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2009年05月29日 13:57:18
マンガの創り方—誰も教えなかったプロのストーリーづくり
 山本おさむ著「マンガの創り方」を数日前に読みました。

 これは良書です。

 映画などのシナリオ解説本などを読む人なら、必読の書だと思います。その手の本の、マンガ版です。

 この本は、マンガの「プロット作り」「ネーム作り」「ネーム推敲」までに焦点を絞った本です。

 しかし、その手の「シナリオ・マニュアル本」と、決定的に違う点があります。

 この本は、徹底的に「実践的」です。

 この本は、2つの短編マンガを教材にしています。1つは、著者のデビュー作の短編(20P)。もう1つは、高橋留美子の短編「Pの悲劇」(32P)です。

 その2編を全て巻末に載せて、その解説を中心にして、500ページぐらいの本になっています。

 端的に言うと、1つの短編の解説に200ページぐらい費やしています。

 短編をプロットに分解して、ネームに分解して、その構造から、展開、そこで作者がどういったことを考えて、どういったテクニックを使って話を構築しているかを、これでもかと細部にわたって分解しています。

 これは、マンガ読みとして「そこまで読めていなかった」と敗北感を味わうほどの詳細ぶりです。

 これまで、様々なマンガ指南本を読んできましたが、ここまで実践的に「話作り」と「話の演出」について書いた本はなかったです。

 たいていのマンガ指南本は「絵」や「コマ割り」についての本です。「作劇」や「演出」を中心に、ここまで詳細に書いた本は、これが初めてではないかと思います。

 その手の内容に興味がある人は、必読と言ってもよい本だと思います。というか、買って読んだ方がいいです。



 さて、本書について詳しく書く前に、いくつか情報を出しておかなければなりません。

 著者の山本おさむですが、派手ではないが、よいマンガを描く、ベテランマンガ家です。

 最近の代表作は「天上の弦」です。朝鮮系のバイオリン作りの人が主人公のマンガです。ドラマ化もされました。

 この本「マンガの創り方」は、双葉社の漫画アクションの元編集長から依頼されて、十年越しで執筆されたものだそうです。

 なぜ、この本が作られたのか。それはこの元編集長が、「ストーリーの作り方」と「ストーリーを漫画にする演出」の「技術」を若い人に継承したいということがあったためだそうです。

 最初に作者に話が来た時は、「若い人はそういったものを求めていないだろう」ということで、作者は断ったそうです。

 そして、10年ほど経った後に、その元編集長がWebマガジンの編集長になって、今度は「Webの連載で書いてくれ」と言ってきたそうです。「俺ももう定年なので、それまでにこの話をまとめたいんだ」と言われて、重い腰を上げたということでした。

 そして、この本は、Web連載で書かれた後、書籍化されたそうです。

 そういう経緯ですので、この本は徹底的に「技術」に特化して書かれています。



 この本の内容を端的に表しているのは、17ページから19ページの著者の文章です。いくつか抜粋・引用します。

「編集者の人たちは、いい大学を出て、頭も切れて、すぐれた人材ではあると思うのですが、特別に大学でマンガを専門に勉強したことも無いし、自分でマンガを1本も描いたこともないし、描けません。編集者というのは、マンガの専門家ではなく、やっぱり編集者なのです。」

「唯一、彼らがプロではないのはマンガを描くことなのです。そしてマンガ家を養成するプロの教育者でもありません。ですから的確な技術指導を彼らに求めるのは無理というものです」

「一方、最近の若いマンガ家は特に、作り手としてのプロの修練をほとんど積んでいないし、勉強をほとんどしていません。ストーリー作りもできないで画が上手なだけではマンガのプロではありません」

「そういうプロとしての修練を積んでいないマンガ家と、唯一プロでない分野で担当編集が、頭をつき合わせてああでもないこうでもないとやれば、袋小路に入ってしまうのはある意味では仕方がありません」

「そもそも編集者はマンガ作りのプロではありません。具体的に、ここが悪いからこうしたら良くなる。このコマがだめだからこのコマを削って、そのかわりにこのコマをこう描いてとかいったことは絶対に言えません。言ってきたとしても、大体は的外れです」

 このような調子で、「編集者はマンガ作りのプロではない」と断言したあと、この本では「編集者の介入を許さないように、技術的に突っ込めないネームを作って出せ」とマンガ家に助言します。

 そして、60点のネームを、いかにして90点まで引き上げていくのかを、物凄く具体的に解説していきます。

 こういった「編集者を切って捨てる」ような物言いができるのは、ベテランならではの強みだなと思いました。



Pの悲劇 (高橋留美子傑作集)
 さて、この本を私が手にとって、最初に「おっ」と思ったのは、私がマンガの教科書として最近買った、高橋留美子の「高橋留美子劇場」の「Pの悲劇」が教材として採用されていたからです。

 自分が「教科書に」と思ったマンガが、実際に「教材」として採用されているならば、これは読まねばなりません。

 そして読んだのですが、「私の読書力が足りていなかった」ことが良く分かりました。ここまでの精度では、到底読めていませんでした。



 この本では「Pの悲劇」に、実に200ページぐらい掛けて、解説を行っています。

 そして、マンガを各ブロックに分解して、「そこで高橋留美子がどう考えて」「どういった技術を駆使してマンガを面白くしていったか」を、論理的に解き明かしていきます。

 これは、自分が読んでいる時には、何となく思っていても、言葉にできるほど頭で形になっていなかったところです。この本では、そういった部分を、鮮明にしてくれます。

 そして、作品のテーマがどういった手順を踏んで生まれたか、そこに至るまでにどういった紆余曲折があったのか、そのテーマを効果的にするためにどういったテクニックを使ったのかを、逆算の手法で解き明かしていきます。

 そう「逆算」です。

 著者は、高橋留美子とは一切話をせずに、マンガに残る「技術の痕跡」から、全てを遡っていきます。

 これは、非常に面白いです。一見の価値があります。



 また、この作者は、映画、特に黒澤明を物凄く研究していて、映画のシナリオ術なども非常に研究しています。

 そして、「映画とマンガの違い」についても、物凄く敏感で、その部分にも多くの紙面を割いています。

 この部分は、異ジャンルのメディアの勉強から、自分のジャンルにそのノウハウを移植するための方法として、非常に参考になります。

 また、この本では、「マンガの読ませ方」の様々なノウハウも投入しています。ここで重要なのは「見せ方」ではなく、「読ませ方」です。

 たとえば、「見開きの大ゴマを、さらっと流させないために、20秒見せたいなら、20秒分の文字を画面の端に分散させて置く」など、かなり具体的で実践的な話が多いです。



 最後に、この本の本気っぷりが分かるのは、本書が「双葉社」から出ていることです。教材に使われている高橋留美子のマンガは「小学館」です。

 つまり、教材に載せたいから、再掲をさせてくださいと、頼みに行っているわけです。

 本屋でふらっと手に取って購入した本ですが、これは非常に当たりでした。未見の人は、読むことをおすすめします。
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