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2007年12月30日 11:29:19
男と女
 映画「男と女」のDVDを十一月中旬に見ました。

 1966年のフランス映画で、監督・製作・脚本はクロード・ルルーシュ。

 白黒の映像とカラーの映像がどんどん切り替わって、男女の出会いと恋愛の発展を描いていく、なかなか面白い映画でした。



 この映画には、監督のインタビューなどの映像特典が多く入っていました。

 映画を見た後に、それらを見て「あっ!」と思いました。

 この映画の映像は非常に独特で、ハリウッド映画の映像文法とは大きく違っています。

 最初、そのことにだいぶ戸惑い、その映像文法に慣れてくると、映画を素直に楽しめるようになりました。

 これは、「監督のそういった映像方針なんだろう」と思っていましたが、インタビューを見て「予算の都合だった」というのが分かりました。



 インタビューで監督はこう言いました。

「お金がなかったから、最初は全部白黒で作るつもりだったんだ。でも、映画製作の話を聞いたテレビ局の人が、お金を出すからカラーで作ってくれと言ったんだ。当時は、カラーテレビが出てきた頃で、カラーのコンテンツを探していたんだよ」

 なるほど。

 さらに続けて、監督はこう言います。

「でも、予算がないから、近づいてカラーのフィルムで撮ると、粗が目立つのが問題だったんだ。だから、カラーは遠くから撮れる野外に使い、屋内は白黒で撮る方針にしたんだ」

 そんな理由があったとは。

 よく、物を作る現場では、技術的な制限があった方が、時にいい作品が生まれることがあるという話をするのですが、まさに、この映画はそれに当てはまるのだなと思いました。

 非常に低予算の映画ですが、この映画はアカデミー賞を取っていますので。



 あと、映画の後半はラリーのレースシーンがあるのですが、この撮影についての話も驚きました。

「予算がなかったから、俳優と一緒に本物のラリーに実際に登録して参加して、その車の中でカメラを回していたんだ。自分自身でカメラを持って撮影するからこそ、できる方法だよね」

 ハリウッド映画だと、ラリーのシーン用に、偽者のラリーを作り上げてしまうのでしょうが、低予算映画では何でもありなんだなと思いました。

 だから、映画の中で主人公が「繰上げで優勝になりました」という、変な優勝の仕方をするのだと理解できました。

 優勝のシーンを撮る予算がなかったわけですから。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)

 スタントマンの夫を撮影中の事故で失った女性は、娘を寄宿舎に預けていた。

 彼女は、ある日、その寄宿舎に息子を預けている一人の男性に出会う。

 彼も妻を亡くしていた。

 彼はレース・ドライバーで、事故を起こしていた。そしてその時、ショックで妻が命を絶っていた。

 二人は、互いに距離を置きながらも付き合いだす。しかし、さらに一歩を踏み出すことができない。

 ドライバーは、復帰レースとして、冬場の長距離ラリーを選んだ。そして、彼はそこで繰り上げ優勝となる。

 そのニュースをテレビで見た彼女は、電報で愛の言葉を送る。

 男は、すぐさま車に乗り込み、夜を徹して女性の許に向かう。だが彼女は家におらず、寄宿舎のある町に行っていた。

 男はさらにそこまで行く。そして彼女と出会い、ホテルに行き、ベッドに入る。

 しかし、女性はまだ亡くした夫のことを忘れていなかった。行為は失敗に終わる。

 女性は、寄宿舎の町から、電車で自分の家に戻る。

 男は悩んだ末、車を飛ばして電車に先回りする。

 電車で考えることで、男性への愛を募らせていた女性は、彼の姿を見て、その愛を受け入れる。

 二人はようやく結ばれる。



 男性の心の中での逡巡を、モノローグとして延々と映像に被せてあるシーンがよかったです。

「ああしよう。でも、そうしたら、彼女はこう思うかも。やっぱり、こうしよう。でも、それだと……」と、延々と悶々としながら考え続けるのが面白かったです。

 車を飛ばしながら、ぐるぐる頭の中で回っているので、事故を起こさないかはらはらしていました。

 こういった、緊迫感の出し方もあるのだなと思いました。
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