2024年に読んでよかった本、他
2024年に読んでよかった本、他です。Twitterで書いたものをまとめて、加筆したものです。
■ 今年読んでよかった本
今年読んでよかった本、その1
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『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』(早川書房) イタリアで、マフィアに復讐するために、個人で新興犯罪組織を作って挑んだ男の実話。
すごいのは、その資金をギャンブラーとしての腕で稼ぐところ。「プロの賭博師すげー」と思いました。
あと、この本は、2年前に読んだこちらの本の流れで読みました。こちらもよかったです。マフィアの歴史がまとまっています。
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『シチリア・マフィアの世界』(講談社学術文庫)
今年読んでよかった本、その2。
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『日本共産党 「革命」を夢見た100年』(中公新書) 序盤の組織のぐだぐだ具合がすごいです。幕末の志士のお金に対する適当さを見ているようでした。
すぐにお金を使い込んで融かしてしまいます。これぐらい粗忽でないと、そもそもこんな活動始めないよなと思いました。
あと、ここ数年で読んだ組織系だと、ここらへんも面白かったです。
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『新疆ウイグル自治区 中国共産党支配の70年』(中公新書)●
『太平天国 皇帝なき中国の挫折』(岩波新書)●
『大東亜共栄圏 帝国日本のアジア支配構想』(中公新書)●
『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)
今年読んでよかった本、その3。
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『ハプスブルク家』(講談社現代新書) これまでも、大航海時代を中心に、ちょくちょくとヨーロッパの歴史の本を読んでいます。その歴史に、1本背骨が通るようで面白かったです。ちょっと古いけど。
同じ作者の流れで、次の本も読みました。
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『マリア・テレジア』(河出文庫) この作者、マリア・テレジアが好き過ぎるだろうと思いました。塩野七生のカエサル好きを彷彿とさせました。
今年読んでよかった本、その4。
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『死の貝―日本住血吸虫症との闘い―』(新潮文庫) 各方面から感想が流れてきていましたが、滅茶苦茶面白かったです。
多くの人たちがリレーのようにバトンタッチしながら、徐々に病気の正体が解き明かされていく様が圧巻でした。しかしまあ、次々に現れるハードルがすごかったです。
今年読んでよかった本、その5。
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『最悪の予感 パンデミックとの戦い』(ハヤカワ文庫NF) 病気との闘いそのものよりも、アメリカという国のいびつな構造が面白かったです。
国の中枢の破壊と創造のサイクル。大統領と末端との距離の短さ。滅茶苦茶アンバランスな国だなと思いました。
あと、パンデミック系では、ここ数年で読んだ次の本も面白かったです。
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『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』(早川書房 )●
『ホット・ゾーン』(ハヤカワ文庫NF)
今年読んでよかった本、その6。
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『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』(サンマーク出版) 大規模プロジェクトがなぜ失敗するか研究している学者による本です。
さまざまな大規模プロジェクトの記録を蓄積して、失敗の理由を分析して共通点を炙り出していきます。
すごく面白いわけではないが、「ああ、そうだよなあ」と思わされながら読み進める本でした。
あと産業系だと、去年読んだ次の本がものすごく面白かったです。
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『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版』(日経BP) 1つの産業が立ち上がり、世界が変わっていく様子に興奮します。
今年読んでよかった本、その7。
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『イーロン・マスク 上』●
『イーロン・マスク 下』(文藝春秋) 工学ハイスペックかつ、あらゆる勝負に全ベットする男のリスク・ジャンキーな半生です。
イーロン・マスクに対する解像度が上がった気がします。
イーロン・マスクの本を読もうと思ったのは、元々、こちらの本を読んだのが原因です。
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『魔王 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』(早川書房) こちらもIT系の人の半生です。イーロンと同じ世代で、イーロンと同じ南ア出身です。彼は、クスリのネット通販で成り上がった男です。向精神薬から始まり、麻薬組織を立ち上げました。
こちらも非常に面白かったです。この本を読んで、イーロン・マスクにも興味を持ちました。
今年読んでよかった本、その8。
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『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―』(新潮選書) 外から見ると異様に見えるアメリカの精神形勢を宗教の面から見ていく本。
そういえば、元々メイフラワー号という宗教が発端の国だよなあと。
なぜメガチャーチができたのか、なぜ巡回説教師みたいな存在ができたのか。そうした土壌と歴史的変遷がまとまっています。
映画『エルマー・ガントリー』の背景が分かる良書でした。
● ここ数年でよかった本
ここ数年でよかった本。その1。
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『プロジェクト・ヘイル・メアリー 上』(早川書房)●
『プロジェクト・ヘイル・メアリー 下』(早川書房) 危機つぐ危機なのにニコニコしながら読んでしまう本です。
他の人と同じで「何も言わないから、ともかく読め!」とおすすめします。
ここ数年でよかった本。その2。
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『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)。 セキュリティーは基本的に攻撃側有利という特性を持っています。その前提で、いかに情報セキュリティーが敗北を続けたかの歴史をまとめた本です。あと、セキュリティー業界の欺瞞も暴いています。
ここらへんをまとめた本は、初見だったので面白かったです。
ここ数年でよかった本。その3。
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『列仙伝・神仙伝』(平凡社) もともと浦島太郎の時代による変遷を調べていて、その結果「読まないと駄目だな」と思って読みました。
浦島太郎の原形を理解するには、中国の神仙についての基礎素養を持つ必要があると分かったので。
個人的な興味に合致したもので、万人におすすめしないです。
ここ数年でよかった本。その4。
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『スノーデン 独白 消せない記録』(河出書房新社) 物事の内幕を見るのは面白いです。スノーデン事件の内幕が書かれています。それとともに、アメリカのIT系諜報の歴史に触れることができます。
スノーデン事件は、こういう経緯だったのかと思いました。
ここ数年でよかった本。その5。
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『平家物語 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』(河出書房新社) 感想は「義経怖い」。常識の通じないキラーマシンが、キレキレでやってくる感じです。
義経が出てくると途端に殺伐とします。
その当時の文化や常識を無視して、敵に最大の打撃を与えていく感じです。戦争においての合理主義者の怖さを実感します。
ここ数年でよかった本。その6。
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『冷血』(新潮文庫) トルーマン・カポーティの有名な本。映画は観ているけど、あれは本を書いた経緯をドラマにしているので、本の内容とは違うというのは知っていました。
教養として読んでおこうと思って読みました。犯罪ノンフィクションと文学の融合という感じで面白かったです。
まあ、このジャンルの元祖ですし。
ここ数年でよかった本。その7。
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『黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』(亜紀書房) もともとこちらが面白かったので、この系統の元祖である『冷血』を読みました。
ここ数年でよかった本。その8。
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『言語設計者たちが考えること』(オライリージャパン) プログラミング言語設計者たちへのインタビュー集です。
そうだよなあ、みんな不満があるから「新しい言語」を作るんだよなあ。
各人が毒を吐き始めてからが本番です。恨みのこもったディスりがよかったです。
ここ数年でよかった本。その9。
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『烽[とぶひ]の道 古代国家の通信システム』(青木書店) 日本古代の通信システムの本です。電信以前の通信システムについて調べている時に読んだ一冊です。
狼煙による通信です。
想像よりも通信システムが高度だったことに驚きました。九州から近畿に、普通に短時間で通信できるんだと。
そりゃあ、朝鮮半島の影響をすぐさま伝えないといけない事情があるから、そうなるかと。
ここ数年でよかった本。その10。
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『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(上)』(早川書房)●
『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(下)』(早川書房) イスラエルが建国以来、敵と認定した相手を次々と暗殺して、そのテクノロジーを進化させていく歴史をまとめた本です。
不謹慎だけど滅茶苦茶面白かったです。そして、すごい無法国家だなと思いました。
ここ数年でよかった本。その11。
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『トゥルン・ウント・タクシス その郵便と企業の歴史』(三元社) 郵便システムという利権で貴族になり、各国に対する影響力を増していった一族の興亡を経理の記録から見ていく本です。
電信以前の通信システムについて調べている時に呼んだ一冊です。好きな人には刺さります。
こんなところです。
ここ数年で読んでよかった本をまとめると「早川書房」率が高いなあと思いました。翻訳、ノンフィクション物が強いですね。