2005年06月12日 21:18:55
昨日読了。宇宙時代の幕開けと思われていた「スペースシャトル」が、実は政治的なごたごたの末に、十徳ナイフ的な「何をやっても専門の道具に勝てない」道具になり、さらに「コスト的にまったく採算の合わない」ものになり、その結果「世界中の宇宙開発を致命的に遅延させ、悪影響を与えた」という内容の本。
スペースシャトルの技術的背景から入り、スペースシャトルの設計のまずさ、その悪影響の世界への浸透などを、順を追って解説していく本です。
著者は宇宙&ロケット好きな人なら、おそらく名前を知っているであろうノンフィクション・ライターの松浦晋也氏。ちょっと前に、私が行った「ロケットまつり」のメインメンバーでもあります。
もっと専門的な堅い本かと思っていたのですが、物凄くサクサク読めるので、最初ちょっと面くらいました。コンパイルの間に数ページ平気で読めます。とても平易な語り口なので、これなら中学生ぐらいから読めるかなと思いました。
で、感想です。「極限状態で活動する道具の器用貧乏は致命的」という指摘に、器用貧乏な私はちょっとへこみました。
読んでいて特に目を引いたのは、何が目的なのか分からなくなるほどのNASAとスペースシャトルの迷走ぶり。そして、それを政治的にひた隠しにしようとするNASAの姿勢。
私達が普段批判する「お役所的」な問題がNASAにも潜んでおり、それがタマネギの皮をはぐように明らかにされていく様に、ずっしりと肩に乗りかかる重さを感じました。そして、日本もそれに巻き込まれ、まだその影響を引き摺っている様が。
宇宙時代を阻むのは、人間の能力ではなく人間の性癖なのか。
本を読む速度が遅い私でも、コンパイルの片手間に2〜3日で読めました。内容を確かめたい人はサクッと読んで見るといいかなと思います。いや、それにしてもウェハースのように軽く読めました。