映画「恋の門」のDVDを十二月下旬に見ました。
よい映画でした。非常に面白かったです。
評判がよかったので、それほど心配はしていなかったのですが、これはもっと早く見ておけばよかったと思いました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の最初頃まで書いています)
自称マンガ芸術家の蒼木門(あおき もん)は、石を並べてマンガを表現する前衛作家。彼はある日、とてもよい形の石を発見する。
しかし、その石を拾おうとしたときに、女性の傘で怪我をさせられてしまう。
その相手、証恋乃(あかし こいの)は、表の顔がOLで、裏の顔が同人作家兼コスプレイヤーだった。
蒼木門は童貞を捨てるため、証恋乃はコスプレ相手を確保するため、互いを利用しようとする。
二人はそれぞれの特殊な趣味で駆け引きをしながら、徐々に恋に落ちていく。そして様々な障害に進展を阻まれながら、やがてその恋を成就させる。
しかし、全てが上手くいくわけではなかった。
蒼木門は自己のアイデンティティに悩み失踪し、証恋乃は借金まみれの生活に陥る。
さらにそこに、蒼木門が勤めていたマンガBarのマスターも加わり、マンガ新人賞の受賞争いを行なうマンガ・バトルに発展する。
目指すは賞金200万円。
マンガBarのマスターは、かつての人気マンガ家だった。
そして、三人は、ラスト一週間のハイテンション・バトルに突入する。
しかしまあ、主人公の蒼木門(松田龍平)がかすむぐらい、ヒロインの証恋乃(酒井若菜)がぶっ飛んでいました。
単なるコスプレおたくではなく、マンガおたくで、アニソンおたくで、同人作家で、借金山ほどこさえて、もう本当に痛い人です。
どんなに外見が可愛くても、これは痛すぎる。
うーん、狙って作っているのは分かりますが、これは凄いなと思いました。
父親に反抗して売れない芸術家をやっている蒼木門が、まだまだ可愛い、微笑ましい奴だと見えてしまいます。
なんというか、「これでも誇張していないよな」と思う人を今まで何人も見ているので、「傍目から見るとこう見えるか」と思って複雑な気分になりました。
客観的に見るということは、怖いことです。
個人的には、後半のマンガ・バトルの展開が面白かったです。
序盤の流れからこう来るとは思わなかったので意外でしたが、これはよい流れです。
ベテランのテクニックを駆使した描き方、PC世代のパソコンを使った描き方、古典的新人の勢い重視の描き方と、三人のマンガの描き方の差も上手く示されていて、非常に楽しめました。
あと、ベッドシーンの、インク壷とペンの使い方がグッドでした。
また、映画中に出てくるマンガBarは、もし近くにあれば入り浸るなと思いました。
酒を飲みながら、壁一面のマンガ(それも、ラインナップが古い)を読めて、昼から開いている。
そんな卑怯な店は、行かないわけにはいきません。
出てくるキャラも、それぞれ非常に個性的でよかったです。
忌野清志郎とサンボ・マスターの競演も、個人的には燃えました。
庵野監督夫妻が揃って登場など、いろいろとネタが満載でニヤニヤしながら見てしまいました。
そういったネタが分からないでも、ちゃんと楽しめる作品になっていて、見る人の知識の量に合わせて何重にも楽しめるニクイ作りの映画でした。
95%ぐらいの人が底抜けに楽しめ、5%ぐらいの人が苦笑いするかなというのが、私の感想でした。
見て損のない作品だと思います。
松尾スズキ監督の作品は、今後注目しようと思います。
彼はマンガBarのマスター役でも出ていましたが、役者としてもよかったです。
面白い作品でした。
原作もマンガ読みのあいだで評価が高いのですが、こちらをまだちゃんと読んでいないので、時間を見つけて読もうと思います。
というか、読まないといけないです……orz
あと、松田龍平が、松田優作の息子だったとは知りませんでした。
大島渚監督の「御法度」で見て、面白いキャラだなと思っていました。
そういえば「御法度」は、周囲では評判が悪いのですが、私は面白い映画だと思いました。
まあ、好みは人それぞれですので。