● 2002.07.15(月)01 知識と知恵のスパイラル

● 0-1 はじめに

最近忙しかったので、あまり自分のサイト上で文章を書いていませんでした(特に長文を)。こういうときは、得てして書きたいことはあるのですが、時間がなかったりするときです。

そういった書きたいことをあまりため込んでいると、そのことに思考時間を奪われ、他の分野に思考時間を割けないという現象が発生してきます。

そういった場合どうすればよいかと言うと、考えを文章化して一旦アウトプットします。頭の思考のテーブルからその話題をアンインストールしてしまい、しかるべき時に、またその文章を読みなおし、再インストールすればよいのです。

というわけで、最近考えていたことをアウトプットしておきます。

そもそもこの話題を考え始めたきっかけは、J-oの日記跡地にて、「趣味の近い他人のブックマークから、自分が知らない優良サイトを見つける方法はないか」という話題を見たときでした。

J-o様は、ネットをかなり密度濃く使っているので、こういった他の人が求めない機能を欲しているのだろうなと思いました。

また、他のサイトで、「ニュース系サイトの存在意義がまったく分からない」といった内容の文章を読みました。これも契機となりました。

これに関しては、ニュース系サイトの方向性で情報を集めていないせいで、その方面のツールがまったく必要ない人なのだろうなと思いました。

本文は、こういったきっかけから、「知識」と「知恵」に関する私見を書いた文章です。

次章以降、「知識」と「知恵」の言葉の定義と、ここ最近の私の考えについて、文字を重ねていこうと思います。



● 1 知識と知恵

● 1-1 知的活動のアルゴリズム

人間の持っている能力の中で最も素晴らしいものは、知的活動に関するアルゴリズムだと思います。

そもそも人間は、スタート地点では、ほとんどソフトがインストールされていない、まっさらなパソコンのような状態でした。

貨幣経済というソフトウェアもインストールされておらず、まして国家や民族という概念も備わっていませんでした。科学や文学、言語や文字、ありとあらゆるものが身についていない素の状態でした。

そんな人間が、ほんの短い時間で、環境を大きく変化できるほどの力を身につけました。この速度は、驚くべきものです。

このような脅威的な成果を果たした原因は、人間が知的活動のアルゴリズムを持っていたからに他なりません。

人間は自らの知的活動を、世代を超えて高度化していくためのアルゴリズムを備えていました。

この知的活動のアルゴリズムの鍵となるのが「知識」と「知恵」です。次項では、この「知識」と「知恵」について見ていこうと思います。

● 1-2 知識と知恵

さて、「知識」と「知恵」とは何でしょう。緒論が出てくると思いますので、本文での定義を以下の通りとします。

「知識」:知的活動の情報の単位

「知恵」:複数の知識を結合する結合因子、または結合した状態

具体的例を見ていきましょう。

時は原始時代、ある所に1人の狩人がいました。

1.彼は、雨が降った後、鹿が泉に水を飲みに来ていることを知った。

2.彼は、雨が降った後、猪が泉に水を飲みに来ていることを知った。

3.彼は、雨が降った後、兎が泉に水を飲みに来ていることを知った。

4以降.彼は、雨が降った後、その他の動物も泉に水を飲みに来ていることを知った。

1~Xは全て「知識」です。

あまりにも多くの関連した「知識」を得た狩人は、1つ1つの「知識」を覚えておき、その都度思い出すことが困難だと悟りました。

結果として狩人は、「雨が振ったら狩りの準備をし、雨が上がればいち早く泉に行き、獲物を待ち伏せする」ことにしました。

これが「知恵」です。

● 1-3 知識を結ぶノリとしての知恵

前項から分かる通り、「知恵」は「知識」を結合させます。このことにより、1つ1つの「知識」を検討することなく、1つの結論を導き出すことができます。

細かな「知識」にノリを塗り、一塊に固めてしまったようなものです。これは、有限の時間の中を生きる人間にとって、非常に便利な機能です。

以下、この「知恵」の働きのプロセスを分解してみましょう。

1.「知識」が増える。

2.有限の思考時間の中で、「知識」が増え過ぎ思考時間を圧迫する。

3.思考時間の中で、頻繁に、かつより近い時間にアクセスされている「知識」がピックアップされる。

4.ピックアップされた「知識」から、より単純化された1つのルールを「知恵」として生み出す。

5.思考時間の中で、頻繁にアクセスされる対象を「知識」から「知恵」に変える。

6.「知恵」の元になった「知識」を、思考時間の中で頻繁に使用する対象から除外する。

この「知識」から「知恵」への移行を、視覚的にイメージするにはどうすればよいでしょうか。それには、インターネットを想像するのがよいでしょう。

例えば私が科学に関するウェブ・サイトを巡回していたとします。科学に関する情報を集めているうちに、科学に関する巡回先が多くなってきました。この場合、どういう行動を取るでしょうか。

全てのサイトを巡回することを止め、それらの情報がうまく集まっているサイトを巡回するように変更するはずです。

この時、最初に回っていた多くのサイトが「知識」、それらの情報がまとまっているサイトが「知恵」になります。

人間の頭の中で、「知識」が「知恵」になるプロセスは、こういった過程によく似ています。

● 1-4 知恵の知識化

こうして「知恵」によって「知識」が結合されたわけですが、ここで知的活動のアルゴリズムは、更なるダイナミズムに入ります。

「知恵」が「知識」へと変化するのです。

「知恵」は、誕生した当初は、確かな「知識」に裏付けられた奥の深いものですが、時が経つにつれ、その背景の「知識」は重要ではなくなり、「知恵」それ自体が1つの「知識」へと変質します。

これと同じような現象が、ビジネスの世界でも見られます。

最初、斬新な手法で店舗を伸ばしていたチェーン店が、ある時期から成長を止め、後発組の企業と競争をし始めるという現象はよく見られます。

斬新な手法は、陳腐化して既知の手法へと変わっていきます。

同じように、画期的な知恵は、時間が経つと当たり前の知識へと変わっていきます。

● 1-5 知識と知恵のスパイラル

複数の「知識」が1つの「知恵」を生み、その「知恵」が「知識」と変化する。そうすればどうなるのでしょうか。

結論はこうです。

「知識」は「知恵」に、「知恵」は「知識」に変化しながら、どんどん情報を圧縮していくのです。人は、どんどん「知識」の密度を上げて行っています。

この「知識と知恵のスパイラル」とでも言うべき、知的活動のアルゴリズムを持っているために、人間は短時間で高度な知的活動ができるようになりました。人間は、有限の人生の中で、処理できる情報の量を飛躍的に増加させてきました。

我々が最も驚嘆しなければいけない点は、現在の時点で、この「知識と知恵のスパイラル」が勢いを衰えさせることもなく、さらに加速度的に働き続けているということです。

ありとあらゆる手段を駆使し、人はさらなる知的活動の高みに昇ろうとしています。



● 2 インターネットで起こっていること

これらの、「知識と知恵のスパイラル」の視点からインターネットを見れば、色々と興味深いことに気付きます。

その最大のものは、これまで人間の脳の中や社会の中でおこなわれてきた「知識と知恵のスパイラル」を、ウェブという視覚を通して観察できることにあります。

ここ数年のインターネットの流れから、このことを確認していきたいと思います。

● 2-1 個人ニュースサイトの誕生

インターネットは情報が恒常的に多すぎるメディアです。この状態は、人間の脳の中で言えば絶えず「知恵」を必要としている状態だと言えます。

インターネット上の「知恵」とは、情報をあるテーマで絞り込んだり、ピックアップしたり、まとめたりすることです。

古くからあるもので言えば、リンク集、検索エンジン、ブックマークなどが「知恵」に当たります。これらは全て、「知恵ツール」とでも言うべきものです。

個人ニュースサイトは、これらのツールと同じ土俵で語られるべき「知恵ツール」です。

個人ニュースサイトは、「特定の趣味や嗜好を持った人が絞り込む」という手法で、「知識」をひとまとめにした「知恵ツール」です。

そのため、個人ニュースサイトの登場は必然と言えます。

自分の代わりに情報を集めるためのツールが、プログラムではなく、人力になっているだけです。インターネットが恒常的に「知識」過多であるのならば、この「知恵ツール」の登場は必然です。

● 2-2 孫ニュースという存在

「知恵」は「知識」へと変化します。

子ニュースと呼ばれる個人ニュースサイトが増えてくれば、それらの「知識」から「知恵」を導き出すための孫ニュースが登場します。

また、その延長線上には、ばるぼらアンテナのような子・孫ニュースサイトの集計サイトが存在します。

ただし、ここら辺までなってくると、需要と「知恵」は噛み合うかという問題が起こってきます。

子ニュース・孫ニュースサイトで、まだ「知識」が飽和していない人は、このような、その一歩先の「知恵ツール」は必要ないからです。

● 2-3 個人ニュース系サイトへの否定的意見

「個人ニュース系サイトは不用なもので、その存在意義が分からない」という意見を、時に見かけることがあります。

これは、「知識」格差と言うべき問題です。

ニュース系サイトで取り上げられるような「知識」への興味がなく、それらの「知識」に対して飽和状態になっていなければ、その方面での「知恵ツール」はまったく必要がありません。

インターネットの世界では情報を自由に集められるため、それぞれの個人が集める情報が、特定の情報に特化しやすい傾向があります。

現在存在する個人ニュース系サイトが扱う分野は狭いために、個人ニュースサイトの必要性は、個人によって大きく異なります。

そのため、個人ニュース系サイトへの否定的意見が存在するのは当然です。

またこのことは、「知恵」は偏在して発達するということを暗示しています。

特定の方向に伸び始めた「知識と知恵のスパイラル」は、インターネット上では特にその進化が早いために、どんどん他の分野より新しい「知恵ツール」を生み出していきます。

インターネット上でのホットな分野、オタク系知識に関して、こういった「知恵ツール」が多数存在するのは、「知恵」がこの分野に偏っているためだと言えます。

● 2-4 知恵ツールへの渇望

特定分野で「知識」密度が高くなっている人は、新しい「知恵ツール」を絶えず渇望しています。

はじめに書いた、J-oの日記跡地のJ-o様は、ネットへの情報依存度が非常に高い生活を送っているようです。そのため、「知恵」飢餓とも言える状態に陥っているのではないかと推測されます。

雑多な情報が多すぎて、探し出すことができない自分好みの情報を、何らかの手段で、費やすことができる時間の範囲内でいかに見つけるか。

そういった新しい「知恵ツール」への渇望の、真っ最中なのではないかと思いました。



● 3 インターネットという実験場

● 3-1 観察から参加へ

インターネットの最大の魅力は、この「知識と知恵のスパイラル」を、実際にリアルタイムで観察できることにあります。

そしてそこに、新たな「知恵ツール」を自分から簡単に提示できることが非常に面白いと思っています。

ただの個人が、インターネットという巨大な世界で、新しい知的活動の方法を提示できる。これは、知的活動に関わる人間にとって、非常に大きな魅力だと思います。

インターネットの「知識と知恵のスパイラル」を観察するだけでなく、そのスパイラルへ参加していきたい。インターネットを活動の一拠点としている者としては、そう思わざるを得ません。

● 3-2 加速する知的活動

現在、人類の知的活動は加速しています。

ムーアの法則ではないですが、人間は時代を経るごとに、知的活動の効率をパワフルに進歩させてきました。

これからの知的活動が、さらに活発になるのは目に見えています。

そんな活動の中に、一石を投じられる新しい「知恵ツール」を提案できればと日々思っています。



● 4 おわりに

ダラダラと長文を1時間45分もかけて書いてしまいました。

私は、人間の考えは、ソフトウェアのようなものだと思っています。

世の中にはいろいろな考え方があります。これらはソフトウェアと同じで、その考え方を知らなければ(インストールしていなければ)、その考え方の先にある世界を使いこなすことができません。

私自身、多くのソフトウェアを脳にインストールするべく日々を生きています。

他の方の考え方を吸収すると共に、他の方の知的活動の刺激になれるような機会があればと常々考えております。

この文が、誰か1人でも、知的活動の刺激に繋がれば幸いです。




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