2006年01月28日 01:37:03
映画「下妻物語」のDVDを12月下旬に見ました。
どうでもよいことですが、この映画を見ているとき、DVDに傷があり、ラストシーンのよいところで一分ぐらい読み取り不能でした。
そのため、DVDレンタルショップに行ってクレームを言い、新しいDVDに交換してもらったという経緯があります。
ビデオの頃に比べて、DVDはやたら読み取り不能になっているものが多いです。
アナログがデジタルになった場合の最大の利点は、メディアに依存しない情報保存性にあるはずなのに、DVDという貧弱なメディアに情報を固定化させているせいで、末端ユーザーの不便を助長しているのは腹立たしいことです。
映画の感想に戻ります。
「下妻物語」は、滅茶苦茶面白かったです。
いや〜、普通の映画ではタブー視されている表現手法をバシバシ使って、物凄くポップで楽しくて気持ちのよい映画を作っていますよ。
これは非常によい映画です。
モノローグだらけで、通行人はいきなり主人公の心を代弁するし、駅のテレビからは主人公の生い立ちがいきなり流れ出すし。
リアリティとは完全に対極の演出だけど、この物語ではそれが全部よい結果を生んでいます。
私は本作をアイドル系映画だと思っていたので、映画館でやっているときに完全にスルーしていました。
しかし、見てみると全然違いました。勿体無いことをしました。
さて、以下粗筋です。(以下ネタばれあり)
主人公はロリータファッションに身を包む女子高生。関東の片田舎の下妻から、お洒落な服を買うために、代官山まで通う女の子。
彼女の父親はヤクザ崩れの駄目男。関西でバッタ物の服を売ってお金を稼いでいたが、調子に乗りすぎて逃げ出す羽目に。母親も父に愛想を尽かして出て行った。
主人公は、そんな父と父方の祖母と暮らしている。彼女は、世間を冷めた目で見ており、自分の欲望だけに忠実な冷血漢だ。
あるとき彼女は、自分の服を買う資金を稼ぐために、父親の夜逃げの原因になったバッタ物の服の在庫を売ろうする。
彼女は個人情報誌に広告を出す。その商品に飛びついてきたのが地元のヤンキー娘だ。彼女は主人公とは正反対の性格で、義理と人情の世界に生きる熱血漢だ。
ヤンキー娘は主人公に「安く売ってくれた」と恩義を感じ、「友達になってやる」と言う。しかし主人公は、「私は友達なんかいらない」とつれない返事をする。
そんな二人は、ヤンキー娘の一方的な友情のせいでつるみ出す。
しばらく経ったのち、ヤンキー娘が「金がいる」と言い出す。世話になった元総長の結婚式に、バシッときめた刺繍の入った特攻服を着て出席するためだ。
最初は話半分に聞いていた主人公。だが、冷血漢だった彼女も、ヤンキー娘のせいで変わりつつあった。
主人公には「ロリータファッションの服が好き」という趣味の延長としての特技があった。刺繍だ。ヤンキー娘の特攻服の刺繍を引き受けることで、二人の友情はさらに深まる。
だが、二人の仲に危機が訪れる。あまりにも多くの時間を主人公と過ごしていたヤンキー娘は、暴走族の集会に欠席し、その報復のために呼び出される。
自分のせいで焼きを入れられることを知った主人公は、親友を救うために単身救出に行く。
ともかく、演出と映像のテンポが非常によかったです。
色味の調整や映像のつぎはぎなど、一見するとくどくなりがちな演出を物凄い勢いで使っているのですが、逆にそれが軽快感を生んでいます。センスがいいなと思いました。
しかし、「脚本と映画の剥離はどのくらいなんだろう」と正直思いました。脚本では書き切れない表現がかなりの密度で入っていたので。
ともかく、面白かったです。
あと、主人公が救出に行く前のデザイナーの社長さんの台詞がとてもよかったです。
「僕は仕事だけをやってきました。だから友達も作りませんでした。僕には、心を開いて語れる友人は一人もいません。あなたは行くべきです。あなたを待っている友達がいるのならば行くべきです」(こんな感じの台詞)
この台詞があることで、映画のテーマが明確になり、温かい心を感じることができました。
文句なくおすすめできる映画でした。