映画「マイケル・コリンズ」のDVDを十一月上旬に見ました。
アイルランド独立運動の英雄マイケル・コリンズを描いたドラマです。
主演は、リーアム・ニーソン。最近では「愛についてのキンゼイ・レポート」のキンゼイ博士、有名どころでは「シンドラーのリスト」のシンドラーを演じています。
監督・脚本は、自身もアイルランド出身のニール・ジョーダン。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」を撮っているそうです。
映画は、なかなか面白かったです。
アイルランド革命家の人々の言動やら挙動が、個人的には幕末の志士に被りました。「ああ、幕末もこんな感じだったんだろうな」と思いながら見ました。
以下、粗筋です。
マイケル・コリンズは、アイルランドの独立運動に参加し、その首脳部にいた人間だ。彼は指導者であるデ・ヴァレラの下で、諜報や軍事を担当していた。
マイケルは独自の情報網を駆使して、英国の官憲を暗殺していく。
彼はゲリラ戦で英国に対抗し、連勝の末に独立を掴む。そして指導者デ・ヴァレラの指示で、英国に条約調印に向かう。
しかし、そこで待っていたのは、英国に隷属する形での独立と、アイルランド島の南北の分断だった。
マイケルは、冷酷な暗殺部隊の指揮者としての顔とともに、平和を望む心も持っていた。そして何よりも彼は現実主義者だった。
マイケルはこれ以上の戦争は避けるべきだと思い、この条件を飲むことに決める。
だが、アイルランドに帰ったマイケルには非難の嵐が待っていた。そしてマイケルは知る。頭角を現わした彼を叩くために、デ・ヴァレラが無理な交渉に送り込んだことを。
マイケルは条約を飲むかどうか、議会の投票に掛ける。そして僅差で勝利した。だがそのことを不服としたデ・ヴァレラは、完全なる独立を訴え、政府から退き、内戦を始める。
マイケルは、政府のトップとして、反乱勢力、つまりかつての仲間たちと戦わなければならなくなる……。
歴史的事実を描いた映画であり、その後のアイルランドの内戦の歴史を知っていれば、この映画がハッピーエンドになるわけはないのは当然分かります。
実際そういう映画です。暗い泥沼に突入して終わります。そういった映画ですが、きちんと楽しむことができました。
映画を見て思ったのは、「やはり、真に政治的な人間は、状況に応じて主義主張を変えなければならない」ということです。
原理主義や完璧主義に陥っては、いたずらに不幸を招きます。
幕末の志士のように、最初「攘夷、攘夷」と言っていても、状況が変われば「文明開化、文明開化」と唱えなければ物事は先に進みません。
そういった柔軟性は必要だなと思いました。
映画は六年間の出来事を描いており、マイケル・コリンズが生涯を閉じるのは三十二歳です。
短い生涯だなと思いました。まだまだ若いのにと思う反面、この年で政府を動かしていたのかという驚きも感じました。
さて、私が見たDVDは、特別編ということで、マイケル・コリンズのドキュメンタリーが付いていました。
映画監督や、研究者に話を聞きながらマイケル・コリンズの実像に迫るというものです。
これがなかなか面白かったです。
その中で一番驚いたのは、マイケル・コリンズが金融のプロフェッショナルだったという事実です。革命に身を投じる前は、ロンドンで金融の仕事をしていたそうです。
(この事実は、映画中では描かれていませんでした)
そのため、彼はものすごくお金に詳しく、部下たちの経費も全部領収書を切らせていたそうです。そして、無駄金を一切使わせませんでした。
また、資金集めもとても上手く、各所にお金を送っていました。
さらに、帳簿を全部きちんと付け、その数字の動きを見て、裏切りを事前に察知したりもしていたそうです
革命家タイプの人間で、この神経質なまでの金勘定の厳格さは珍しいなと思いました。普通、こういった実務系の人間は、サブになるタイプの人物で、トップになるタイプの人ではありません。
まあ、最初はサブ的な役割で、成り行き上、途中からトップに祭り上げられるわけですが。
珍しい種類の革命家だなと思い、なかなか興味深かったです。