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http://kappa-coo.com/
2007年08月02日 15:38:26
 映画「河童のクゥと夏休み」を、8月1日の映画の日を利用して見てきました。

□河童のクゥと夏休み
http://kappa-coo.com/

 最初に名前を聞いて絵を見た時には完全にスルーだったのですが、周囲での評判が非常によかったので見てきました。

 本作は、「クレヨンしんちゃん」の映画シリーズで非常に評価の高い、原恵一監督の作品です。

 原作は小暮正夫の児童文学「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」だそうです。プログラムを買って読みましたが、原作からはだいぶ変えているようでした。



 さて、映画ですが、よくできていました。

 この映画は「面白かった」というよりは「よくできていた」という感想が相応しいです。

 また、多くの映画には「ここが凄いよかった」という売りの部分があるのですが、この映画は、そういった一点豪華主義ではなく、「全体的に丁寧で隙のない作り」という印象でした。

 突き抜けた部分がないけど、アベレージが非常に高い。

 派手なアート作品を見るのではなく、職人芸の工芸品の出来映えを見るような印象です。

 この映画は、原恵一監督が脚本も書いています。そのせいでしょうが、細かな脚本の内容と画面に出て来る演出がどれも丁寧でした。

 ぼーっと見ていて、飽きずにいつの間にか最後まで行ってしまう。そんな感じの映画です。

 というわけで、この映画を見て、私がどういった部分が「上手いなあ」と思ったのか、以下、つらつらと書いて行きます。



(いくつかネタばれ的なことがあります。なるべく露骨なのは避けていますが、そういったものが許せない人は、以下読まない方がいいかもしれません)



 まず、細かなエピソードの積み重ねが上手い。

 流れるように細かなエピソードが出て来るのですが、そのどれもがよくできています。

 面白いところではくすりと笑いますし、嫌なところでは顔をしかめます。そういった話が途切れることなくでてきて、細かく観客の心をくすぐります。

 たとえば、主人公の妹で幼稚園児の瞳という登場人物がいるのですが、この瞳の子供らしい怒りっぷりが毎回楽しいです。

 そして、主人公の康一のクラスにいる友人たちが、主人公に対していじめっ子になっていく過程は、暗い気持ちにさせられます。

 そういった細かなエピソードがとても上手いです。

 こういった部分は、本当に職人芸だよなと思います。



 次に、唸ったのはリアリズムです。

「河童が出て来る時点で、リアリズムもへったくれもないだろう」という話もありますが、ファンタジーは、ファンタジー部分以外が納得いかないと破綻します。

 その「現実世界の出来事」が非常によくできています。

 まず、主人公家族の会話ややり取りが実に「ありそう」な感じです。

 最初は河童を気持ち悪がる母親。新しいペットを手に入れたように喜ぶ主人公の少年。むかついて反発しまくりの幼稚園の妹。河童にどきどきしている父親。

 そういった家族の、それぞれの心の動きや行動の描写の的確さ。

 それだけではありません。主人公が通う学校でのエピソードも非常に妥当性があります。

 いじめがきちんと描かれています。

 この映画では、最初の時点からいじめられている少女がいます。

 そして、主人公が彼女に引かれ、そして河童を周囲に対して隠したことから、今度は主人公がいじめられる立場になっていきます。

 その様子がとても丁寧に描かれています。

 そして、話の展開も実に自然です。

 まず、河童を拾ってしまったことによる家族のおっかなびっくりの交流。

 次に、河童の仲間探しに主人公と河童のクゥが旅に出ます。それは、雑誌で特集を行っていた遠野です。あの、柳田國男の「遠野物語」の場所です。

「ああ、ありそう」と思いました。

 そして、河童の存在が、徐々にネット上から漏れ始め、マスコミに追い掛けられ始めます。

 ここら辺の展開も実に自然です。

 さらに、最後の落ちの付け方も、非常に納得性の高い物でした。

 正直、最初は、「これ、どう着地点を設けるんだ?」と思っていました。この手の話の展開としては、落ちは二種類しかありません。

「去る」「残る」です。

 これを、どういう風に、妥当性のあるように持って行くのかと思っていました。

 しかし、不安は杞憂でした。

 非常に上手いオチが待っていました。これはネタバレになるので書きませんが、「ああ、これなら納得できる」という内容でした。正直言って「上手いなあ」と思いました。

 こういったように、本作では、絵空事になりがちな話を、実にリアリズムに描いています。

 これは本当に感心しました。



 最後に思ったのは、細かな伏線の回収が上手いことです。

 最初に出て来た時には伏線とも何とも思っていなかったエピソードが、きれいに伏線となって後半に回収されます。

 例えば、映画は江戸時代から始まります。映画は、そこで生き埋めになったクゥが現代に蘇るという話です。

 この、江戸時代のエピソードが、後半重要な伏線になっています。単なる前振りかと思っていました。

 また、河童の相撲のエピソードなども、後半うまく伏線に繋げています。

 こういった、何気ない話を、上手くエピソードとしてリンクさせている部分が多く、これは丁寧だなあと感じました。



 このように、職人芸的によくできた映画なのですが、見終わった後の感想は「これは、誰向きの映画なんだ?」でした。

 子供向けの映画なんだろうと思うのですが、それにしては監督の暗黒面が表に出てきています。

 いきなり冒頭で河童のクゥの父親が侍に惨殺されるシーンがあるのですが、これが徹底的に陰惨です。

 また、後半、クゥがマスコミや野次馬に追い掛けられるシーンがあるのですが、そこで追い詰められたクゥが叫びます。

 そうすると念動力が発動して、集まっていた烏が爆殺されて、人々の顔や体に血と肉片が降り掛かり、大パニックになります。

 また、一連のいじめのエピソードは、どこにも救いの手がありません。主人公は二学期からは、いじめられっ子になりそうです。

 リアリズムの傾向が強い映画なので、子供がこれを手放しで喜べるのか疑問に思いました。いやまあ、子供が喜ぶ映画が、子供にとってよい映画ではないのですが。

 この映画は、死やいじめなど、けっこうエグイこともリアルに描かれています。

 子供が喜ぶかどうかは別にして、子供にとって一つの貴重な経験になる映画であることは間違いないと思います。

 ただ、キャラクターの造形も含めて、その「子供」にどうやって訴求させるのかなと、少し不安になりました。

 実際、8月1日に見に行った時は、席に座っていた人のほとんどが社会人男性でしたので。

 家族連れは、ぽつりぽつり(数組程度)しかいませんでした。

 宣伝はけっこう打っているようですが、興行的に大丈夫なのかなと思いました。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。後半の最初頃まで書いています)

 河童の子供は、父親と一緒に、道で人を待っていた。その相手はお侍様。悪徳商人と結び付いたその男は、河童の住処である沼を干拓して農地にしようとしていた。

 その侍の前に出た河童の父親は、沼の干拓を取りやめてくれないかと頼む。

 しかし、談合の相談を聞かれたと思った侍は、河童の父親を斬り殺す。さらに、子供の河童にも手を掛けようとする。

 その時、地震が起こった。そして河童の子供は地中深く埋められてしまう。

 現代──。

 学校に通っていた主人公の小学生の少年は、雨の日に、河原で化石のようなものを拾う。それを家で洗っていると、水を吸ったそれが河童となって復活した。

 彼ら家族は、河童の体力が回復するようにと、家で世話をすることにする。

 家族と河童は交流を深めていく。

 少年と河童は、現代の生き残りの河童を求めて、遠野に旅に出る。そのことは、少年が徐々に一人立ちを始める時期と重なる。

 そうやって、交流を通して変わって行く家族に、問題が立ち起こる。

 マスコミが河童の存在を嗅ぎ付けてきたのだ。

 家族は、報道陣や野次馬に囲まれての生活に陥る。そして、父親の会社の取り引き先から圧力が掛かり、家族と河童とでテレビ出演しなければならなくなる。

 そこでゲストとして出て来たのは、河童研究家だった。彼は、河童の腕を所蔵していて、それを会場に持って来ていた。

 その腕は、子供の河童の父親のもので、河童研究家は侍の子孫だった。

 河童の子供は感情を高ぶらせ、念動力で周囲のカメラや照明を破壊する。そして、テレビ局から逃走する。河童は、マスコミ、野次馬に追い掛けられながら、東京の街を逃げて行く……。



 さて、登場人物のことなども少し書いておこうと思います。

 一番よかったのは、主人公の妹の幼稚園児の瞳です。これはとてもいい。彼女が何か言ったり、したりするたびに、思わず顔が緩みます。

 子供って、こんな感じです。これは、本当に上手いなあと思いました。



 次に、何気によかったのは主人公の家の犬の「オッサン」です。顔がオッサンっぽかったので、オッサンと名付けたそうです。

 こいつが、実はテレパシーを使えて、河童としゃべって、人間に関してのアドバイスを色々とします。

 そして、終盤のテレビ局からの逃走の時にも河童を手助けします。

 けっこう人間社会を斜に見ているのですが、こいつがいい味を出しています。



 あと、よかったのは、これは完全にネタバレになるので伏せ字にしますが、キ○ム○ーです。

 ラストの落ちに関わるのですが、割と陰惨な部分もあったこの映画が、このキャラのおかげでかなり救われています。

 世の中捨てたもんじゃないよなあという気にさせてくれます。

 暗く閉塞感のある結末になりそうだったのを、一気に希望の持てる話に変えてくれます。

 このラストは上手いなあと思いました。



 あと、微妙にキャラではないのですが、終盤の龍神様の動きが非常によかったです。

 あれは、いい龍神様だ。

 あの動きは、生理的に気持ちよかったです。

 それと、生理的に気持ちよかったと言えば、電車の動きです。

 電車シーンが何度かあるのですが、速度感の出し方がよかったです。

「こんな感じ、こんな感じ」と思いながら見ていました。

 動きと言えば、河童のクゥは、映画で見ると非常に可愛いのですが、止め絵で見ると可愛くないです。

「ああ、動きや台詞が可愛いのか」と思いました。

 こういったキャラの良さは、雑誌の広告とかで伝わらないので大変だなと思いました。



 さて、全体的に端々まで気の届いたよい映画だったのですが、一点、気になった部分があります。

 それは、水のCGです。

 CGっぽさが前面に出ていて、そこだけCGなのが分かり過ぎで、これはどうかなと思いました。

 これがどうでもいいシーンで気になるのならよいのですが、河童なので水のシーンがやたら多いのです。

 そのたびに、アニメ調の絵の上に、CG風の水が載っている。

 これだけは、改善した方がいいのになあと思いました。



 最後になりますが、映画を見に行ったら、映画館で、東海漬物の「きゅうりのキューちゃん」の「ご試食用サンプル(非売品)」が配られていました。

 河童、きゅうり繋がりのようです。

□東海漬物「きゅうりのキューちゃん」
http://www.kyuchan.co.jp/

 こういタイアップは、洒落が利いていていいなあと思いました。
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