7日の深夜1時(8日の午前1時)頃に、のごさんから電話がかかってきて、「柳井さん、おいしい日本酒が入ったんですが、DVDでも見ながら飲みませんか?」と。「いつ飲むんです?」と尋ねたら「明日の11時からどうです?」「午後11時ですか?」「いや、午前11時からです」と。
そんなわけで、8日の午前11時、晴天、炎天下の真昼間から、何故か日本酒を飲みながらDVD鑑賞会に。のごさんとなら、いくらでも濃い話になるので望むところです。
集合は東横線の白楽駅。まずは、私がいつも行っているGEOにDVDを借りに行く。当初のごさんが借りようとしていたDVDは、全て借りられている始末。どちらかというとマニアックな映画だったのですが、何故か全てレンタル中。「のごさんにそっくりな趣味の人が、きっとDVDを借りまくっているんですよ」「ここでアレゲな人なら、自分の部屋が盗聴されているのを疑いますよね」と、かなり駄目な会話を展開。
結局、最初の予定とは違うけど、のごさんがお薦めなDVDや、のごさんが個人的に見てみたいDVDを4本借りることになりました。
以下、借りたDVDのリストです。
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木更津キャッツアイ 第1巻・
アンダーワールド・
TAMALA2010 a punk cat in space・
サウスパーク 映画版 DVDを借りたあと、昼飯と酒のアテを購入して私の部屋に移動。いい年の男が2人して日本酒を飲みながら、真夏のクーラーの部屋で真昼間からDVD観賞。かなりどうかと思うシチュエーションなのですが、早速DVDを上から順番に見ていきました。
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木更津キャッツアイ 第1巻 池袋ウェストゲートパークも面白かったですが、こちらも小ネタ満載で楽しめました。最初、ジャニーズの顔の区別がつかずに戸惑いましたが、一話目の途中まで来た時点で把握できました。周辺キャラの濃さと小技の出しまくりっぷりがよいです。
いろいろな話をぶちこむ割には、最後はちゃんと温かく締めるのは、見ていて安心できるなあと思いました。安定して面白いです。
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アンダーワールド 周りから電波はいくつか飛んできていたのですが、見たのは始めてでした。現代ゴシック系のヴァンパイア物。(えー、ヴァンパイア・ザ・マスカレードが分かる人は、そんな感じの世界ということで)
主人公の女優が、全身ラバーのスーツを着ていて、皮膚呼吸ができずに辛かったという話を各所で聞いていたのですが、本当に頭部以外は覆われていて大変そうでした。(身体のシルエットが分かり難くて少し残念。女優を見るときは、その骨格、肉付き、テクスチャを観賞するのも楽しみの1つなので)
美術以外のできは凡庸。作品全体としては及第点以上のできでした。
画面は青みがかった暗闇の描写が特徴的な構成になっていました。ただ、暗い画面が多い割には脚本の工夫があまり見られず、話しのリズムが平板で、入りと抜きがない構成になっているのが難点でした。暗い画面にする場合は、監督が見せたい部分だけを見せ、見せたくない部分を見せなくて済むというメリットがあるのですが、デメリットとして情報量が少なくなるという副作用があります。
それを解決するためには、シーンごとにリズムを変えて(緊張と弛緩を調整して)観客を飽きさせないようにしたり、暗闇の中にも密度の濃い情報をぶちこむ必要があります。エイリアンとかプレデターとかを見ると顕著なのですが、暗いシーンでも情報量が多いです。アンダーワールドは、そこらへんが弱く、個人的には一工夫欲しいなあと思いました。
建物も気になり、「建物は、ゴシック系にしては作りこみが足らないですね」と、のごさんに話したところ「予算の関係じゃないですか」と返事が。そうかもしれません。
あと、映画中で一番気になったのは、主役の女優のケイト・ベッキンセールの英語の発音です。発音が悪いというのではなく、えらくはっきりとしていました。日本人の私が、字幕を読むよりも声を聞いて理解するほうが楽なぐらい発音が平易。彼女の部分だけ字幕いらないんじゃと思いました。実際、字幕見てなかったし。
いくらなんでもアメリカ人の発音じゃないだろうと思い、映画を見たあと、のごさんとこの女優の発音について、いろいろと話しをしました。あとで調べたらイギリス出身とのこと。なるほど、アメリカの発音じゃないわけです。
あと、主役のケイト・ベッキンセールの声は、この役にはちょっと幼過ぎる印象を受けました。声に年輪が感じられなかったです。
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TAMALA2010 a punk cat in space 「SF筋で評判がよく、新宿の単館上映だったので見に行けなかった」ということで、のごさんが「今日いい機会なので見たい」と、かごに入れた作品。私のアンテナにはまったく引っ掛かっていませんでした。SF筋の人ではないので。
いい意味でぶっ飛んだ作品でした。アート系の可愛らしい二足歩行猫が、これまた可愛らしく抑揚のない無感情な声で「ぶっ殺すわよ」とか言う作品です。万人にはお薦めできませんが、濃いものが好きな人にはお薦めできる一作。
見てて面白かったのは、私とのごさんとで、吹き出したり笑ったりするタイミングが違うところ。守備範囲が違うので、ツボも違うのかもしれませんね。
終わってみると90分以上の作品でびっくりしました。よく、こんな企画段階で海の物とも山の物とも分からなさそうな、監督の個人的感性のみに頼った印象の作品を90分の尺で作ることになったなあと。45分なら分かるけど……。のごさんと2人で、企画段階でどういう経緯があったのかを、想像しあって議論しました。
作品は90分の尺できちんと楽しめました。
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サウスパーク 映画版 今までサウスパークという作品に対して、「変な絵の毒舌アニメ」という印象しか持っておらず、全然興味の対象外に置いていたのですが、映画を見て愕然としました。想像を遥かに越えて、ハイ・クオリティの作品じゃないですか。本日見た4本の中で、飛びぬけてよくできていました。
はちゃめちゃで、ヤバイ言葉やネタや絵面が連発で、問題作であることは確かなのですが、シナリオの作りが非常にしっかりしていて、ミュージカル(映画版はミュージカル仕立て)のできもとてもよく、唖然としてしまいました。サウスパークを今までなめていました、すみません。
見終わったあと、サウスパークの話をいろいろとしたのですが、作っている人たちはミュージカルの専門教育をきちんと受けている人たちとのこと。納得です。
そのあとミュージカル関係の話になり、英語はミュージカルに向いている言語ですよねという話をしました。ちなみに日本語はミュージカル向けの言語ではありません。
英語は強弱アクセントの言語で、日本語は高低アクセントの言語です。日本語は言葉に音階がある(2段階高低アクセント。高低アクセントの言語の中には、4段階などの多段階音階を持つ言語もある)ので、メロディーにどんどん言葉を被せていくのには向いていません。メロディーに合わせて、その高低の流れに合わせた語彙を選択しなければ、意味が変わったりします。
また、日本語は一音一拍の言語で、これもミュージカル向けの言語ではありません。例えば日本語で「取り上げる」と言うと、これは「と・り・あ・げ・る」で5拍になります。英語は、一音一拍の言語ではないので、「pic up」だと、「pic・up」で2拍となります。この拍の問題は、以前ラジオで聞いたのですが、ロックが日本に入ってきたときにも問題になったそうです。日本語でロックを歌おうとしたとき、拍に対して文章が長過ぎて歌詞を歌えなかったそうです。そのときには、8ビートのロックを16ビートまで分割したら日本語が乗ったということもあったそうです。(最近のラップとかを聞いていると、語の拍分割が面白かったりします)
以上のような2つの観点から、日本語ではミュージカルをやりにくくなっています。そのため、気持ちよく歌われている向こうのミュージカルを見ていると、気持ちいいと共に、羨ましいなと思ったりもします。いやあ、いいですねえミュージカル。字幕なしで理解できればもっといいのですが。
さて、DVDを見終わった頃にはとっぷりと日も暮れて、2人で夕食を取ることに。白楽駅の近くの飯屋に入り、また雑談をしていました。
この日雑談した内容で、特に印象に残ったのは、現在の高校生の言語能力の低下です。最近塾講師もやっているというのごさんが、高校生の言語能力の低さを嘆いていました。5択の問題のうち、1つか2つ、そもそも選択肢が読めなくて「3択+不明2つ」とかいう状況になっているとか。英語の先生の嘆きも甚だしいらしく、英語を日本語に訳したあと、その日本語を高校生が理解できる簡単語に訳してやらないと通じないとか。「ゆとり教育許すまじ」とか言っていました。大変だ。
あとはオタク話も印象に残りました。「最近、薄いのにオタクを名乗る人が増えていて、お前はオタクじゃないだろう、単なる特定の作品のファンだろう」と、のごさん御立腹。まあ、オタクという言葉も意味がここ10年ぐらいで劇的に変わりましたから。語のメジャー化と共に、意味の守備範囲も広くなっているのだと思います。「オタクは、何かの作品に触れたとき、その周囲の横の情報と、経緯の縦の情報を漁る人だと思っているので、私はオタクじゃないですよ」と私。私の場合は、興味のある分野を興味のある期間吸収するだけで、特に原典まで遡ったりはしないので。新しい物に触れると、これまでに触れた物との位置関係を考えて位置付けはしますが、強いて虫食いの部分を埋めようとはしません。
何か、突発的に濃い半日になってしまいました。