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2007年05月08日 12:04:27
ゴーメンガースト
 TVミニシリーズ「ゴーメンガースト」のDVDを四月上旬に見ました。

 BBC製作の2000年の作品です。



「ゴーメンガースト」については知らなかったので、少し調べてみました。

□Wikipedia - ゴーメンガースト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82...

□ゴーメンガースト 3部作
http://www.geocities.jp/noldor5/gormenghast.html

□Peake, Mervyn - マーヴィン・ピーク
http://homepage1.nifty.com/rinus/book/peake_mervyn.html

「ゴーメンガースト」は、「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」「タイタス・アローン」の三部作です。

 主人公はタイタスになります。ゴーメンガーストは城(城砦都市国家)の名前です。

 本当は五部作の予定だったそうですが、作者が急逝したために、三部作とみなさられるようになったようです。

 粗筋や感想を見ると、「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」で一続きの話で、「タイタス・アローン」以降はだいぶ趣が変わるようです。

 ジャンルは、ゴシック・ファンタジーや、エピック・ファンタジーと書かれていました。内容は中世風の城砦都市を舞台にしたファンタジー物語です。

 TV版の「ゴーメンガースト」は、最初の二部をまとめた物のようでした。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)

 石の壁に取り囲まれ、無数の建築物が建ち並ぶ都市国家ゴーメンガースト。その場所は、伯爵が支配し、古から続く様々な儀式によってがんじがらめに縛られた、閉鎖的な場所だった。

 その場所で、七十七代目の跡取り息子タイタスが誕生する。ゴーメンガーストはお祭り騒ぎになる。

 その騒ぎの中、一人の若者スティアパイクが野心を持ち、料理長の許を去った。

 スティアパイクは、強い欲望と、それを敵えるだけの知略を持った男だった。彼は様々な城の関係者の間に入り込み、自分の野望を現実の物にしようとする。

 彼は、城付きの医師の許に弟子入りして薬物と毒物について学ぶ。また、その立場を利用して、伯爵の姉たちに近付き、篭絡する。

 彼は伯爵の姉たちを焚き付け、書庫を燃やさせる。その書庫は、伯爵の心の拠り所であり、それを失った伯爵は狂気に支配され死んでしまう。

 スティアパイクは邪魔者を排除していき、儀典長の地位を得る。

 一方タイタスは、父の死のために一歳半で七十七代目の伯爵となる。彼は市井の少年たちに混じり学校に通って少年時代を過ごすが、伯爵としての儀式も同時にこなす。

 そのため、城に掟に強い反発を覚えることになる。

 そしてタイタスは青年になる。彼はゴーメンガーストの古いしきたりを憎み、自分の立場と葛藤する。

 しかし、徐々に権力を強めるスティアパイクと戦うことで、自らの責務を全うすることを考えざるをえなくなる。

 タイタスとスティアパイクは、雨の降りしきるゴーメンガーストで最後の戦いを行う。スティアパイクに勝ったタイタスは、ゴーメンガーストを去り、自由を求めて外の世界に旅立つ。



 TVシリーズなので、予算が少し足りていないんだろうなと思うところと、脚本がルーズだなと思うところがありましたが、キャラの造形はよくできていて楽しめました。

 この、キャラの造形はかなり秀逸です。どのキャラもよくできていました。

 特に、野心を持った若者スティアパイクがよかったです。たぶん女性なら、これだけでこの作品を絶賛しそうです。

 私は、彼を見ながら、「ベルセルク」のグリフィスを思い出しました。スティアパイクは、美貌の策士といった感じの魅力的な人物でした。

 あと、タイタスの母のガートルードも、凄くふてぶてしくて、でも聡明で、しかし家族に対してはほとんどやる気がなくて味があってよかったです。

 そして、忘れてはならないのは、伯爵の従僕であるフレイを演じたクリストファー・リー。追放されてしばらく立つと、賢者のような風格が出てきます。

 こんな奴が影から支えてくれたら、かなりの危機でも何とかなりそうな雰囲気です。

 また、それ以外のキャラも雰囲気がよく出ており、服飾もよく、その面はよくできていたと思います。



 映像に関しては、TVシリーズだということで、いくつか不満がありました。

 一つ目は、ゴーメンガーストを上空から描いた引きのシーンです。

 町全体を写すシーンがなく、さらに光の粒やレンズによる遠近感の関係で、ぱっと見た瞬間に模型だと丸分かりするのはちょっと興冷めでした。

「ロード・オブ・ザ・リング」など、昨今の映画では、こういった粗はきちんと取っているので、特にその点が目立ちました。



 二つ目は、TVシリーズなので仕方がないのですが、ロングショットが極端に少ないことです。

 TVは、小さい画面で見ることが前提なので、アップのシーンが多く、ロングのシーンが少ないのが基本です。

 最近映画ばかりをTVで見ていたので、その点が非常に気になりました。

 あと、ファンタジー物は、美術も楽しみたいので、ロングが適度に入っている方が嬉しいです。

 その方が楽しめますから。



 脚本に関しては、いくつか疑問点がありました。

 それは、シナリオ上、あまり役に立っていない重要人物が何人かいることです。

 たぶん、原作を脚本に直した時に、大幅に削られたエピソード内で重要な役割を持っているのだろうなと感じました。

 ここらへんは、もう少し上手く脚本をまとめてくれるとよかったのになと思いました。



 城砦都市がメインの話なのにその描写が疎かになっているなどいろいろ問題点があるものの、キャラの造形など魅力的な部分も多く、なかなか楽しめる作品でした。
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