映画「グランド・ホテル」のDVDを六月下旬に見ました。
第五回アカデミー賞受賞作品で、第二次大戦前の映画です。ベルリンのグランド・ホテルが舞台になっています。
少し前に、三谷幸喜の「笑の大学」のDVDを借りてきたときに、「THE有頂天ホテル」を氏自身が宣伝するという映像特典が入っていました。
そのなかで、「グランド・ホテルを大いに参考にした」といったことを言っていたので、見る前の予習のために借りてきました。
なるほど、よくできている。複数の宿泊客やホテルの従業員の別個の物語が、次第に絡み合っていき、最後は観客の満足感を生む。そういう作品でした。
古い映画でしたが、現代の目で見てもちゃんと楽しめる出来でした。
以下、粗筋です。
世界の多くの都市にチェーン店を持つ有名ホテル「グランド・ホテル」。
この立派なホテルには多くの人々が泊まっていた。著名なバレリーナ、医師に死を宣告された男、その男の勤める会社の社長、謎の貴族……。
そして、ホテルに出入りするタイピストの女性や、出産間近の妻を抱えるホテルの従業員など……。
バレリーナは人生に倦み、ドイツでの客の入りに悲嘆し、劇場に行きたくないと駄々をこねている。
死が間近の男は、これまで貯めたお金でホテルのスイートルームを借りて、残りの人生を謳歌しようとしている。
会社社長は、取り引き先との提携話が頓挫しようとしており焦っている。
この三人の主要登場人物の物語が“謎の貴族”を中心にしてそれぞれ動いていく。“謎の貴族”はお金に困りながらも、他人への優しさを忘れない“真に心の高潔な人物”だった。
しかし、人には誰しも表の顔と裏の顔がある。彼にもそんな裏の顔があった。
だが彼の心は、その裏の顔とは無関係に“表の顔”のままの誠実さを持っていた。ホテルに滞在していた幾人かの人は、そんな彼の心の温かさによって救われることになる……。
よくできた映画でした。複数の無関係な人物の物語を絡ませる話としては、秀逸な出来だと思います。
人物のなかには、結局交わらない組み合わせもあったりします。しかし、それは許容できる範囲です。
なぜならば、映画を見終わったあとに、“謎の貴族”のよい印象しか残らないからです。
「一期一会」という言葉がありますが、人と接するときには、心のどこかに“優しさ”を忘れないようにしたい。そう思わせてくれる映画でした。
この映画は、基本的に「“お金”よりも“心”が大切」ということを伝えるのが目的の物語です。
しかし、それが嫌味になっていない。
本当に上手いなと思いました。