● 2003.09.20(土)01 鈴木みそ 「銭」 壱巻 感想

18日に、ビームにて連載されている鈴木みそさんのマンガ「銭」の壱巻が届いたので、さっそく読みました。2日遅れですが、感想です。


表紙

「銭? お金のマンガ? ドロドロしたマンガ?」と思ったあなたは早合点です。普通の人が「お金のマンガ」と言われてすぐに思いつくのは、「ナニワ金融道」とか、「ミナミの帝王」とかの、コテコテ大阪ノリの濃い~いマンガかもしれません。

「じゃあ、『銭』は濃くないの?」

「濃いですよ~、生々しくて」

「銭」というタイトルの通り、「お金にまつわるエトセトラ」のマンガなのですが、他の「お金マンガ」とは一線を画しています。

「どこが画しているの?」それは、「ともかく細かく、実際の数字をバンバン挙げてくるところ」です。

そう、“実際の数字”を挙げてくるのです。「原価計算」を延々とコマ割でやるようなマンガは、なかなかありません。それも、今このマンガが載っている雑誌ビームの原価計算を……


マジで数ページに渡って原価計算を延々とやっています
でも、それがエンターテインメントになっているのは凄いです

マンガ読みとしては、こんなことをされたら、買わずにはいられません。参考資料として、本棚に置いておかなければなりません。

マンガについていろいろと勝手なことを言う前に、まず現実のお金の話を知っておかないといけないなあと思わせるエピソードです。「何万冊以上で黒字」とか、そんな生の数字がバンバンと出てきます(^^;


さて、作者の鈴木みそさんについて少し書きたいと思います。鈴木みそさんと言えばファミ通の取材マンガで思い出す人が多いでしょう。私も真っ先にファミ通を思い出します。

小さなコマで、多いネームで、延々と取材の様子をマンガ化していくあのスタイル。かなり印象に残るので、1度読んだ人は忘れられないでしょう。

今回の「銭」は、ファミ通の時のようなルポマンガではありません。でも、鈴木みそさんの持ち味というか、武器を非常に活かしたマンガです。

では、鈴木みそさんの武器とは何か。それは、「説明力」です。編集能力と言った方がいいかもしれません。普通だとマンガとして破綻するような情報量を、1ページにぶち込める構成能力が、鈴木みそさんの持ち味です。

氏のマンガは、絵描きというより、編集者的な切り口で描かれるスタイルのマンガです。このスタイルは、お金の話を細かくするのに非常に合っています。非常に突っ込んだ計算までコマ割内で行なってしまう「銭」は、鈴木みそさんの本領発揮といった感じです。

そして、いつもの裏話的ノリで、バシバシと突っ込んだ話を展開してくれます。「大人の社会科見学」といった感じです。いいですねー。


担当さんの胃が痛くなりそうなお話


マンガは、お金にうるさい女幽霊「ジェニー」と、交通事故にあって生霊状態の「チョキン」の2人(HNK的子供&お姉さん構成)で進んで行きます。第1巻では、事故死の場合の保険料、漫画雑誌の値段、アニメの値段、コンビニの値段など、様々な値段(非常に細かい)を、ギャグを交えながら解き明かして行きます。

基本的に、子供の「チョキン」がいろんな値段について勉強していくマンガなのですが、子供と言うよりは「新入社員」や「就職活動をしている学生さん」に読ませたいマンガだなあと思いました。仕事や社会の現実を、お金の面から楽しく理解できるマンガです。

「なんだ、儲からないのか~~!」「俺の給料が低いのは、こういうことだったのか~~!」とか、思わず叫んでしまうこと請け合いです。

それでは少し、各話について感想を書こうと思います。第1巻には、以下のエピソードが掲載されています。

  • いのちの値段
  • マンガ雑誌の値段(2話分)
  • アニメの値段(3話分)
  • 賭博の魂
  • コンビニの値段(3話分)

いのちの値段

保険料の現実を1話で描いています。って、さすがに詰め込みすぎじゃ~(^^; って思う濃度で一気に描かれています。連載1話目の意気込みが濃度で伝わってくるお話です。

子供が死んだ場合の、男女による保険料の格差なんて、親にしちゃあ、たまったもんじゃないだろうなあと思いました。

マンガ雑誌の値段

本当の意味での連載1話目。いきなり、掲載誌ビームのお金の話を暴露しまくりです。うーん、ビーム編集部が太っ腹なのか、鈴木みそが凄いのか、分からないけど読者的には面白いからいいや。

ともかく、こんなに暴露していいの? と思わされる内容で、非常にいいです。やっぱり、やるなら、ここまでやらないと駄目だよなあ。1ページの原稿料まで計算しているのはまいりました。そりゃあ、単行本が出なかったら、マンガ家さんブチ切れるよなあと納得。

アニメの値段

最近のアニメ業界の問題点、人材の空洞化などを鋭く描いたお話。「マンガ雑誌」「アニメ」と、ビーム読者層のツボを突きまくりです。


動画マンはお金がないと言うが……

単なるお金の話だけに止まらず、アニメのテクニックなんかも織り交ぜて紹介しているのはうまいなあと思いました。お金の話だけをすると構成がマンネリ化するので、その業界特有の情報をうまく料理して入れているのはさすがです。

アニメ業界の問題点が色々と浮き彫りにされていて、解決策はまったく示されていないのですが、作者が抱えている不安というのは伝わってきました。アニメやマンガは、消費財ではなく、文化なんだから、どうにかしないと! そう紙面が叫んでいました。

賭博の魂

挿話的内容。

コンビニの値段

コンビニがいかに儲からないかを赤裸々に激白する回(違う)。


利益の6割って、年貢の取り立てみたいです

いや、現実問題として自殺者が多い話とかは切実だよなあと思いました。昔友達がコンビニ本社の仕事をしていたので、自殺者多い話は聞いていたので。

賭博の魂で出ていた女の子が引き続き出てくるのですが、この子が何気にかわいいです。ズルイ。


楽しいだけでなく、ためになる1冊でした。特に、「マンガ雑誌の値段」の回は秀逸でした。マンガ読みの人は必読です。

発売は9月25日だそうです。


最後に、鈴木みそさんに関するリンクをまとめておきます。参考にしてみて下さい。

以下、オンラインで読める、鈴木みそさんのマンガです。

レトロゲームファクトリー
顔貌売人 ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬
裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬
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マンガで分かる
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