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2006年08月01日 16:32:05
華氏451
 映画「華氏451」のDVDを六月下旬に100インチの大画面で見てきました。

 ヨーロッパの雰囲気が漂う、なかなかシュールな映画でした。

 「なるほどこういう映画だったのか」と思いました。

 なかなか楽しめました。でも、あまり万人に勧める映画ではないなとも感じました。

 だいぶ古い作品なので、映画好きではない人はちょっと退屈かもしれませんので。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)

 時代は未来。耐火建築が普及したこの時代、“火事”というものはなくなっていた。

 かつて消火活動に従事していた消防士たちの本来の職務は忘れられ、彼らは焚書を行なうための“ファイアーマン”として活躍していた。

 この時代、本や読書は禁じられており、人々は政府運営のテレビからのみ情報を得るように決められていた。

 そんな時代の消防士の一人が、ある日の帰宅途中に女教師と出会う。彼女は本を読むことが好きだという。彼は女教師の話を聞き流して家に帰る。

 主人公は本を読んだことがなく、読書にも興味がなかった。

 だが“消火活動”の折、女教師の言葉が気になり、一冊の本を持ち帰る。そして彼の認識は変わる。主人公は溺れるように本の世界にはまっていく。

 そして、そのことが妻にばれてしまう。

 時を同じくして、彼に読書の切っ掛けを与えた女教師に官憲の手が伸びる。

 彼は自分の地位を投げ打って彼女を逃がす。そして彼自身も犯罪者として追われる立場になる。

 二人は落ち合う場所を決める。“本の人”たちが住むという集落だ。

 本の人たちは、本を持たないようにするために、本を丸ごと暗記していた。

 主人公はその地で第二の人生を歩み始める。



 まず、物語ではなくビジュアルについての感想です。

 乗り物がとにかくシュール。

 例えばモノレール。床の部分から梯子が下りて、そこから乗り降りします。

 そして消防車。やたら小振りで、人が横に鈴なりに捕まっています。

 別に“未来の乗り物”というわけではないのですが、ヨーロッパテイスト溢れる乗り物たちのおかげで、なんだかシュールな未来を見せられている気がしました。

 実際には、このモノレールも“ありもの”をそのまま使っているだけで、全然未来のものではありません。

 でも、映画を見ていると、「何となく未来?」と疑問符付きで思うようになってきます。

 作品中、“未来っぽい”ものは、壁掛けテレビしか出てこないのですが、それでもSFとして“未来の世界”は描けるのだなと思いました。



 さて、この映画は原作付きです。

 原作は、アメリカのマッカーシズム吹き荒れる頃に、管理社会への警鐘と批判の目的で書かれたそうです。

 なるほどと思いました。

 これは、映画を見たあとの私自身の感想と一致するところです。

 映画を見終わったあと、「この映画のテーマは焚書への批判ではなく、管理社会への批判だな」と思ったからです。

 なぜならば、“本を禁じられた世界”から脱出した主人公が、“本を記憶して捨てる”という世界に移るからです。

 記憶した本は焼き捨てます。

 そして記憶は口伝で語り継がれます。

 これは、焚書自体への解決方法にはなっていません。そもそも、自分たちでも本を焼いていますし。



 さて、本が為政者にとって危険なのは、思想や価値観の制御不能な伝播です。

 “口伝”という、“思想の伝播の歴史”から見ると逆行した方法を採用することは、その情報を保持するグループが圧倒的な弱者である場合、滅びの道でしかありません。

 情報の波及力が著しく鈍るからです。

 そして、本を記憶している人々はいずれ死に絶え、“本の記憶”の数は減ります。そして本の情報はやがて消滅します。

 さらに、文化的な側面から言うと、新しい表現が生まれてこない文化はいずれ硬直化して風化します。

 過去の本だけをいくら保持しても、それは歴史の停滞でしかなく、未来に繋がる道にはならない。

 そういう意味で、この解決方法は緩慢な死を予感させるだけで、“焚書”というものに対する批判や対抗手段にはなっていないと思いました。



 では、この作品は何を言いたいのかというと、「入手可能な情報が管理されていることそれ自体に対する批判」や、「自由に意見を言えない社会に対する批判」だと感じました。

 「こういう社会がある。あなたはどう思いますか?」

 そういった問い掛けが主であり、焚書というのはそのシンボルでしかない。

 そして、その社会に対する解決手段を提示するのではなく、そこで抑圧された人々がたどる滅びの道を示唆することで、社会自体の逃げ場のなさを描いている。

 私にはそう感じました。

 見終わったあとに、物悲しい気分になったのはそのせいだと思います。

 この物語は、革命の話でもなく、覚醒の話でもなく、滅亡の話である。私はそう判断しました。



 話は逸れますが、出て来る本のタイトルがいちいち興味深かったです。

 欧米的視点での古典的名作というものの位置付けが、日本とは大きく違うなと思いました。

 ある一つの作品が、欧米全体の知の財産となっている。

 日本ではそういった意識がないので、こういった部分は文化の差だなと感じました。



 どうでもいいですが、この映画を見終わったあと、「パラノイア」を久しぶりにやりたくなりました。
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