映画「ヘドウィグ・アンド・ザ・アングリー・インチ」のDVDを二月中旬に見ました。
DVDのジャケットや映画のタイトルでは、「ヘドウィグ」が大きな文字で書いてあり、「アンド・ザ・アングリー・インチ」が小さな文字で控え目に書いてあります。
「アングリー・インチ」の意味については、感想の末尾で書きます。
本作は、2001年の作品になります。
変な映画でしたが、結構楽しめました。
ジャンルで言えば、ミュージカル映画になります。実際、ミュージカルが起源の映画です。とはいえ、音楽はロックです(DVDの説明によるとグランジ・ロックだそうです)。
監督・脚本・主役は、ジョン・キャメロン・ミッチェルで、舞台版と同じ役だと書いてありました。グロテスクなほど、けばい化粧が印象的でした。
以下、粗筋です。(終盤直前ぐらいまで書いています)
東ドイツで男として生まれたヘドウィグは、性転換して女になる。そして、アメリカに渡り、男に捨てられて、売れないロック・ミュージシャンになる。
彼は一人の青年と恋に落ちる。そして彼に、自分の知っているロックの全てを教える。自作の曲も教え、二人は親密な関係になる。
しかし青年は、ヘドウィグが男だったことを知り、彼の許を離れる。そして、ヘドウィグの曲を全部盗み、デビューしてスターとなる。
ヘドウィグは自分のバンドとともに、場末のバーやレストランでライブをしながら青年を追う。ヘドウィグは裁判で自分の曲を取り戻そうとする。
だが、バンドは解散状態になる。そんな失意のヘドウィグの許に、青年が顔を見せ、和解を乞うて来た……。
音楽がなかなかよく、中でも最初の方に出て来た曲「愛の起源(Origin of Love)」は、詩も含めてかなりよかったです。
歌詞はこんな内容です。
昔、人間は顔が二つに、腕が四本に、足が四本あった。
昔、人間は三種類いた。
太陽の子と、地球の子と、月の子だ。
太陽の子は、男と男が背中合わせにくっ付いていた。
地球の子は、女と女が背中合わせにくっ付いていた。
月の子は、男と女が背中合わせにくっ付いていた。
人間はどんどん増えて、力を付けてきた。
人間を恐れた神は、人間を半分に切り裂いて、その力を奪うことにした。
そうして人間は、一つの顔と、二本の腕と、二本の足を持つ、男と女になった……。
ミュージカル映画なので、ストーリーはそんなに深くはありません。
話の主題は「片割れ探し」です。
最初の方の曲「愛の起源(Origin of Love)」の内容が、その内容を示唆しているのですが、失われた半身としての相手を探し求める心の旅の話になっています。
そして、落ちとしては「青い鳥」系の結末の付け方になります。
とはいえ、主題はそんなに心に届きませんでした。
というか、DVDについていた解説を見るまでは、そこが主題だとは思っていませんでした。
映画を見る限り、「片割れ探し」が主題だとは気付きませんでしたので。
そんな内容よりも、純粋に音楽がよかったです。この映画は、音楽を聞いている方がいいなと思いました。
映画を見終わって、キャストを見てびっくりしたのですが、バンドメンバーでヘドウィグの恋人である男性イツハクは、女優のミリアム・ショアが演じているそうです。
髭が濃い若者だけど、妙に女のような声を出すなと思っていましたが、本当に女だとは気付きませんでした。
やられました。
しかし、メイクの力は凄いなと思いました。
映画中、このイツハクが「RENT」のオーディションを受けて合格するというエピソードがあります。
この「RENT」もミュージカルで、去年映画化されました。「RENT」は予告編で見て、音楽が非常によかったので、TSUTAYAでサントラ盤のCDをレンタルして聞いていました。
ミュージカルの中で、他のミュージカルのオーディションを受けるというシチュエーションは、結構マニアが喜びそうなギミックです。
去年より前に本作を見ていたら、多分、全然気付かずにスルーしていたなと思いました。
それでは最後に「アングリー・インチ」の意味です。
性転換手術をしたはいいけど、医者の不手際でペニスが一インチ残ってしまった。だから「怒りの一インチ」だそうです。
ヘドウィグが引きつれているバンドの名前も「アングリー・インチ」のようです。
そういう意味が分かると、映画のタイトルが、えらく卑猥に思えてきます。