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[レポート] セミナー スタジオジブリの3D作法〜平成狸合戦からハウルの動く城まで〜 感想

http://www.comsup.jp/info/info041030.html
2004/11/27(土) 05:06:02
1つ前の記事:ドット絵ペタペタ
 本日は、ジブリのデジタル作画監督の片塰満則(かたあま みつのり)氏のセミナーを聞きに行って来ました。
 片塰氏は、リンクスという会社で、「マクロスプラス」のCGディレクターをしていて、その後ジブリに入社しました。「もののけ姫」以降CGアニメーターとしてジブリの作品に参加。「千と千尋の神隠し」以降は、デジタル作画監督をされている方です。

 私自身はアニメオタクではありませんが、ジブリの作品は好きでよく見に行きます。前回の「千と千尋の神隠し」は、2回見に行きました。なので、その舞台裏を聞くことには興味があり、セミナーの参加を申し込んでいたわけです。実際に諸々の話を聞けて、非常に面白かったです。
 聞いただけでは忘れるので、メモ代わりにここに記憶を頼りに色々と書き留めて置きす。(話の順番は、私が勝手に記憶を再構築して整理しています)

● 片塰氏とジブリの出会い

 元々リンクスという会社にいた片塰氏は、「マクロスプラス」の仕事で、CGとデジタルの融合を果たせたと思いました。そこで、この技術力で外部からの発注を得られないかと考え、ジブリに営業プレゼンに行きました。
 これは飛び込み営業ではなく、リンクスの社員の中に、高畑監督と出版社時代に知り合いだった人がいて、「ジブリにも営業に行きなよ」という紹介があったからです。

 さて、ジブリに営業プレゼンに行った片塰氏ですが、その場で宮崎監督も同席していました。
 宮崎監督は、「マクロス7」(だったと思う)のオープニングで、地上からスペースコロニーの外に、カメラが勢いよく引いていく映像(アニメ用に描いた絵を3Dのモデルにテクスチャーとして貼って実現)を見て、えらく感心したらしく、1人で何度も巻き戻して見ていたそうです。
 片塰氏いわく「人の話も聞かず、ずっと巻き戻して何度も見ていた」という状況だったようです。

 そしてその日の帰り際に、宮崎監督から「何かあったら連絡しますので」と言われ、その場はそれで会社に戻りました。
 だいたい業界では、「何かあったら」というのは「何もない」と同義語なので、連絡はないだろうと思っていたら、数ヶ月後に宮崎監督から、「ジブリ実験劇場「On Your Mark」で、CGを使わないと表現できないカットがあるので話しをしたい」と連絡がありました。
 この「On Your Mark」で、片塰氏はジブリの作品に初参加することになりました。

 その後、ジブリからリンクスに発注して片塰氏が制作していたのではコスト的に見合わないということで、片塰氏はジブリに入社。丁度これは、「もののけ姫」の制作で、デジタル化を推進する時期に当たります。
 片塰氏は、この「もののけ姫」からジブリのデジタル作画に本腰を入れて関わることになりました。
 私の本棚にある「もののけ姫」公開時のプログラムを見ても、デジタル化のことは非常に全面に押し出されて書かれています。ジブリのデジタル化の波が、この時期に集中して行なわれたことが窺われます。

 ただ、「もののけ姫」の時には、2時間13分中、デジタル作画班が何らか携わった部分は、全部合わせても15分ぐらいだったそうです。
 最初はデジタル班の仕事だった部分(たたり神を3Dで表現)がなかなか上がらず、気の短い宮崎監督が、普通の作画にそのいくつかを回してしまったというエピソードもあったそうです。
 (気が短いという話でしたが、「半年待って0カット」という状態だから回したということでしたので、その判断も妥当かなあと思いました)

● ジブリのデジタル化

 さて、なぜジブリはデジタル化をしなければならなかったのでしょうか。
 新しい表現を求めてというのは二次的な要素で、実はもっと切実な事情があったそうです。それは、「画材」です。

 ジブリのアニメでは、だいたい1本の作品を作るのに600色ぐらいの色を使うそうです。また、色自体は2000色ほどストックしているそうです。
 当時、このセル画用の絵の具は、主に2つの会社で作られていました。そのうちの1社の社長が代替わりになり、そのとき息子が仕事を継いでくれなかったために、この2000色の絵の具の半分が調達不能になりました。
 これがデジタル化をしなければならなかった最大の理由だそうです。

 また、筆の問題もあったそうです。筆は国産の狸の毛が最高だそうですが入手難になり、その他の画材も年を経る毎に調達不能になる物が多く、デジタル化は必要に迫られての移行でした。
 そのため、ジブリではデジタルに移行した後も、制作部署はアナログの頃のまま残り、部署のいくつかがデジタルでの作業に置き換わるという体制になったそうです。
 またデジタル作画班(CG部門)も、動画などの編集前段階の素材と同列に、あくまで編集前の素材を提供する一部門として位置しているそうです。そのため、実際の編集作業はノータッチだそうです。あくまで、「アナログの時の作業工程の幾つかがデジタル化されただけ」というのが、ジブリのデジタル化の導入手法でした。

 このジブリのデジタル化の中でも面白かったのは、画像をデジタルに取り込む手法です。
 ジブリでは、スキャナで画像を取りこむのは「白黒の線画だけ」ということでした。背景などの「色を塗った絵」は、デジカメで撮影するという手法を取っているそうです。デジカメは600万画素(横3000ドット)のもので、天井からぶら下がっているデジカメで、机の上に置いた手書きの絵を撮影をするそうです。
 これは、フラットヘッドスキャナで絵を取りこむと、紙や絵の具の凸凹までも読みとってしまい、「紙に描いた絵」に見えてしまうからだそうです。
 デジカメで撮影することで、紙とレンズの間に空気が入るので、「空気を通した風景のような見た目」を得られるということでした。
 これは実際比べてみると、大きく違うそうです。

 デジタル化は大きく分けて、「色塗り」「デジタル作画(CGでないと無理だったり、コストのかかり過ぎる表現を原画から動画まで行なう)」「デジタル編集」の3点に分かれているようでした。

● ホーホケキョとなりの山田君

 さて、「もののけ姫」の後、ジブリのデジタル化のノウハウは、高畑監督の「ホーホケキョとなりの山田君」で大きく前進しました。
 片塰氏いわく「高畑監督は温厚な外見に似ず、過激な方で……」ということで、「折角デジタル化をするのだから、デジタルでしかできない表現にとことんこだわって作ろう。水彩画風のアニメにしよう」と言い、周囲のド胆を抜いたそうです。

 この映画で、アナログとデジタルを融合させる実験的手法が多数試みられました。この中から、いくつかの手法を紹介します。

 水彩画風の絵のアニメは、「線画のアニメーション」と「水彩画風の色だけのアニメーション」「マスク処理をするマスクだけのアニメーション」と、3つのアニメーションを作り、それを合成しているそうです。
 絵とマスクを使って背景とキャラクターを合成する手法は、ゲームの世界では古くから行なわれている手法です。これをアニメで全編やっているのかと思うと、かなり眩暈を覚えました。

 街の上空を飛んで、足元の家がどんどん流れて行くシーンでは、3Dモデルを作り、その輪郭線だけのアニメーションを手書きで描き起こし、さらに水彩画風の色を3Dモデルにテクスチャとして貼り、最終的に合成して映像を作ったそうです。

 「となりの山田君」の3DCGを語るときによく語られる「波のシーン」は、3Dモデルで作った波をレンダリングして、それを画像編集ソフトで何枚にもレイヤー分けをして、それぞれ細かな処理をして最終的に合成するという気の遠くなりそうな手間をかけているとのことでした。
 このやり方を片塰氏は、「絵の具の層を重ねていくように」と何度も語っていました。

 片塰氏は、「となりの山田君」で、「アニメって絵なんだ」ということを改めて感じたと言っていました。リアルな表現をするのではなく、あくまで「絵が動いている」。それがアニメ。このことに気付いたことは、その後の作品を作る上で、非常に勉強になったそうです。

 「となりの山田君のエピソードで面白かったのは、この映画の試写を見た宮崎監督が「何でこんな物を作ったんだ」と言い、そのまま会社から帰っていったというエピソードでした。
 その後、「あの波は良かった」と波のシーンを珍しく誉めてくれたそうです。しかしそのすぐ後に、「でも、あの波のあとに松林はないだろう。なぜあの波のシーンのあとに、水没した都市を出さないんだ」と憤慨していたそうです。いや、そんな映画じゃないし……。
 波のテクニックは、その後「千と千尋の神隠し」に活かされ、様々な水のシーンで応用されたそうです。

● 千と千尋の神隠し

 「千と千尋の神隠し」の技術で面白かったのが、お風呂でボコボコとお湯が盛り上がるシーンの手法でした。
 これはボコボコと盛りあがる3Dの球体のようなものを動かしているのですが、これをそのままレンダリングしてしまうと、オブジェクトとオブジェクトの継ぎ目がはっきり見えてしまい、見た目が悪くなります。
 そこで、このモデルの動きを真上から見た図をまず作ったそうです。これは、等高線のように、高さを計算して、その高さを白黒のグラデーションとしてレンダリングした物です。
 そして、その高さの情報が記録された画像の繋ぎ目の谷間部分を画像編集ソフトのフィルターでぼかして、その後、白黒を高さとして計算させるソフトでもう一度レンダリングするという手法を取っていました。これで継ぎ目は完全に消えます。
 なるほど、いくつかの手法を組み合わせることで、狙った効果を獲得しているんだなと思いました。

 また、擬似効果線を作っている手法も面白かったです。
 細い路地などを早いスピードで駆けていくシーンなどでは、手前(画面周囲)に来たものは凄いスピードで過ぎ去るので、ボケた感じで見えます。これは、車で高速道路を移動する時の窓に映る景色を考えると分かりやすいです。
 この効果を普通に表現すると、「手前をただぼかすだけ」というやり方で終わってしまいます。
 「となりの山田君」で「アニメは絵なんだ」という基本に立ち返った片塰氏は、「手前でぼける部分には、漫画の効果線のような線を発生させて、絵的な演出効果を与えるのが良いだろう」と判断し、効果線の効果を与えていました。

● ハウルの動く城

 今回の「ハウルの動く城」では、デジタル作画班のメインの見せ場は「動く城」のシーンです。
 この城は、セル塗りではなく、ハーモニーという手法が使われています。このハーモニーは、手書きの描き込みの質感を持ちながら、輪郭線もあるという表現です。
 ハーモニーは、セルに線画をトレースしたあと、セルに細かな描き込みをしていくという手法です。セルなので、一番最初に描いた色が一番手間に来るので、ハイライトや光沢、表面の汚れなどの部分から描いていくという、通常の絵とは完全に逆の手順で作成されます。

 このハーモニーの絵を担当している方は女性の方で、「ナウシカ」の王蟲を描いていた方です。この方は長らく子育てで第一線を退いていたそうですが、今回の「ハウルの動く城」では、「子供が中学生に上がり手が懸からなくなったから」ということで、久しぶりに現場に復帰されました。宮崎監督は「これでハーモニーが使える」と、たいそう喜んでいたそうです。

 今回の「動く城」は、ハーモニーで描かれた一枚絵を、デジタル作画班がフォトショップでパーツに分解して、さらに城の動きで見え隠れする部分をフォトショップのスタンプツールで補完し、それを3Dモデルに貼りつけて表現したそうです。
 ただし、フルモデルは作らずに、書割のような3Dモデルで、各パーツの距離感は付けるというやり方を取っていました。
 完全な3Dモデルを作らない理由は、「各カットによって城の形やパーツが変わるから」だそうです。宮崎監督は、それぞれのカットで見栄えがするように、城の形を変え、パーツを付けたり取ったりするそうです。そのため、正確な図面が引けず、3Dモデルも作れません。
 あるシーンでは存在するパーツが、他のシーンでは「見栄えが悪い」という理由で、取り除かれたり、他のシーンでは「これが付いていた方が納まりがよい」という理由で、違うパーツになったりします。これでは普通の手法では3D化できないなあと思いました。

 また、わざわざ3Dモデルを作るまでもないシーンでは、パーツ分解をした後、アフターエフェクトで動かして動きを付けていました。こういうのもありなんだなと思いました。

 他に解説をしていたもので面白かったのが「旗」の描写です。片塰氏が、「作画的な嘘を再現」「嘘をついた計算」と言っていたアプローチの仕方です。
 「ハウルの動く城」では、「無数の旗がなびくシーン」が多くあるのですが、これを手書きで書いていると大変です。そのため、デジタル作画班が担当することになりました。

 旗をクロース(布)シミュレーションで単純にレンダリングしてしまうと、リアルになり過ぎてしまいます。端的に言うと、光の部分と影の部分が複雑になり過ぎるのです。
 そこで、旗の上の部分は明るくなりやすく、旗の下の部分は暗くなりやすくして、アニメのセルで実際に描かれる影の動きにより近い、「嘘で、大雑把な動き」を実現していました。
 リアルとアニメのどちらに表現を振るかは、その都度判断が必要で、旗とは逆に「リアルに反射光を表現しているシーン」の解説もありました。

 アニメ的表現で「なるほどな」と思ったのは、「籠」が回るシーンの解説でした。
 このシーンは、地球儀のような丸い鳥篭を頭に思い描いていただくと分かりやすいです。この鳥篭がぐるぐると回ると、地球儀の経線にあたる部分が順に回って行きます。
 このようなシーンでは、経線が視界の両端にある場合は動きがゆっくりで、手前に来た時は素早くアニメでは動かすそうです。強調的表現という奴です。
 これを再現するために、経線部分にあたる籠の縦方向の線を全部違うオブジェクトにして、それぞれ回転速度を制御して、籠がアニメ的に回転するようにしていました。

● 質疑応答時間

 質問の答えでまず驚いたのは、デジタル作画班の作画のやり方です。
 デジタル作画班の人数は6人だそうですが、特にプログラマもおらず、既存のツールを、うまくアイデアで使いこなして、全ての作業をまかなっているそうです。
 ハリウッドなどとはまったく違うなと思いました。

 ハリウッドと違うと言えば、ピクサーなどでは絵コンテは最初3人ぐらいでスタートして、最終的に仕上がる頃には20〜30人ぐらいが分業して絵コンテを描いているそうです。
 対してジブリでは、絵コンテは宮崎監督が1人で全部描くそうです。完成した宮崎監督の絵コンテは、だいたい7cmぐらいの厚さになるそうです。ジブリでは脚本も存在せず、「絵コンテ=脚本」という開発体制だそうです。

 さて、質疑応答では、私も質問をしました。質問内容は3つ、「解像度」「データ量」「保存管理」についてです。

「解像度」

 本番の解像度は、2048×1108ドットだそうです。これに加えて、上下に1割ずつマージンが入るので、実際は横2400ドットぐらいになるということでした。
 ちなみに縦横比は1:1.83だそうです。基本的に8bit(一般的な言い方では24bitとのこと)画像で、微妙なグラデーションが必要な時は16bitを使う時もあるそうです。

「データ量と保存管理」

 データはサーバーで集中管理しており、1000BASETのLANで繋がっており、データの保存領域のサイズは2.4テラバイトだそうです。この保存領域に、部署ごとのフォルダーが作られており、データは全てここに保存するようになっているということでした。データは、必ずここに保存しないといけないそうです。
 これらのデータは、夜中に自動的にβのテープにバックアップが取られます。ただし、これはアップデートされた差分のデータだけです。完全なバックアップは日曜日に丸1日かけて行なわれます。この日は会社は必ず休みになるということでした。

 このデータは、最低でも2週間前まで遡れるようになっており、データを誤って削除しても大丈夫なようになっているそうです。
 こういうバックアップ体制ができるのも、アニメの全工程を一貫して行なえるようにスタジオを作ったからだなと思いました。93年にスタジオを作ったときの宮崎監督の目的が、「全工程を同じ場所でできるようにする」だったそうです。そのことが、ここで生きているなと思いました。

● 懇親会

 その後、10人ぐらいで懇親会があり、私もその会に出席して来ました。
 取り敢えず面白そうな話が聞けるだろうと思い、片塰氏の横に座り、色々聞いて、私も質問をしました。
 その中で感心した話を2つほど書いておきます。

「デジタルになって色の面で変わったこと」

 絵の具を指定して色を塗るというデジタル化前の環境から、デジタル化後になって、色の決定・選択がどのように変わったのか興味があったので、片塰氏に聞いてみました。

 この質問をした理由は、コンピュータが絵の世界に導入されて、最も変わった点は、「自分の望む色を瞬時に選べるようになったこと」だと私が思っているからです。
 過去、人類は目指す色を手に入れるために、数多の画材を試してきましたが、デジタルの時代になり、それは数値で簡単に入手できるようになりました。私はこれは革命的なことだと思っています。

 さて、ジブリの話に戻ります。
 デジタル彩色に移行した当初は、絵の具をフィルムにした状態の色を再現することに力を入れていたそうです。絵の具を塗り、フィルムにしたときと同じ色になるように、コンピュータで塗った色を、同じようにフィルムにして確認していたそうです。
 今は、実際にスクリーンに投影した状態になるようにモニターをキャリブレーションして、そのモニターの色を見ながら彩色しているそうです。

 デジタル化当初と今とで大きく変わった点は、色を塗る人がRGBで直接色を指定するようになったことだそうです。
 色というのは、面積や周囲の色で、その見え方が微妙に変わります。セル画の頃の色は、そういった色の見え方の変化を無視して、同じ色で塗るという、言うならば「乱暴な色の決め方」をしていたそうです。
 しかし、デジタル化の結果、好きな色を数値で指定できるようになりました。そこで、実際に人間の目に見えるときに同じ色になるように、色をその都度決めて塗るようになったそうです。そのため、同じキャラクターの同じ箇所の色でも、「全カット、色(RGB値)が違う」ということでした。
 そういう微妙な見え方の差を塗り分けているのは、全然気付いていなかったので、大いに参考になりました。

「BGM」

 これは前から気になっていたことなので、この機会に聞いてみました。
 「ナウシカ」や「天空の城のラピュタ」の頃のBGMは、映画として音を聞いていると非常に緊迫感があり、迫力のある音楽なのですが、CDとしてサントラを買って聞くと非常に耳障りに聞こえます。映画と音楽単体では、まったく違う音に聞こえてしまうのです。
 対して、「千と千尋の神隠し」では、映画のBGMは普通の音楽で、そのまま音楽単体で聞いても成り立ちます。この差は一体何なのかということを聞いてみました。

 解答は、「ナウシカやラピュタの頃は、高畑監督が音を全部決めていた。高畑監督は、(宮崎監督よりも)圧倒的に音楽に対して造詣が深い。今は宮崎監督が決めている」ということでした。
 「ナウシカ」や「ラピュタ」の音楽は、映画に特化した演出のための効果音。対して「千と千尋の神隠し」などの最近の映画は、音楽を選んで映画に当てはめた要素が強いということでしょうか。
 ともかく、選定している人間が違うから、傾向がまったく違うということは分かりました。長年の疑問に何割かの解答が得られました。完全に解決はしていないので、そのうち分かりそうな人に会ったらまた聞いてみることにします。

 その他で懇親会で話していたことで印象に残ったのは、「宮崎監督はあと10年はやるつもりらしい」ということでした。「あと、10年しかできないなあ、と宮崎監督は言っていたので、あと2〜3本は作る気らしい」と片塰氏は言っていました。
 ちょっと嬉しかったです。
 絵コンテの作り方などを聞いていると、ジブリは宮崎監督が辞めたら、違う物になりそうな気がするので、死ぬまで作品を作って欲しいなと思いました。

 最後に少しだけ書きます。
 私は、宮崎監督をストーリーテラーとして見ています。アニメとしては、クオリティは放っておいても毎回高クオリティなので、物語の手法が非常に気になるからです。当たり外れはあるけど、それは高いレベルを要求しているだけで、ジブリにしては外れというだけです。
 私は「ハウルの動く城」が物足りなかったのですが、片塰氏は「今回は宮崎監督の新境地。今までとは違う物。だからちょっと分かり難い」と言っていました。良い、悪いの判断はともかく、今までとは違う物だということでは、現場の人と共通しているんだなと思いました。

 つらつらとお酒を飲みながら話を聞き、時に質問をして、2時間ほどで懇親会は解散となりました。今日のセミナーは非常に面白く、勉強になりました。

追記:
片塰様より補足メールを頂きました。以下、その内容を全文そのまままの形で掲載いたします。なお、本文章の掲載に関しては、片塰様の了承を得ております。(追記掲載日:2004年12月11日)

ジブリを訪ねたのは、テレコムアニメーション(宮崎監督も一時在籍していたスタジオです)出身で、学生時代アニメージュ編集部でアルバイトをした経験もあるリンクスのCGアニメータの仲介により、ジブリの鈴木プロデューサにコンタクトできたのが発端でした。

デジタルカメラの使用については、空気やレンズを通したときの光の現象を拾うことが目的なのですが、他の理由としては照明を従来の撮影と同様に左右から照らすため、紙や絵の具の凹凸が目立ちにくくなる、といった利点があります。スキャナーは正面から光を当てるので、凹凸の厚み部分が暗くなり、結果凹凸が目立ってしまいます。
また、撮影台を使用することで、大判の背景を分割して取り込む場合、正確に上下、左右に移動することが可能なので、デジタル上で張り合わせる時に作業が行いやすいのです。傾きの補正をしないですむため、画質が落ちることがありません。もちろんレンズを使うことで、レンズの収差による、画面の歪みが若干生じるのですが、この歪みは(レンズを変えない限り)常に一定なので、歪みを補正するプログラムを開発して、自動処理で歪みを解消しています。

こういったオリジナルのプログラムを開発するため、社内には2名のプログラマが在籍しています。プログラマの仕事としては、既存のアプリケーションには無い機能を開発して追加したり、使い勝手を良くするための改良を加えたりといったことです。たとえば、Softimage|3Dのカメラの画角の操作を、レイアウト用紙上で指定するような考え方で、操作できるようにしたり、アニメーションを3コマ打ちにするため、アニメーションのグラフを操作できるようにしたり、といった物があります。また画像処理としては、絵の具の滲みのような効果を加えたり、流線の効果を加えたりといったものが挙げられます。3DCGにおいては、オリジナルのセル画風シェーダや線の集積(ハッチング)による陰影を描くシェーダ等を開発しています。またクロスシミュレーションやパーティクル、といった物理の知識が必要なアニメーションを担当したりもします。

画像の解像度ですが、CG部(デジタル作画班)の作業画素数は2458*1328で、そのうちフレーム内に収まるのは2048*1108ピクセルです。画面の比率は、1:1.85になります。DPIに換算すると、フレームの横サイズは12.6インチなので2048÷12.6で162.5397dpiになります。
因みにデジタルカメラによる背景の取り込みは、229.425〜300dpiの範囲で行います。デジタルペイントの解像度はCGの解像度の倍で、およそ325dpiになります。かなり高い解像度といえますが、それでも線の太さは3〜6ピクセル程度で、線の抑揚の再現は苦労する点です。線の状態は鉛筆描きの質感を再現するのではなく、セルに転写された状態を理想としています。しかし、ギブリーズやTV−CFのような特殊なスタイルの画面を作る時は、線のかすれを活かすためにグレースケールのモードで作業を行います。

まだデータバックアップについては、間違った答えをしてしまいました。データストレージは約5テラバイトの容量があります。それをバックアップのために、別の5テラのストレージに同一のイメージを保存しています。ミラーリングではないのですが、一定時間ごとに同じデータイメージを移しているそうです。私は、全体で5テラのストレージ内で、同じイメージを保存していると誤解していたため、2.4テラの容量とお答えしてしまいましたが、実際には(ほぼ)5テラのストレージが2基存在しており、ユーザが使えるのは正味5テラになります。間違った数字を答えてしまい、すみませんでした。

(以上追記了)
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