映画「あの頃ペニー・レインと」のDVDを八月上旬に見ました。
非常によかったです。
パッケージの表紙が“女の子、女の子”していて恋愛物っぽかったので今まで敬遠していたのですが、借りてきて正解でした。
監督はキャメロン・クロウ。トム・クルーズ主演の「バニラ・スカイ」がけっこうよかったので、借りようと思いました。
ちなみに原題は「Almost Famous」です。
以下、粗筋です。
小学校を飛び級で進級した主人公は、母親、姉と三人で暮らす母子家庭の男の子。
母親は大学教授で、しつけに厳しい。その厳格さを嫌って姉は家を出て行った。
その姉は、旅立つ前に弟に多数のレコードを置いていってくれた。それは数々のロックの名盤だった。
少年は十五歳になる。
彼は成績優秀な生徒として学校に通うかたわら、ロックの批評を雑誌や新聞に投稿していた。
そして、クリーム誌の編集長と出会い、心の師匠と仰ぐ。
彼は編集長から仕事をもらい、スティル・ウォーターという中堅バンドのコンサートにインタビューに行く。
しかし、まだ子供の彼は警備員に止められて楽屋に入れてもらえない。
そこに遅刻してきたバンドのメンバーたちがやってくる。少年は口頭でバンドの批評を告げる。その評価の的確さに驚いたメンバーは少年を楽屋に招き入れる。
彼はそこで、一人の女性に出会う。彼女の名前はペニー・レイン。
しかしその名は偽名だ。彼女は本名を決して他人に明かさない。
「グルーピーなの?」
「私たちはセックスは抜きなの。バンドを助ける、バンドエイドってところね」
華やかで美しいその女性は、女性ロックファン集団のリーダー的存在だった。
少年はバンドメンバーへの取材、そしてペニー・レインとの出会いに興奮する。取材は成功した。
そんな折、少年の批評がローリング・ストーン誌の編集の目に止まる。
少年は仕事をもらい、スティル・ウォーターへの密着取材を行なうことになる。彼はツアーに同行し、バンドを事実上率いているギタリストと親密になる。
そのギタリストとペニー・レインは同じ部屋に泊まる仲だった。
少年の恋心とロックへの愛、ギタリストへの音楽に対する尊敬と人格への軽蔑。ギタリストとペニー・レインの微妙な関係。
そして、少年の身を案じ、自分の許に呼び戻そうとする母親との対立。
少年は大人の世界を覗き、次第に母親の手から離れていき、自分で物を考え、男として成長していく。
本作は、監督の自伝的映画だそうです。少年が大人の世界に入っていき、そこで現実を見ながら成長するという物語です。
「そうそう、こんな気持ちを覚えている」と思うことが多々あり、非常に懐かしかったです。
中学生の頃、RPGコンベンションに行って、大人に混じって遊んでいた感覚はまさにこんな感じでした。
上手いなあと思いました。
映画としても、最後のひねり(何度も何度もひねる)が非常に面白かったです。こんなにラスト間際にひねりまくる映画も珍しいなと思いました。
でも、そのひねり過ぎが嫌味にならず、快い笑いに繋がっていく。
よくできた映画でした。
映画中、少し驚いたことは、少年の声が変わることです。
最初の頃は子供の声だったのに、終盤では低くなります(そう聞こえただけかもしれませんが)。
こんな短時間で声変わりをするとは思えないのですが、演出としてはありかなと思いました。
「あれっ、こんなに低かったっけ?」と一瞬思いました。
本作は、“少年時代の微妙な心の機微”という形にしにくいものをうまく描いていました。
さらに伏線や演出など随所に仕掛けをして、いたるところでニヤリと笑えるようにしていました。
伏線や演出は詰め込み過ぎぐらい過剰に入っています。これが小気味よく、いろいろなことが次々に起こります。
映画の大半はツアー同行中の話です。そのため、主人公が頑張らなくても勝手に話が進行していきます。
主人公はまだ子供ということで、社会的に見れば能動的ではありません。
また真面目な少年なので、逸脱したことも行ないません。
そういった“動かない”主人公の場合、舞台装置の方を無理矢理動かしてやればドラマが発生する。そういった分かりやすい例だなと思いました。
何にせよ、久しぶりに「ああいいな」と感じながら子供の頃を思い出せる映画でした。