2005年05月17日 02:04:00
(mixiに書き散らした文章からの修正転載)
昔のスピルバーグっぽくないです。大人なスピルバーグの作品です。
この作品と同時期撮影が「ジェラシックパーク」で、大人向けと子供向け2作品に自分の方向性を分けて処理していたというのが、よく分かる映画でした。
以下映画感想。
最初は自分の儲けのために動き、途中から人々を救うために動きだしたシンドラー。そういう経緯のため、ずっと偽善者っぽかったシンドラーですが、最後の最後で感情を露わにするシーンで一気に感動に誘ってくれます。
ナチスによるユダヤ人大虐殺を扱った映画ですが、あくまで焦点は人間1人の命の重みです。それを最後の最後で伝えるために、延々とスピルバーグが持っているテクニックを使い尽くす。「シンドラーのリスト」はそういった映画です。
195分もあり、モノクロ映画で、派手なシーンもないのに、ずっと画面に釘付けにするのは流石スピルバーグです。上手いです。
色々と観客に気付かせるテクニックを駆使して、観客に「自分は気付いた」と思わせる。そうやって興味を持続させ、複数の伏線(人物の運命)を宙ぶらりんにさせたまま、注意を保ち続けさせる。
非常に丁寧な作りでした。
そして言いたいこともはっきりしています。
ナチスのユダヤ人虐殺を描くのに「大量虐殺」ではなく、「あくまで1人1人が理不尽に殺されていく様」を描いているのが、この映画の最大の胆です。
大量虐殺という、ともすれば荒唐無稽にしか思えない殺戮ではなく、あくまで人が人を殺しているという場面を執拗に描き続ける。「殺す人」がいて、「殺される人」がいる。あくまで人間が人間を殺しているという因果関係を延々と積み重ねる。
その繰り返し描写が、この映画の説得力になっていて、かつ最後のカタルシスの台詞の重みに繋がっています。
長い映画ですが、構成がシンプルかつ堅固なので、話の展開がぶれず、一気に感動へと誘ってくれます。
文句なく面白い映画でした。