● 2003.05.08(木)01 音楽とマンガ

常日頃、私は「音楽には勝てない」と思っています。音楽を聴いたときの肌で感じる戦慄や、血液を伝わって行く身震いを音楽以外ではなかなか感じることができないからです。

これは、個人の感受性に根ざすものなのかもしれません。そうでないのかもしれません。少なくとも私は、「音楽には勝てない」というコンプレックスを常日頃抱いています。

音楽と同じような衝撃は、時にマンガで得られることがあります。マンガを読んでいるときに、魂を抜き取られるような影響を受けることがあるからです。

最近、久しぶりにマンガで魂を持って行かれました。ここ数年、少女マンガを読んでいなかったせいもあるのですが、「彼氏彼女の事情」という少女マンガで魂を持って行かれました。

悔しいというか、やられたというか、反省というか、虚脱感というか、いろんな感情で数日間精神的に死んでいました。思考が完全に断片化され、まともに仕事になりませんでした。精神が、いかりのない船のように、だいぶ引きずられて流されてしまいました。仕方がないので既刊の単行本を全部購入して、リハビリを兼ねて自分の中で消化する作業をおこなわざるをえませんでした。

少女マンガは、時に音楽と同じように自分の立っている足場を丸ごとすくって瓦解させてくれます。美術館で、心を貫く絵を見た瞬間に、10分ほど体が動かなくなるのも似たような理由かもしれません。

1つの音でも、一片のメロディーでも、1つのシーンでも、1つの物語でも、自分の存在というものに疑問を投げかけてくる作品に出会うと、人間の心はあっけなく平衡を失うものだなと改めて気付きました。

それを生み出した人間がいて、それを生み出していない自分に気付いたとき、瞬間的に自分自身を全否定しまう本能が人間には備わっているのかもしれません。感動と絶望は表裏一体の罠だと思います。感情の触れ幅が激しいほど、日常というベールで覆い隠している、自分自身の空虚さと、足場のもろさに気付かされてしまいます。

同じ作品でも、そういう衝撃を受ける人もいれば、受けない人もいます。そう考えると1人でも多くの人に何らかの影響を与えられる作品を作るべく、人生を削らないといけないなあと思います。

少なくとも、今の私を早く打ち倒し、次の段階に行かないといけないなと思います。まだ、何事もなしていないですので。そもそも、スタートにも立てていない状態ですし。

人生は残り少ないわけですし。いつゲーム終了になってもおかしくないですので。

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