映画「風の谷のナウシカ」のDVDを八月中旬に見ました。
まあ、何十回と言わず見ているのですが、絵コンテとともにDVDも買ったので見直しました。
購入したDVDには、オーディオ・コメンタリーが付いていたので、これを聞きながらの観賞です。
コメントをしているのは、庵野秀明と片山一良。
庵野秀明は、言わずと知れたGAINAXの「エヴァンゲリオン」の監督。
私はアニメについて詳しくないので、片山一良という人を知らなかったので調べてみました。
□片山一良
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%87%E5%B1%B1%E4%B8%80%E8%89%AF_%28%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E7%9B%A3%E7%9D%A3%29 「THE ビッグオー」の監督兼原作ですか。あと、「アルジェントソーマ」の監督兼原作でもあるのですね。
少し詳しくなりました。
この二人のコメントが非常に勉強になりました。
話していることを分類すると、以下の六つになります。
・宮崎駿のアニメ演出のどこが上手いか。
・自分たちが現場で経験・勉強したこと。
・ナウシカで「ここはどうなのか?」と思う場所。
・ナウシカ当時の製作体制と現場風景。
・宮崎駿は、アニメよりも本人が何倍も面白い。
・高畑勲は恐ろしい人だ。
そして、二人の話を聞きながら見ていると、いかに自分がアニメを「見れていないか」がよく分かりました。
言われて初めて気付く部分ばかりです。うーん。
とても勉強になりました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後の方まで書いています。流石に見ていない人はいないと思うので)
“火の七日間戦争”という世界を焼き尽くす戦いが終わり、巨大な菌類と節足動物が世界を覆い尽くしている時代。
人々は、砂漠に点在する“毒を吐く菌類の森”のことを“腐海”と呼んでいた。
酸の海の近く、腐海からの胞子を寄せ付けない風に守られた谷──風の谷──に住む人々。彼らの許に、放浪の剣士ユパが久方振りにやって来た。
王の娘であり、メーヴェという一人乗り凧型飛行機械を操るナウシカは彼の来訪を喜ぶ。
だがその夜、異変が起こった。
近隣の軍事国家トルメキアの巨大飛行船が谷に落下して来たのだ。その船には、都市国家ペジテの姫と、巨大な肉塊が収容されていた。
ペジテの姫は死に、肉塊は生き残った。その禍々しい物体は、かつて世界を焼き尽くした巨神兵の胎児であった。
不吉な予感に谷の人々は怯える。
その予感はすぐに的中した。トルメキアの王女クシャナ率いる船団が空から急襲してきて谷を占拠した。
ナウシカと五人の老人は人質として、クシャナの率いる船団でトルメキアに向かうことになる。
だがその途中、ペジテのガンシップの襲撃で船団は壊滅する。ガンシップの乗り手はアスベルという若者だ。
ナウシカは、五人の老人とクシャナを救って腐海の底にたどり着く。そこで彼女らは“王蟲”と呼ばれる“森の虫の王”に出会う。
ナウシカは、他の者に谷に戻るように指示する。そして自分自身は、襲撃者の安否を確かめるために腐海のなかを探索すると告げる。
彼女はアスベルを見付け、すんでのところで命を救う。しかし虫との攻防で、二人は腐海の最深部に落下する。
そこで目覚めたナウシカは、腐海の存在理由を知る。菌類たちは、世界を覆う毒素を浄化し続けていたのだ。そして虫たちはその森を守っていた。
ナウシカとアスベルはペジテに向かう。しかし街は虫の襲撃で壊滅していた。ペジテの民は、虫に街を襲わせることで、そこに駐屯していたトルメキアの軍団を葬ったのだ。
彼らは風の谷も同じように壊滅させるという。激怒するナウシカ。だが彼女はペジテの民の手で捕らえられてしまう。
アスベルは風の谷を救うためにナウシカを脱出させる。
彼女は谷に向かい、ペジテの民たちが何をしたかを知る。彼らは王蟲の幼虫を囮に、怒りに燃える王蟲の群れを谷に向かわせていた。
ナウシカは幼虫を救い、身を呈して群れの暴走を止めようとする。そのとき、一つの奇跡が起きた……。
では、先ほど書いた、六つの内容について書いていきたいと思います。
● 宮崎駿のアニメ演出のどこが上手いか。
画面のレイアウトが上手い。最小手数で最大限の効果を上げる演出が上手い。セルと背景の使い分けが上手い。
そういったことを二人はしきりに言っていました。
特に「最小手数で最大限の効果を上げる演出」は、二人が次々に指摘するところを見て、初めて気付くところばかりでした。
「ここは、実は誰も動いていない」「三枚のセルのループだけで水を表現している」「目パチすらさせていない」
そういった省力化のテクニックがふんだんに盛り込まれているのは、言われるまであまり考えていませんでした。そう言われてみれば、いたるところで何も動いていません。
なるほどなと思いました。
● 自分たちが現場で経験・勉強したこと。
宮崎駿という人は、とても子供っぽく、凄い自慢したがりだそうです。そのため、おしげもなくテクニックを教えてくれると。
二人とも「凄い勉強になった」「普通、あんなに教えてくれない」と口々に言っていました。
あと、「アニメーションは記号に過ぎないということを正確に実践している」といったようなことも言っていました。
● ナウシカで「ここはどうなのか?」と思う場所。
言われるまでまったく気付かなかったことがいろいろとありました。
そのなかでも特に印象に残ったことをいくつか書いておきます。
「序盤、ナウシカの顔が安定していない」
言われてみると、後半になるほど顔が整っていきます。今まで気にしていなかったです。
「子供が動いていない」
子供がぴたっと静止しているシーンがけっこうあります。確かに子供は絶えず動き続けるものですし。
「風の谷には、老人と子供ばかりで、若者がほとんどいない。こんな村はすぐ滅ぶ」
作劇上の都合でしょうが、確かにそうだよなと思いました。老人多過ぎです。
● ナウシカ当時の製作体制と現場風景。
相当人手が足りなかったそうです。時間も足りなかったそうです。
宮崎駿は、ことあるごとに「今東京に地震が来たら、締め切りが延びるのに!」と言っていたそうです。
● 宮崎駿は、アニメよりも本人が何倍も面白い。
だそうです。「宮さんを観察しているのが一番面白い」と言っていました。
また、食事についても興味深かったです。
食事は基本的に燃料補給という考え方で、とにかく短時間で食って、サプリで栄養バランスを整えるということをやっていたそうです。
ナウシカの頃はサプリメントは珍しいものだったので、庵野監督は相当奇異な物に見えたそうです。
● 高畑勲は恐ろしい人だ。
どんなに笑っていても、目が全然笑っていないそうです。
庵野監督いわく「今までの人生で会った最も怖い人だと思った」だそうです。
あと、高畑勲は徹底的な大人だそうです。100%子供で構成されている宮崎駿に対し、100%大人で構成されていると。
そして二人が言っていたのは、宮崎駿は子供だからアニメを作れるのは分かるが、高畑勲がアニメを作れるのは不思議。
たぶん、明瞭なイメージがあり過ぎるせいで、実写ではイメージに近付けないからだろうと。
なかなか興味深い発言でした。
オーディオコメンタリーは非常に楽しめました。
いつも借りてくるDVDにも、オーディオコメンタリーが付いていたりします。しかし、さすがにそれまで確認する気にはなれません。時間が掛かるので。
でも、買うぐらい何度も見ている映画ならば、オーディオコメンタリーも聞く気になるなと思いました。
おまけ:
庵野監督ですが、「巨神兵に時間が掛かりすぎたせいで、他のところをあまり手伝 えなかったのが悔やまれる」と言っていました。
それと、最初の予定では、巨神兵が王蟲を掴んで投げまくるシーンがあったそうです。でも、予算の都合でカットされたそうです。
「無茶苦茶やりたかった〜〜!」と庵野監督が言っていました。
また、クシャナが巨神兵を蘇らせるときに、羊水を浴びてびしょ濡れになるシーンもあったそうですがカットされたそうです。
「うわ〜、見たかったな〜〜!」と庵野監督は悔しがっていました。
羊水まみれのクシャナが見たいなんて、庵野監督はフェチだなと思いました。
あと思い出したのは、最初のスタッフロールのタペストリーは、作業が終わって暇になった宮崎監督が、一人嬉しそうに延々と描いていたそうです。
あのタペストリーは味があっていいなと昔から思っていましたが、監督自ら描いていたとは知りませんでした。