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2007年11月10日 16:41:42
黄昏
 映画「黄昏」のDVDを十月初旬に見ました。

 1981年の映画で、監督はマーク・ライデル。原作・脚本はアーネスト・トンプソン。

 原題は「On Golden Pond」です。これは湖の名前です。

 キャサリン・ヘップバーンとヘンリー・フォンダが老夫婦役で、ジェーン・フォンダがその娘を演じています。

 派手さはあまりない映画ですが、心に染みてよかったです。

 特に、ヘンリー・フォンダ演じる八十歳の父親がよかったです。

 頑固で皮肉屋で、老いとともに自分自身のことがままならなくなってくるのが許せない人物です。

 彼は、自分自身をコントロールできなくなっていくことに何よりも憤りを感じていて、周囲に頼ることは苦痛だと思っています。

 なんとなく、男の老いた姿は、多かれ少なかれこうだよなと思わせるところがあり、共感できました。



 映画は、「脚本の展開が上手いな」と感じました。

 物語自体が色々な問題を内包しているのですが、その問題の解決に対する切り口が非常に勉強になりました。

 映画の序盤までで発生している問題は、だいたい以下の通りです。ちなみに、主人公は老夫婦の旦那の方です。

・老いにより、自分のことがままならなくなっていく憤り。

・老いて尚、人生を楽しんでいる妻と、自分の違いに対する憤り。

・かつて厳しく接してきたことによる、一人娘との不和。

・娘は一度結婚し、離婚していて独身。

・人生の終焉が近付いて来たことによる、残りの人生の生き方と死に方。

 他にもいろいろな要素がありますが、ざっと上げるとこんなところです。



 以下、粗筋的なことを上げながら説明をしていきます(ネタバレはありますが、あまり気にしないでいいと思います。ミステリーではないですので)。

 物語は、上記のような状態の老夫婦が、湖に接した別荘に、久しぶりに訪れるところから始まります。

 そして、その夫婦の許に数年振りに娘が尋ねてきます。新しい旦那候補を連れてくるというのです。

 ちょうどその日は、主人公の八十歳の誕生日。夫婦は娘とパートナーの二人を別荘で待ちます。しかし、やって来たのは二人ではなく三人でした。旦那の連れ子(少年)がいたのです。

 そして観客は、娘と主人公の関係がぎくしゃくとしたものだと分かります。

 娘は、かつて厳しい父親だった主人公のせいで、まだ癒えぬ心の傷を負っています。

 ここまでが、観客への背景設定の提示です。

 ここから、どうやって話を展開させていくのかと思っていましたが、そこで「上手いな」と思う展開が待っていました。

 娘と旦那が、仕事でヨーロッパに行く一ヶ月の間、その少年を預かってくれと娘は頼みます。

 仕事の間、息子は一人でホテルで待ち続けることになるというのが表向きの理由です。

 しかし裏では、二人だけの時間を過ごしたいというのが半分、その息子に手を焼いているのが半分。そういった事情があります。

 いささか強引な気もしますが、父娘の「修復不能な関係」の間に、クッションとして「少年」を挟むことで、二人の心はときほぐれていきます。

 少年は、忙しい両親のせいで面倒を見てもらえず育ってきました。そのために非常にひねくれていて大人に反発しています。

 主人公の老人は、その少年と連日釣りをして、モーターボートを教えて、友人のように接して、ともに楽しみ始めます。

 最初は心を閉ざしていた少年は、次第に心を開き始めます。

 娘は帰って来て、そんな父と少年を見て驚きます。彼女は、自分が娘だったために、男の子が欲しかった父の期待に応えられなかったとずっと悩んできました。

 父と少年の姿を見て、そのことを思い出し、やはり自分は父の求めていた子供ではなかったのだと苦悩します。

 しかし、少年により変化した父親は、そんな娘に優しい手を差し伸べます。

 人生の終焉近くで、父と娘は歩み寄りを始めるのです。



 解決しない人間関係を、第三者の介入で変化させるというのは、物語のやり方としては非常に王道です。

 その王道を、序盤では存在すら提示されていなかった少年の登場で、かなり鋭角的にやり遂げています。

「そう来たか」と思いました。

 老人が、少年との触れ合いでどんどん生き生きしてくる様子が、そして、少年の心がどんどん開いていく描写が非常によかったです。

 この部分は、父親と娘が和解することとは全く無関係に進んでいくのですが、この変化が最終的に父娘の関係に変化を投げ掛けます。

 いわば「A→B→A´」という感じの話の展開です。「B」を効果的に入れることで、「A」を「A´」に変化させる。

 そして「B」の間は、「A」のことを忘れて、その話に観客を没頭させる。そのことにより、「A´」に戻った時に新鮮な驚きを体験させる。

 構造的によく練られているなと感じました。



 さて、最初にも書きましたが、この映画は、主人公の老人に非常に共感します。

 そして、自分の老後について考えさせられます。

 男性として、非常に切ない気分になります。「老いていく」ということを強く感じさせられます。

 さらに、老いた時に側にいる伴侶の大切さを感じさせてくれます。

 まあ、離婚沙汰の多いアメリカでは、八十歳まで添え遂げる夫婦がどれぐらいいるのか分かりません。

 しかし、この映画の夫婦を見ていると、老いた時に一人でないことで、人はどれだけ心を救われるのかということを考えさせられます。

 特に、序盤の老夫婦の描写を見ていて、そう感じました。
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