映画「エクスカリバー 聖剣伝説」のDVDを五月上旬に見ました。
1998年のイギリスの映画で、原題は「Merlin」です。
日本では「マーリン」よりも、「エクスカリバー 聖剣伝説」の方がタイトルとしては売れそうなので、この題名の変更は頷けます。
しかし映画は、徹頭徹尾「マーリン」のお話です。マーリンが生まれてから死ぬまでのストーリーで、アーサー王は後半になるまで出てきません。
面白かったです。そしてよくできていました。こういう視点で、アーサー王伝説を描いているのは新鮮でした。
そして、物語だけでなく、映像作品としても秀逸でした。細かな演出が非常に光っていました。
たとえば、魔法使いが消えるシーンがこの映画では何度もあるのですが、その消え方が気持ちいい。
さらに、妖精が変身するシーンが多数あるのですが、その変わり方が楽しい。
この映画のテーマになっているのは、「精霊に対する信仰神がキリスト教に取って替わられて魔法の力が消えていく」というものです。その精霊や妖精たちの魔法が、非常に小気味よいです。
魔法というものを、“見た目”だけでなく、感覚的な“快感”として描いています。
非常に感心しました。
以下、粗筋です。(中盤過ぎまで記述)
キリスト教の侵攻によって、精霊たちへの信仰心が失われていく時代。
精霊界の女王は、この苦境から脱するために、強力な魔法使いの誕生を望んだ。そして彼女はマーリンの誕生を予見した。
女王は赤子のマーリンの許を訪れ、将来自分のものにすることを宣言する。
時が経ち、マーリンは大人になった。女王はマーリンを自分の王宮に連れていき、人間そっくりな部下の妖精に命じ、マーリンの修行をさせる。
しかし、マーリンは魔法の力を受け入れない。
怒った女王は、マーリンの育ての親を葬る。そのことに激怒したマーリンは、女王を倒す以外の目的で魔法を使わないことを誓った。
さらに時が経ち、マーリンは壮年になる。
彼は穏やかな時を過ごす。しかしその時間のなかで、女王の策略は密かに進行していた。
マーリンが愛した女性が、人間界の王により殺されそうになる。彼女を救うためにマーリンは魔法を使う。
そして、マーリンと女王の闘争は激化することになる。
女王は不実を好み、マーリンは正義を好む。
マーリンは、「人の世に正義をもたらす王」の手で「世界に秩序がもたらされる」ことを望んだ。
だが、初めの王は正義をもたらさなかった。マーリンは失望する。そして、その王の息子を幼い頃から養育し、自分の目的を実行させようとする。
その子供がアーサー王だ。
アーサー王とマーリンは人の世界に正義をもたらそうとする。しかし、再び女王の魔の手が伸びる。
そして、アーサー王と円卓の騎士の物語に繋がり、最後はマーリンと女王の戦いに至る。
はたして、マーリンは望む世界を手に入れられるのだろうか……。
映画は魔法に満ちています。そのなかでもとくによかったのは女王の手下の妖精です。
彼は物語中で、非常に美味しい役を“多数”持っています。
CGでどんな映像でも作れる時代になりましたが、魔法を作るには、道具ではなく作り手のセンスが大切だなと思わされました。
そして、映画の最後の魔法は、非常によい魔法でした。魔法の見せ方だけでなく、使い方にもセンスがあるなと思いました。