日でした。こんなオフ会なら、毎月でもやりたいと思いました。