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2007年01月11日 17:02:54
 そろそろ書いてよい頃だと思うので書きます。

 去年、2つのアニメを見に行かなかった多分本当の理由についてです。2つのアニメとは、「時をかける少女」と「ゲド戦記」です。

 この2つのアニメはネット上で、一方は絶賛で、もう一方は散々叩かれました。アニメ自体は「見たいなあ」と思う気持ちが強かったのですが、その現象が気持ち悪く、ずるずると見ないうちに年を越してしまいました。

 なぜ気持ち悪く思ったのかというと、「ほしのこえ」のときのことが頭をよぎったからです。



「ほしのこえ -The voices of a distant star-」は、新海誠氏が2002年に制作したアニメーションです。

 発表当時、ネットのアニメファン(いわゆるオタク)のあいだで非常に話題になり、絶賛されました。

 どのサイトを見ても、褒めちぎる文章ばかりが書かれていました。まるで、液晶に電流を流して同じ方向を向かせたかのように、全員が同じことを言っていました。

「なんだこれは?」と、奇妙に思うとともに、作品に興味を引かれました。

 そんな折、後輩が上京時に「ほしのこえ」のDVDを持って来たので一緒に見ました。

 見終わったあとに私が言った言葉は、「何、このオナニー……」でした。

 どこかで見たような表現や演出が際限なく繰り返される。正直言って、「これはオナニーだよな」「作者のマスターベーションだよな」「なんで俺は他人のオナニーに付き合わされているんだ?」と思いました。

 別にそれが悪いとはいいません。「楽屋落ちこそが最高に面白い」というのも、1つの真理なので、それを否定はしません。

 それに、ほぼ1人でこれだけの物を作った労力も素晴らしい。しかし、中身はオナニーです。自分の、自分による、自分のための作品。私の目にはそう映りました。

 そして、少なくとも私には全く面白くありませんでした。というか、つまらなかった。催眠術のように眠かったです。

 世間の評価に対して、実際に見た物が拍子抜けだったのではなく、私の絶対的基準に対して見た物がそのまま低い評価でした。



 当時、この自分の評価と、ネットに書かれている絶賛の声とのあいだに、かなりの居心地の悪さを味わいました。

 そして、「ほしのこえは私の基準では駄作」と書くかどうか、かなり考えました。明らかに火を吹くことが明らかだったからです。

 これがマンガだったら平気で書くのですが、アニメでは微妙です。マンガは私の中では主要趣味に属すジャンルで、このジャンルでバトルをするのなら、いくらでも受けて立つ気があります。

 必要なら、電車で相手のところまで乗り込んで行って戦うぐらいの気はあります。

 しかし、アニメは私のなかでは周辺趣味にしか過ぎません。私のなかでは映画や映像作品の1ジャンルという位置付けでしかありません(そもそも、普段テレビを見ない人なので)。

 そのため、「そんなところで戦って無駄に時間と精神力を使うのも馬鹿らしい」という気持ちが先に立ちました。

 そこで、「ほしのこえ」は、私のなかで完全にスルーすることに決めました。

 そして、居心地の悪い“気持ち悪さ”だけがこの作品に対して残り続けることになりました。



 去年、「時をかける少女」と「ゲド戦記」のネットでの世評を見たときに、「ほしのこえ」のときの気持ち悪さが再び蘇ってきました。

 作品の内容にではなく、その世評にです。

「わっ、またみんな、液晶に電流を掛けたみたいになっている!」

 そう思いました。

 私は昔から、多数派と少数派のグループがあると、たいてい少数派のグループに身を投じるような性癖を持っています。

 そんな私の目から見て、全員が多数派的振るまいをする世界は気持ちが悪くて仕方がありません。

 また、私は多様性の信奉者です。なので、このような現象を見ると不快感が込み上げてきます。

「うーん、このアメーバのような現象に飲み込まれるのは嫌だなあ」

 そう思い、なんとなく2つのアニメを見に行くのを避けていました。



 きっと、「ほしのこえ」を見て、私と同じような思いを味わった人が少なからずいると思います。

「つまらない」と思ったけど、特に声に出して言わなかった人たち。

 当時は、まるで狂信者のような人たちが跋扈していたのでこういったことを書きませんでしたが、いつか書かなければならないと感じていました。

 そろそろ書いてよい頃だと思うので書きました。



 私は、私の旗幟を明らかにしておく必要があります。

 リスクを考えながら、明らかにできる範囲で、可能な限り自分の旗幟を鮮明にする。それが私の生き方だからです。

 というわけで、「ほしのこえ」は、私にとって“気持ち悪さ”を残した、何か妖怪のような作品でした。
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