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[映画] 「オリヲン座からの招待状」感想

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2008/03/16(日) 17:35:40
オリヲン座からの招待状
 映画「オリヲン座からの招待状」を、劇場で一月下旬に見てきました。

 ギンレイホールで、「オリヲン座からの招待状」と「自虐の詩」の二本立てがあったからです。

 映画はどちらもよかったです。しかし、足が伸ばせない椅子で四時間は正直辛かったです。

 結果、翌日腰が痛くなりました。整骨院に行くと「あー、腰の骨がずれてしまっていますね」ということでした。

 数日、腰が痛くて、もう一ヵ所行きたかった二本立て(「未来世紀ブラジル」「不思議惑星キン・ザ・ザ」)を断念しました。無念。

 というわけで、以下感想です。



 まずは、「オリヲン座からの招待状」の感想を書く前に、「自虐の詩」との比較の感想を書きます。

「オリヲン座からの招待状」は、古きよき邦画という感じでした。

 対して「自虐の詩」は、最近流行の新しい邦画という感じでした。

 どちらもよかったです。個人的には「自虐の詩」の方が好きでした。しかし、どちらも甲乙付け難いよい映画でした。



 以下、「オリヲン座からの招待状」について書きます。

 2007年の作品で、監督は三枝健起。脚本は、いながききよたか。

 調べていて出てきたのですが、三枝健起の兄は三枝成彰という人で、ガンダム系映画の音楽などをやっているそうです(いや、ガンダムが活動の中心ではないですが)。

 主演は加瀬亮と宮沢りえ。

 原作は浅田次郎。「ぽっぽや」に収録されていたので読みました。しかし、この本は映画化が多いですね。非常によい短編集なので、映画にしやすいのでしょう。



 さて、映画を見ながらずっと感じていたことがあります。

「ニュー・シネマ・パラダイス」を彷彿とするなということです。

 映画館の話で、映写技師が中心になる映画なので、思い出すのも当然です。

 監督も意識していると思います。映画館物で撮るなら、この映画は避けて通れませんので。

 自転車のシーンなどは、特にその思いを強くしました。



 あと、原作を読んだあとに残っているイメージの方向性と、映画はだいぶ違うなと感じました。

 原作はもうだいぶ前に読んだので記憶が曖昧なのですが、「現代の話」が主で「過去の話」が従だったと思います。

 映画は、現代の話は導入だけに使って、過去の話が九割以上のボリュームの作品になっていました。

 大胆なアレンジだなと思いました。しかし、原作の記憶が不明確なので、もしかしたらそうではないのかもしれません。

 どちらにしろ、映画としてはそれで正解だったと思います。

「ノスタルジックな映画館」という世界観を非常に丁寧に作り込んでいましたので。

 あと、この映画を見た場所が、映画の中の映画館と似ているような建物だったので、「閉館するんじゃ、ここ?」などと不謹慎なことを考えてしまいました。



 以下、ネタバレを含む話を書いていきます。



 この映画は四つのパートに分かれています。そして、それぞれに「ダウン」と「アップ」の二つの基調が存在します。

1.現代編 導入(圧縮)(ダウン)

2.過去編 前半(解放)(アップ)

3.過去編 後半(圧縮)(ダウン)

4.現代編 結末(解放)(ダウン)

 1は、現代が舞台で、中年夫婦が別れを考えながら、子供時代に過ごした映画館に行く話です。

 2は、過去が舞台で、その映画館の支配人が主役になります。彼が初めてこの場所にやって来て、先代支配人に認められて映画館の人間として迎え入れられていく過程を描きます。

 3は、先代支配人が死んだ後、残された先代支配人の妻と一緒に、主人公が映画館の灯をどうにか途絶えさせないようにと苦闘する姿を描いていきます。

 4は、現代に戻ってきて、いよいよ映画館を閉める時になった支配人が、涙ながらにこれまでの苦労を語る場面になります。

 この「3」のパートの出来が秀逸でした。

 以下、その理由について解説していきます。



 3には、大きなジレンマが潜んでいます。

 主人公は、先代支配人が死んだ後、その妻と二人で、どうにか映画館を存続させようと奮闘します。

 しかし、二人で頑張れば頑張るほど、「先代の妻を寝取った不埒な男」というレッテルを貼られていきます。

 つまり、一生懸命になればなるほど、それは空回りとなり、苦しさと悲しさが積み上がっていく構造になっているのです。

 この構造を徹底的に使い、全てのシーンを切なく悲しく美しいシーンとして演出していきます。

 そして散々観客の心を締め付けた後、4のシーンで一気にその思いを解放させます。

 圧縮の後には当然解放が来るのですが、その圧縮が構造的によくできているなと思いました。

「必死に努力する」という観客の共感を呼べる行動が、結果「自分ではどうしようもない袋小路に迷い込んでしまう」という悲惨な結果に繋がる。

 そして、その状況に迷い込んだ主人公が、涙混じりで懸命になる。

 非常によくできています。

「構造がしっかりとした物語は強いな」と思いました。

 そしてまた、ひ弱な泣き男が似合う加瀬亮がこの役を演じているのもよいです。

 彼以外ありえないと感じさせるキャスティングでした。

 また、妻役の宮沢りえもよかったです。切ない立場の女性の役をよく演じています。

 いい映画だなと思いました。

 ただ、宮沢りえは、もう少し肉を付けた方がいいと思いました。ちょっと痩せ過ぎていて怖かったですので。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)

 別れる間際の夫婦がいた。

 その二人の許に、一通の招待状が届く。オリヲン座からの招待状だ。

 彼らは幼馴染だった。そして、子供時代によくその映画館に通っていた。

 その映画館が閉館するという。その最後の上映に彼らは招かれた。

 妻は行くという。夫は行かないという。

 二人の行動は、その心同様すれ違っていた。

 オリヲン座は京都にある。古い町並みに立つ妻。昔は二人で通っていた道。その先の建物に向かおうとした彼女は足を止めた。夫がいたからだ。

 彼らはオリヲン座へと歩きだす。そして共に過去を思い出し始めた。

 ──数十年前。

 オリヲン座は、無口な夫と美しい妻によって切り盛りされていた。

 当時はテレビもない時代。映画は花形の娯楽だった。

 そのオリヲン座に一人の青年がやって来る。両親を失い、一人で上京してきた十代の男。

 彼は自分を雇って欲しいという。

 最初は断った支配人だが、青年が必死に頼み込むので仕事を手伝わせることにした。

 すぐに出て行くだろうと思っていた青年は、必死に働き、仕事を飲み込んでいった。やがて彼は支配人夫婦の息子のような存在になる。

 記念写真を撮る三人。それは幸福な瞬間だった。だが、その幸せは長くは続かなかった。

 煙草を好んでいた支配人が咳病で亡くなった。

 映画館の灯を消したくない青年は、支配人の妻に頼み込んで映画館で働き続ける。

 だが、時代は変わり始めていた。テレビの登場である。映画は斜陽産業となり、オリヲン座の経営は傾き始める。

 それだけではない。青年が頑張れば頑張るほど、周囲からは「先代の妻を寝取った不届き者」と罵られる。

 青年はその言葉に必死に耐える。彼は先代の妻が好きだった。そして周囲の言葉の通り、彼女と付き合い始める。

 貧しいながらも必死に働き続ける映画館の二人。

 いつしか彼らの許に、小さな客人が通い始める。少年と少女だ。青年と先代の妻は、その二人と心を通わせる。そして、自分たちの子供のように彼らと交流する。

 ──現代。

 必死に切り盛りし続けたオリヲン座。その閉館の時が近付いていた。

 夫婦となった先代の妻は病床に臥していた。老人になった二代目支配人は、懐かしい客たちを前に自分の人生を、映画のために生きた人生を語る。

 それは苦労の連続だった。そして今、その努力も空しく映画館を閉めることになった。

「オリヲン座を閉めるなんて、映画に対する裏切りだ」支配人は涙をこぼしながら告げる。

 そして、映画が始まる。上映演目は、先代支配人が愛してやまなかった「無法松の一生」。

 いまや中年となった幼馴染の二人は、その映画をかつてのように並んで鑑賞する。



 映画館物の映画なので、「ニュー・シネマ・パラダイス」と同様、過去の映画が色々と出てきます。

 その中でも、物語の重要なキーとなっているのが「無法松の一生」という映画です。

 先代支配人の思い出の映画で、その後、主人公の思い出の映画になっていきます。

「どんな面白い映画なんだ?」と思いました。

 機会があれば見てみたいものです。
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