映画「タクシー・ドライバー」のDVDを四月下旬に見ました。
1976年の映画で、マーティン・スコセッシが監督で、主演はロバート・デ・ニーロです。
鬱屈したタクシー・ドライバーが、女に振られて、やけになって、大統領候補の暗殺を目論む映画です。
最近ですと、ヴァージニア工科大銃撃は、この映画を模倣しているのではという話がありました
□ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記 - ヴァージニア工科大銃撃は「タクシードライバー」の模倣犯?
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20070419 近くのTSUTAYAには、今までビデオしか置いていなかったので見られなかったのですが、なぜかこのタイミングで、DVDが二本導入されていたので借りてきました。
タイミング的に少し不謹慎な気もしましたが、前から見たかった映画ですし、借りる予定のリストにも入れていたので、素直に借りてきました。
まず、最初の感想なのですが、ロバート・デ・ニーロが滅茶苦茶若いです。
そりゃあ、四半世紀前ですから、若くて当たり前なのですが、へたれな若者を好演しています。
駄目人間で、内気で、自己中心的で、妄想的で、へらへらしている、どうしようもない男です。
でも、海兵隊上がりで、鬱屈していて、女に振られて、体を鍛え直して、暗殺を試みたりします。
とても危ない奴です。危険人物です。身近にいると怖いです。
あと、ジョディ・フォスターが滅茶苦茶若いです。
ジョディ・フォスターは、12歳の娼婦役です。つまり子役。子役の癖に、きわどい役だなと思いました。
ジョディ・フォスターは、1962年生まれだそうなので、この映画の公開時は十四歳です。撮影時は、映画の設定と同じで十二歳だったようです。
□Wikipedia - ジョディ・フォスター
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82... この少女売春婦は、映画の後半のキー・キャラになります。
二つ目の感想なのですが、「引き込まれるけど、共感はしないな」です。
ロバート・デ・ニーロの演技が上手いので、ずるずると引き込まれて見続けるのですが、そのキャラ自体には、一欠片も共感できません。
単に困った駄目人間なので。
そして、行動原理も、ただの逆恨みなので。
うーん。
本質的に、分かり合えないタイプの相手なので。
まあ、共感する映画というより、変な奴が社会の中にまじっていて、そいつがある切っ掛けでヤバイ奴になるというのを見る、そういう作品だなと思いました。
鬱屈しているのは分かるけど、こういう爆発の仕方をする人間は、社会にとって害悪以外の何物でもないです。
そういう意味では、先のヴァージニア工科大銃撃事件と通じるところがあります。
女に振られてというところも一緒ですし。
ただ、暗殺を決意してから、武器を揃えたり、装備方法を練ったり、そういった部分は非常によくできていました。
かなり引き込まれて、その気にさせられてしまいます。
こういう、細かな積み重ねの演出は、気分を盛り上げるには大切だなと思いました。
三番目の感想なのですが、「結末が納得いかない」です。
(この項、ネタバレあり)
なんだか、「えー、そんなのありなの?」という感じのまとめ方で、今までの流れを見ていると、到底承服できない締め方でした。
なんというか、「積み重ねたことの対価は払おうよ!」というのが三分の一、「なんでこいつが英雄に?」というのが三分の一、そして「なんで生きているんだよ!」というのが三分の一。
「プッツンきて人をばんばん殺しても、その相手が悪人なら、何の問題もないのかよ!」と本気で思いました。
これはアメリカ人と私の価値観が根本的に違うせいなのでしょうか。
文化の差や、常識の違いと言ってしまえばそれまでなのでしょうが、非常に納得のいかない結末でした。
四番目の感想は、「ともかく夜景がきれいだった」です。
これはかなり美しい色の夜景だと思います。
上手く撮影できているなと思いました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)
海兵隊上がりで、不眠症に悩む若者は、深夜タクシーの運転手になる。
彼は、夜の町で遊んでいる人々を人間の屑だと思っており、彼らが一掃されればよいのにと考えていた。
そんな彼は一人の女性に恋をする。
時は、大統領選挙の最中、その選挙事務所で働いている女性だ。
主人公はその女性にアタックして、上手く映画に誘うことができた。しかし、連れて行ったのがポルノ映画のために振られてしまう。
彼はそのことで恨みを持つ。そして、その女性が属している大統領候補を暗殺することを決意する。
彼は武器を買い、体を鍛え直し、暗殺のための下準備をする。
しかし、実際に暗殺に行った時、シークレットサービスに感付かれて逃げ出す羽目になる。暗殺は、試みる前に失敗に終わる。
彼は、自分の鬱屈の捌け口が見つからず苦悩する。
そんな彼は、少し前に、一人の少女と出会っていた。彼女は男にうまくたぶらかされて、娼婦として働いていた。
彼は、その娼館に乗り込み、少女を手なずけていた男や、娼館の見張りを銃殺していく。彼自身も銃弾を浴びながら、殺戮を繰り広げていく。
主人公は傷を負い、ソファーの上に座り込む。彼は、鬱屈した自分の衝動を暴力として吐き出し、満足する。
彼は、やってきた警察官に満面の笑顔を見せる。
主人公は一命を取り止めた。
そして世間は彼を、「少女を救った男」として、英雄に祭り上げる。
傷が癒えた主人公は、今日もタクシードライバーとして仕事を続ける。
粗筋を書きながら思いましたが、やっぱり結末は納得がいきません。
うーん。
アメリカ社会というか、この時代の空気は、よく分かりません。