映画「ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版」のDVDを十月中旬に見ました。
これはいい映画ですね。
映画を見終わったあとにスタッフ情報を見ていたら、監督は以前見てなかなか面白かった「教授と呼ばれた男」を撮った人だということでした。
なるほど、方向性はまったく違いますが、肌合いのなかに似た部分を感じます。
個人的にはこの作品は、今まで見た映画のなかでも、一、二を争う感動するキス・シーンでした。
映画を見た人は分かると思いますが、あのキス・シーンは、じわりと内側から感動が湧き起こってくる、とってもよいキス・シーンです。
「恋愛要素にあまり価値を置かない私が感動するキス・シーン」ということで、映画を見ていない人は、どういったものか想像してみてください。
このキス・シーンは、素晴らしい演出だと思いました。人気がある映画なのも頷けるなと納得しました。
以下、粗筋です。(中盤ぐらいまで書いています)
片田舎の母子家庭の少年。彼は教会の司祭の許に仕事に行っており、その縁で村に一つしかない映画館に出入りしていた。
その村では、全ての映画を事前に司祭が確認し、卑猥なシーンを全てカットしてから流すようになっていた。
少年はその削除されたフィルムをこっそりともらって集める、そんな子供だった。
彼はそのうち、映画技師の老人と仲良くなる。そして、その仕事を手伝うようになる。
その時代、フィルムはときに発火することもあった。
そして、事故のせいで、老技師は視力を失う。少年は彼の代わりに、村で唯一の映画技師となり、仕事を始めた。
主人公は成長して、青年になる。彼は恋をする。そして、その愛に人生を捧げようとする。
しかし、今は盲目となった老人は、そんな彼の人生の行く末を心配していた。彼は、青年に一つの才能を見出していた。そして、その才能のために人生を捧げるべきだと考えていた。
老人は一つのはかりごとを思いつき、青年は彼の意思に従って、故郷を発つことになる……。
基本は、「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画館で技師をしていた青年が、子供から大人に成長して、故郷を発って、戻って来る。そんな話です。
その人生の厚みを感じながら、最後は老技師の心の温かさに触れる。そういった構成になっています。
尺の長い映画でしたが、最後のシーンの感動を味わったあとには、この長さも許せる、そう思える映画になっていました。
また、作品は映画館のシーンが多いために、昔の映画が多数出てきます。こういったところも、映画人には受けそうだなと思いました。
それぞれの映画が背景で流れながら、もう一つ大きな映画が前景で流れている。
そういう構成の映画だろうなとは思っていましたが、これがなかなか楽しかったです。
また、フィルムなどの、技術の発達の歴史も少し絡んで来たりして、同時代性を持って観賞できる人はさらに楽しめるのだろうなと思いました。