2005年03月10日 00:20:35
武田鉄也原作、小山ゆう漫画の「お〜い!竜馬」が最近コンビニで出ているので読んでいるのだが、最初の巻で物凄く以蔵を丁寧に描いていて、なんて残酷な描写なのだろうと思った。
言わずもがな、以蔵とは人斬り以蔵。
その後の武市半平太との関係や、彼の死に様を知っているだけに、以蔵がいきいきと描かれれば描かれるほど、作者の描きたい落差を感じ取り正直鳥肌が立った。
この残酷さが原作の武田鉄也の持ち味なのか、漫画の小山ゆうの持ち味なのかと問われれば、小山ゆうだと思う。この人の漫画は基本的に垂直移動の漫画だ。小山ゆうは、人間の精神の上昇、下降を描きたがる。
近年連載している「あずみ」はエンターテインメント性が強いが、それでもそういう部分の偏愛は残っているように思える。
小山ゆうは壊れる人間が好きなのだと思う。もしくは人間が壊れるのが。人間は、上っても下がっても壊れる。
物語とは人間の変化を描くものである。彼の描く物語が、どれもある種の暗さを持っているのは、その変化の好みが縦の変化だからだと思う。人間が落ちたり、垂直に上がっていくのが好き。
エンターテインメントとしての横軸の変化は持ちつつ、その底でふつふつと上下の落差を偏愛する。小山ゆうという漫画家の暗さはそこに起因すると思う。
小山ゆうの暗さは好きだ。そして何を書いてもそれが露呈するのが好きだ。以蔵のあまりにもいきいきした描写を見ながら、そんなことを考えた。