『東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例』に関しての話です。
http://mitb.bufsiz.jp/ 普段あまり政治的なことはしていないのですが、さすがに仕事や人生に直結することだと、避けて通るわけにはいきません。
また、周りで一生懸命動いている人たちの姿をmixiやtwitter、Webサイトなどで見ており、「私もできることをやっておかなければ」と考えています。
というわけで、周囲が一生懸命動いているときには、手紙を書いたり、メールを書いたりして送るようにしています。特にこの手の法案の時には。
でも、政治的なことは全く慣れていないので、送る手紙やメールも、勘所が分からず、「送らないよりも送った方がましだろう」というレベルの、枯れ木も山の賑わい状態になっています。
というわけで、送った内容を貼っておこうと思います。
議員さんに送るものは、テンプレはよくないということで、自分の考え方がそのまま反映した文章にしています。本当はもっと正しい書き方があるのでしょうが、それだとテンプレっぽくなってしまうので悩むところです。
今後はもうちょっと上手く、こういった要望を書けるようになりたいです。
(注:私自身が偏った人間なので、文章も偏った内容になっています。私は多様性の信奉者なので、偏った人やコンテンツがたくさんある社会の方が、素晴らしいと思っています)
拝啓
早春の候、ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。私は、横浜市で、ゲームやマンガなどのコンテンツを作成しております、クロノス・クラウン合資会社の代表社員の柳井政和と申します。
今回筆を取ったのは、『東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例』について、先生にぜひお伝えしたいことがあったからです。
既に、多くの方々から、同条例が問題の多い内容であるとの指摘の手紙やメールが届いていると思います。私も同様に問題の多い内容だと考え、東京都の友人や知人たちと協力して、廃案を提案するために手紙を書いております。
東京は、日本の出版、放送、文化の中心地です。東京で決まったことは、一都市の決定ではなく、日本全体の問題となり波及します。これは、日本のメディア、コンテンツ産業の流通の中心が東京に一極集中しているという、特殊な事情によります。
先生もご存知の通り、ここ数年、日本の言論や文化を弾圧する圧力が、断続的に進行し続けています。これらの多くは、子供の保護や、青少年の健全育成という表面上の体裁を取っています。しかし、実際は、コンテンツ産業や、メディア産業に対する、規制や弾圧へと繋がる内容となっております。
そういった流れのなかで、コンテンツ産業や、メディア産業の最も弱い部分として、マンガやアニメ、ゲームなどを取り締まる動きが強まっています。
これらの日本の文化は、サブカルチャーとして、政府などに保護されずに発展してきたものです。そして、その多くが、個人のコンテンツ製作者や、零細な企業によって製作されています。そのためこういった業界には、政治家や有力者への太いパイプがありません。また、ロビー活動を行うような業界団体や労組的なものも存在してきませんでした。
そういった背景があるために、言論や文化をコントロールしたいと考える一部の人たちから、真っ先に狙われやすい業界となっております。
マンガやアニメ、ゲームなどは、日本でも有望な、海外へ輸出可能な知財です。サブカルチャーから始まったこれらの文化は、国家戦略として、支援し、育成すべき存在へと成長しております。そういった知財を、東京都の一部の人々の思想に反しているという理由で規制するのは、問題だと考えております。これは、国家レベルの損失で、日本全体の未来に関わる問題です。
東京都でこの条例が可決すれば、東京以外の全国に住むコンテンツ製作者も、東京都の一部の人の恣意的な判断によって、コンテンツ製作を阻まれることになります。これは言論統制となり、憲法に反することです。
健全な民主主義社会は、国民が思想・表現の自由を持ち、知りたいと思う情報に自由にアクセスでき、自らが何を知りたいか判断できる知性を獲得していなければ長続きしません。
日本は、そういった情報を統制し、制限し、大きな誤りを犯してしまった過去を持っています。日中戦争から第二次世界大戦末期にかけ、日本では多くの情報を規制し、その結果、無知を招き、誤ったことに自ら加担する国民を作り出し、内外の多くの貴重な人々の命を奪ってきました。
こういったことが再び繰り返されるのならば、多くの未来の若者の命が、もう一度奪われることになります。
表現の規制は、そういった社会への逆戻りを招く端緒となります。特に今回の条例では、規制となる内容を曖昧にして、運用に全てを委ねるようにしています。こういった条例が可決して、一部の人々に、全ての判断を委ねることは非常に危険です。
これはダムに空いた最初の穴となる条例です。そして可決、運用とともに、日本の民主主義は決壊し、再び大きな過ちを犯してしまいます。
青少年を本当に守るためには、青少年に与える情報を規制するのではなく、青少年に情報を取捨選択できる教育を与える必要があります。安易に情報を隠すような方法は、無知で愚かな子供を作ることに繋がります。
そうやって育った人が、大人として情報を規制する側に回ったとき、どうやって情報の良し悪しを決めるというのでしょうか? 自分が知らないことは全て悪だと判断するしかなくなります。それは未来の若者たちにとって正しいことでしょうか? 健全な大人と言えるでしょうか? そういった人々が、様々な問題に対して正しい判断を行えるはずがありません。
一部の人々が、無知で愚かな子供たちを増やしたいと思っていることは知っています。しかし、日本全体の利益として、これから生まれ育っていく若者たちのために、私たち今を生きる選挙民は、子供たちから自由な思想や表現を奪う芽を、摘み取っておかなければなりません。
また、今回の条例のように、規制を増やすというやり方は、犯罪率が増えたから死刑を増やせばよいだろうといったやり方に等しい行為です。
犯罪率の場合、本当に必要なのは、犯罪率の上昇の原因となっている経済の建て直しを行うことです。また、経済的困窮者の二世三世が、貧困の再生産に巻き込まれないように、教育の充実をはかり、社会の身分の固定化を防ぐことです。
法律により犯罪者を作り、そのことで人々を抑圧し、本当の原因から目を逸らさせることが政治の目的になってはいけません。
政治家におこなっていただかなければならないことは、若者に考える力を与えたり、若者たちが希望を持てる社会を作ることです。年を取り、これから死んでいく人々の欲望を叶えたり、古い時代の偏見を再生産することではありません。
先生にはぜひ、若者たちが希望を持てる社会の実現のために尽力していただきたいです。
今回の条例は、上辺だけ見れば美しいように見えますが、内実は言論・表現の弾圧です。それも、民主主義を崩壊させる第一歩となるものです。
ぜひ、先生におかれましては、今回の条例が廃案となるようにご尽力いただきますよう、お願い申し上げます。
以上、よろしくお取り計らいのほどをお願いいたします。
敬具