映画「ボディガード」のDVDを四月中旬に見ました。
ケヴィン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが共演の1992年の映画です。
大ヒットした記憶があるので、見ておかないといけないなと思い、借りてきました。
感想は「設定勝ちだな」でした。
設定を作った時点で、勝ったも同然のような内容でした。後は丁寧な作りをすれば水準以上の内容になる。そういった、よい設定でした。
というわけで、「ボディガード」の設定の優れている点を書いていきたいと思います。
まず、一点目は、対立構造が明確なことです。
主人公はボディガードで、依頼者の露出度を下げて守りたいのに、依頼者は芸能人で、賞レースをしているために露出度を極限まで上げないといけません。
このことが、映画の枠組自体を支える対立構造になっています。
二点目は、主人公を中心としたキャラクター間の対立構造がいくつも用意されていることです。
・ボディガードV.S.言うことを聞かない依頼者
・ボディガードV.S.古参のボディガード
・ボディガードV.S.芸能活動を優先するスタッフ
・ボディガードV.S.謎の敵
・ボディガードと依頼者の恋愛(信頼関係)
こういった主人公を取り巻く対立構造の中から、その都度、その都度、相手を取っ替え引っ換えして物語を転がしています。
三点目は、盛り上がる最終舞台を用意していることです。
ヒロインは、アカデミー賞の授賞式にノミネートされています。そして、最後はその舞台で受賞を待ちます。
この事実は最初から明かされており、最後にいやがおうにも盛り上がることが約束されています。
四点目は、舞台の数珠繋ぎが設定に組みこまれていることです。
ヒロインは芸能人のために、いろんな場所に芸能活動に行きます。
そのため、事件をいくつかのブロックに区切ることができ、そのブロックを組み合わせることで容易に脚本の構造を作ることができます。
あとは、そのブロックごとの役割を間違わないようにして、ブラッシュアップしていけば、必然的にクオリティは高まります。
このように、設定が上手く作られており、非常に脚本を練り込みやすくなっています。
設定自体が、映画の脚本を作りやすくしており、こういった設定を作ると楽だろうなと思いました。
DVDには、キャスト紹介などが付いていました。それを見ると、脚本家はこの設定を温めてブラッシュアップし続けたそうです。
そういった作業に向いている設定だなと思いました。
以下、粗筋です。(終盤直前まで書いています。)
大統領の警護もしていた凄腕ボディーガードは、アカデミー賞にノミネートされている歌手の護衛を依頼される。
彼は有名人のボディーガードをすることを嫌っている。しかし、歌手のマネージャーに根負けして依頼を受ける。
だが、マネージャーは歌手本人に話を通していなかった。そして、脅迫状が届いているにも関わらず、歌手の周りの人間たちは、本人に何も知らせていなかった。
危機感のない者は守れない。彼はこの依頼を断わろうとする。
だが、脅迫は続き、本人も危険な目に遭い、歌手は護衛が必要なことを知る。主人公は本格的に護衛を開始する。
家の警備体制の強化、歌手の行動の管理、露出の抑制。護衛には本人の協力が不可欠だ。しかし、芸能人の彼女はそういったものを嫌がり、二人は対立する。
そして、いつも一緒にいる相手で便利だからと歌手は主人公とセックスをする。
主人公はそのことを後悔し、二人の仲はぎくしゃくとなる。そのせいで、護衛もままならない状態になる。
そうした中、アカデミー賞は近付き、脅迫も襲撃を伴うものになってくる。
依頼者を守るためには、互いの信頼関係が不可欠だ。危機感は二人の目的を一致させていき、そのことで二人は互いのことを考えるようになる。
次第に二人の心は近いていき、アカデミー賞当日になる。
一点、非常に気になったところがあります。ヒロインは歌手なのに、アカデミー賞が最終舞台になっているところです。
グラミー賞ではなく、アカデミー賞。
映画関係者受けをよくするための処置なのかなと思いました。