2006年03月02日 04:30:20
映画「ジョーズ」のDVDを1月下旬に見ました。
断片的には見た記憶があるのですが、通して見た覚えがないので借りてきてちゃんと見ました。
やっぱり、通して見たことがなかったです。
この映画は、映画関係や脚本関係の本には、必ずと言っていいほど登場する映画です。
今回改めて見て思いましたが、とても面白かったです。時間が経っても色褪せていない面白さがあります。
「名作は、やはり名作だった」と思いました。
以下、粗筋です。最後まで書いているので完全にネタばれです。嫌いな人は絶対に見ないで下さい。
また、今回は試みとして、脚本上の重要な場所に「()」付きで解説を入れることにしました。
教科書でもよく絶賛されている脚本なので、自分がどのくらい理解しながら映画を見ているのかを確かめるために試みてみました。
映画自体の長さは125分です。通常の120分より5分長いです。そのため、「ここが切れ目かな」というタイミングが、通常よりも5分ほど後に来ていました。
(アクト1)
(セットアップ:状況説明と各登場人物の紹介)
海水浴シーズンが始まる直前、アミティ島に巨大鮫が現れ、人間を食べ始めた。
NYから赴任してきた警察署長は海岸の封鎖を考える。しかし市長は、観光収入の激減を避けるために、封鎖に反対する。結果的に警察署長は折れて、海岸封鎖を取りやめる。
島では議会が開かれ対応策が練られる。そして、鮫に賞金が掛けられる。
その場に、一人の老船長が現れ、「俺なら倒せる。しかしその金額で命を張ることはできない」と捨て台詞を吐き、立ち去る。
島民たちは鮫を捕まえるために海に繰り出す。その日、警察署長が呼んでいた鮫の専門家の学者が島に到着する。
住人たちは鮫を捕まえる。喜ぶ島民と警察署長。
だがその場に、鮫に殺された少年の遺族が現れ、「海岸の封鎖をきちんと行なえば息子は死ななかった」と警察署長を罵倒する。
(第1ターニング・ポイント[35分]:警察署長は、鮫を倒さなければならないという後ろめたさを持つ)
全ては終わったように見えた。
しかし、学者は「鮫の大きさが合わない」と主張する。警察署長と学者は、捕らえた鮫を調べ、無関係な鮫だと知る。
(アクト1終了)
(アクト2開始)
警察署長と学者は海に出て鮫を探す。そして鮫のせいで壊された難破船を発見する。
船には鮫の歯が刺さっていた。学者は巨大鮫の証拠としてその歯を採取するが、船員の死体に驚き、海中に落としてしまう。
巨大鮫が存在する証拠を得ることはできず、警察署長と学者は市長を説得することに失敗する。
海岸は封鎖されることなく、監視の人員を増やすことで海開きが行なわれた。
そして鮫は現れた。鮫は人々を恐怖のどん底に陥れ、警察署長の息子が食べられそうになる。
海岸には市長の子供もいた。鮫を倒さなければならないことを全員が知る。
(ミッド・ポイント[65分]:警察署長は、鮫を倒すということを、自分の問題として強く認識するようになる)
警察署長は、市長に了解を取り付け、老船長を雇うことに決める。
警察署長、学者、老船長は、ボロ船「オルカ号」に乗り込み、海に出る。
三人は巨大鮫に銛を打ち込み、樽を引かせて弱らせようとする。しかし、鮫は驚くべき力でびくともしない。
最初はいがみ合っていた学者と老船長だが、戦いのあいだに友情を育む。そして、老船長は過去の経験を語り、鮫の恐ろしさを全員が知る。
(第2ターニング・ポイント[95分]:警察署長は、自分の敵が恐るべきものだと知る。今後の戦いの困難を想像する)
(アクト2終了)
(アクト3開始)
彼らは鮫との最終決戦を始める。
船での牽引、毒銛での攻撃、次々に策を繰り出すが、鮫は圧倒的な力で三人を翻弄する。そして船を破壊し始める。
学者が行動不能になり、老船長が倒れ、最後に警察署長だけが戦える状態になる。
署長は、鮫の口に入った圧縮空気のタンクを銃で狙い、大爆発を起こして鮫を倒す。
(クライマックス)
警察署長と学者は、海を泳いでアミティ島に戻る。
(アクト3終了)
だいたいこんな感じの構造になっているのではないかと思いました。専門家ではないので、間違っている部分もあると思いますが。
シナリオは三十分単位で分割されていて、その三十分のなかに、だいたい二つの大きなエピソードが入っているという感じでした。
話の構造がはっきりしていて見やすかったです。
特に序盤三十分のキャラクターを一人ずつ登場させるやり方は上手いなと思いました。
警察署長が行動すると、それに対して脇役が一人ずつ話に絡んできます。そして各キャラクターが、どういう人物か端的に分かるエピソードが発生します。
これだけ分かりやすく、そして印象的に各人物が出て来ると、すんなりと映画の世界に入ることができます。
さて、本DVDには、メイキングを含めた、製作者たちのインタビューが付いていました。
こういった面白い映画に、インタビューが付いているのは非常に嬉しいです。
撮影はかなり大変だったようです。鮫の模型がなかなか動かなくて……。
そりゃあ、大変です。鮫の映画なのに。
インタビューのなかで印象に残ったのは、二人のプロデューサーの言葉です。
「映画戦争を生き抜いてきた僕たちは知っている。一度でもカメラからフィルムを取り出したら、もう二度とその映画は撮影されることがないってことを。だから、鮫が動かなくても撮影をし続けるしかなかったんだ。たとえ、一日にわずかずつしか撮影できなくても、撮り続けなければならなかったんだ」
集団で物を作るということは、そういうものだと思います。一度解散したスタッフをまた集めるのは物凄く大変なので。
含蓄のある言葉だなと思いました。
インタビュー中、もう一つ興味深いことがありました。
それは、スピルバーグが語っていたことですが、ラッシュ、試写会と、映画を人に見せるたびに、どんどん新しいシーンを撮って、差し替えていったということです。
「これでは駄目だ。もっといいシーンが必要だ」
「ここは、こう変えれば、悲鳴がもう一つ増える」
この人は、最後の瞬間まで手を抜かない人なんだなと思いました。