映画「ディープ・ブルー」のDVDを六月上旬に見ました。
世界中の海で生活する生物たちの、ダイナミックな映像を繋げて見せたドキュメンタリー作品です。
「これだけのクオリティの映像をこの分量用意するためには、いったいどのくらいの時間、カメラを回さないといけないのだろうか」と思う、気の遠くなるような作品でした。
実際、公開当時、その撮影されたフィルムの長さを聞いて驚いた記憶があります。
島嶼、北極、南極、大洋、深海と、様々な場所に移動しては、劇的瞬間を収めています。見応えがありました。
粗筋というものが特にある作品ではないので、編集について少し気が付いたところをメモしておこうと思います。
(ちなみに粗筋はないけれど、構成はきちんとあります)
この映画の編集は、いくつかの大ブロックと小ブロックで構成されています。
大ブロックというのは、島嶼、北極、南極、大洋、深海などの、ひとまとまりの場所を単位としたものです。
小ブロックは、それらの場所の内部で、いくつかの短いストーリーを形成しているものです。
基本的に本作は、海の生物の生態を順次並べているものです。しかし、それらの映像を単に羅列にすると非常に退屈なものになってしまいます。
そこでこの映画では、小ブロックごとに基本フォーマットを用意して、その方式に沿った編集を行なっています。
その基本フォーマットは、大まかに言って以下のようなものです。
1.遠景
2.少し寄った映像
3.生物をじっくりと見せる
(1〜3の繰り返し)
まず、1で画面を大きく変えて観客の気持ちを解放します。早回しで映像を見せたり、嵐のダイナミックな映像を見せたり、小さな生物がびっしりと地面を覆った映像を見せたりします。
多くの場合、これらは生物とは関係のない、単に“ダイナミックな”映像です。
こうすることで、直前まで一種類の生物をじっくりと見ていた気持ち(圧縮)を、強引に切り替えさせ(解放させ)ます。
また、このときに、音楽の曲調も変えます。
こうして、観客の緊張をほぐして、退屈させないようにしています。
次に2で少し画面が寄り、どの生物に焦点を合わせて話を進めるかを観客に伝えます。
そして最後は3で、一種類の生物(もしくはその周囲の生物)にカメラを寄せて、その生物の変わった特徴や驚くべき生態を見せます。
基本的にはこの繰り返しなのですが、うまくひねりを利かせているので、飽きずに最後まで見ることができます。
この手の“自然を映した映像”としては、非常によく練られているのではないかと思いました。
さて、作品中、多くの生物が出て来るのですが、私が一番興味を持ったのは、珊瑚の縄張り争いでした。
珊瑚虫が触手を出して、互いを攻撃しあっていました。
最近、珊瑚虫を調べていたことがあったので非常に興味深かったです。
どの映像も、なかなか見ることのできない映像なので、楽しんで見ることができました。