「ひみつの箱」（石坂啓堀田あきお）

http://www.bigoriginal.shogakukan.co.jp/manga/himitu_c.html

2005年05月26日 19:14:17

　ビッグコミックオリジナルで連載されている、最近楽しみにしているマンガです。
　ストーリーは以下のような感じです。

　主人公のワケアリは小学校に通っている。しかし彼は実は小学生ではない。大人だ。
　彼は幼い頃の事故で成長が止まった。その後、彼はIT系企業の社長として成功し、大金を手に入れた。そんな彼が医師から死を宣告されたのだ。
　余命をどう過ごすか。そのことを考えた時、彼は小学校時代の初恋の少女を思い出す。そして彼女が先生をしている小学校に、小学生として転入する。
　彼は偽りの人生を歩むために家族も雇った。俳優の父親と母親だ。そして彼は小学生として、秘密の人生を送り始める。
　ワケアリは誰よりも大きな秘密を持っている。しかし、小学校のクラスメート達も、短いながらも人生を過ごしてきた。彼らも秘密を持っている。ワケアリは小学生として、彼らの秘密を覗き見る。
　そして、憧れていた初恋の人である先生も無垢な人間ではない。秘密を持っている。その秘密を知りながらも、ワケアリは彼女を慕う。大人として。
　各人の秘密を少しずつワケアリの視点で眺めながらストーリーは進んでいく。そして、ワケアリの秘密も少しずつ周囲に知れ始め……。

　決して派手なマンガではありません。どちらかというと地味なマンガです。それが、シンプルで味のある絵で描かれています。
　これは「微かな揺らぎ」を楽しむマンガです。少年マンガが大きな揺らぎを楽しむものとすれば、これはあまり揺れないことを楽しむマンガです。ストーリーは時にショッキングだったりします。しかし、基本的に「微かな揺らぎ」で進んでいきます。
　一言で言うと「大人のマンガ」です。その大人のマンガが、大人である主人公のワケアリの視点で描かれていきます。小学生達が驚くなか、彼は冷めた大人の視点で周囲を見ていきます。その視点を読者も共有して楽しむのです。
　なかなかよくできたマンガです。
　少年マンガの楽しさとは違う楽しさを味わうことができます。
　一番面白いマンガではないですが、現在読んでいるマンガの中で、楽しさの種類が被っているマンガがないので貴重です。
　楽しさというものにも種類があります。というわけで、毎回楽しみにしています。

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