映画「ライフ・イズ・ビューティフル」のDVDを十二月中旬に見ました。
ロベルト・ベニーニ監督によるイタリア映画。
非現実的だと思いながらも、ファンタジーに溢れたよい映画だと思いました。
以下、粗筋です。(ネタばれあり。終盤の最初ぐらいまで書いています)
主人公はイタリアに住むユダヤ人。
彼は本屋を開くために新しい町にやってきて、叔父の世話になっていた。
その地で主人公は一人の女教師に恋をする。彼は「ごきげんようお姫様!」と呼び掛けながら、何度も何度も意外な場所で彼女の前に現れる。
主人公は、女教師と町の役人の婚約発表の場に現れ、彼女をさらって行き、とうとう結婚する。
それから数年が経った。二人の間には子供が生まれる。
順風満帆に見えた二人だが、時代は彼らの上に容赦なく迫ってきていた。
ファシズム政権下のイタリアでは、ユダヤ人の迫害が進んでいた。そして主人公と息子、叔父は強制収容所へと送られる。
妻はユダヤ人ではなかったが、夫と子供と離れないために、同じ輸送列車に乗る。
強制収容所では男女は別々の建物に入れられる。主人公は息子の心を傷付けないために、「ここは楽しい場所なんだ」と嘘を吐き、その嘘のために奔走する。
そして、涙ぐましい努力をしながら、子供を楽しませ続ける。
主人公は、息子と妻を救うために懸命の努力を続け、やがて戦争は終決が近付いてくる……。
映画は、前半と後半できれいに分かれます。(前半から後半への移行は、演出として非常に美しかったです)
前半は、陽気で機知に富んだ主人公が、女教師に猛烈にアタックをする話。
こちらは暗い側面はほとんどなく、ともかく楽しいお話です。
後半は、ユダヤ人として強制収容所に送られながらも、笑いを忘れず、子供のために涙ぐましい嘘を吐き続ける話です。
こちらは暗い側面を織り交ぜつつも、人にとって笑い(人間らしさ)はどんなときでも必要なんだという強いメッセージを伝えてきます。
「強制収容所で、あそこまで子供をかばい、嘘を吐き続けられるのか?」という現実的な問題はありますが、それでもこのファンタジーは心に迫るものがあります。
そして、後半のラスト付近で現実の波が一気に主人公に襲い掛かる段になって、このファンタジーは正当化されます。
単に荒唐無稽な話ではなく、戦争という悲劇のなかで健気に生きた主人公の話に昇華されます。
本当によくできた映画でした。
映画中に何度も出て来る、「ごきげんようお姫様!」という主人公の掛け声と笑顔がとてもよかったです。
その言葉と表情だけで、周りの人が幸せになる。そんな演技でした。
主人公を演じているのは、イタリアを代表する喜劇俳優ロベルト・ベニーニ(監督兼脚本)です。存在だけで周囲を明るくする。上手い役者だなと思いました。
さて、この映画を見るまで私は、「イタリアでのナチによるユダヤ人狩り」という事実を知りませんでした。
下記の「ライフ・イズ・ビューティフル」の感想によれば、「当時、イタリア在住のユダヤ人は四万五千人。その内、ナチスの強制収容所に連行されたのはおよそ八千人。生還した者はごく僅かだ」とのことです。
(他で裏づけを取っていないので、数字が正しいかは分かりません)
□ライフ・イズ・ビューティフル - online KONGE JIHO
http://www.breast.co.jp/cgi-bin/soulflower/nakagawa/.. また調べてみたところ、イタリアからの強制収容所への連行については、下記のような本が出ているようです。
□アウシュヴィッツは終わらない—あるイタリア人生存者の考察(プリーモ・レーヴィ 著)
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3.. ドイツが侵攻先で、強制収容所へとユダヤ人を連行していたことは知っていましたが、同盟国であるイタリアでもやっていたのは知識として全く持っていませんでした。
勉強が足らないなと思いました。