2006年06月03日 03:18:49
映画「心霊写真」を昨日劇場で見て来ました。映画の日だったので。
「心霊写真」は、タイのホラー映画です。「トム・ヤム・クン」で予告編を見て気になった作品です。
先月の平日映画オフのときに深川拓さんにその話をしたところ、「私も気になっていた」という話を聞き、「じゃあ、見に行ったら感想を教えて下さい。よさそうなら見に行きますよ」と返事をしていた作品です。
「きっちりとツボを押さえたホラー映画だった」という話だったので私も見てきました。
見た感想。「ショッカー系の正統派ホラー映画だった」
非常に基本に忠実な、丁寧なホラー映画でした。そして、ショッカー系ではあるもののB級にはなっていない、きっちりとした作りの作品でした。
まずは視覚的に突然怖い物を見せてショックを与え、次に音で不安を煽り、さらに映像と音をリンクさせて驚かせる。
小説ではできない、映画ならではの典型的な恐怖演出法です。
監督二人は「今までない表現を採用するようにした」とプログラム内で語っていましたが、斬新さは特に感じない、手堅い手法ばかりの映画だったと思います。
怖さという点に関しては、「驚かせ系」のホラーなので、背筋がぞっとするような怖さはないです。しかし、「驚かせ系」のホラーとしてよくできていました。良作です。
だれた所もなく、密度も高かったです。
あと、意外に脚本がよかったです(後述)。
作ったのは、タイのCM製作会社(プログラムを見たところ、世界5位らしい)の二人。共同監督です。
社内の短編映画のコンペで勝ち、監督の権利を得たそうです(ちなみにコンペの作品提出者は4名だったそうです)。
二人とも、大学時代までは映画をやっていて、その後CM系に進んだとのこと。「映像には非常にこだわった」ということでしたが、くどくなくシンプルな映像でよかったです。
広告系だと、ときどき非常に分かり難い映像表現をする人がいるのですが、そんなことはなかったです。
プログラムを見る限り、「フレーム内の位置」には物凄くこだわったそうです。そういう方向性なら、まあ大丈夫かなと思いました。
以下、粗筋です。(中盤までのネタばれあり)
若き写真家の主人公は、彼女と親友三人と飲んでいた。その日の帰り、彼女が運転していて車が、突如道に現れた女性をはね飛ばしてしまう。
恐怖に怯える彼女に対し、主人公は逃げることを提案する。そして二人は事故現場をあとにした。
その後、写真家が撮った写真に謎の影が映る。また彼女は恐ろしい夢を見始める。二人は、あの日の事故が気になり調査をするが、警察にも病院にも被害者の女性についての情報は一切なかった。
主人公の彼女は、心霊写真や悪夢の原因が“自分が起こした事故にある”と考える。しかし事故の“事実”は存在しない。仕方なく彼女は唯一の物証である心霊写真について調べだす。
心霊写真の雑誌を出している編集長は、「写真に霊が映るのは、何か目的があるからだ」という。
その調査と前後して、主人公の親友三人が謎の自殺を遂げる。主人公はなぜか非常に怯えだす。
彼女は写真を何度も見直し、ある事実に気付く。不思議な影は、特定の場所にレンズを向けたときにしか写っていない。それは、大学の構内だ。
影が写った場所に彼女は行き、車で轢いた女性が誰なのかを突きとめる。そして、その女性と主人公が一緒に写った写真を発見する。
女は、かつて主人公の彼女だった。そして徐々に、主人公たち友人グループと、車道に突如飛び出して来た女性との関係が明らかになっていく……。
先に「意外に脚本がよかった」と書きましたが、真に恐怖を感じる人物が映画の冒頭ではぼかされており、徐々に明らかになっていく構造になっているために、“恐怖のダイナミックレンジ”の幅を広げることに成功しています。
また、恐怖を感じる対象が、主人公とその彼女の間でシフトしていく様がなかなか上手くできています。
決して物凄いよいできではないですが、きちんと1つの作品世界を作っており、成立させています。
そして、物語の焦点がぼやけずに、きちんと完結している。
中の上ぐらいのできの良作でした。
個人的に評価したいのは、無駄な人物やシーンがないことです。意味のある人物やシーンしか映画中に出てきません。
長編処女作でこれなら、次も期待できるなと思いました。