六月八日の金曜日に、国立新美術館で開催中の「大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産」に行ってきました。
□国立新美術館
http://www.nact.jp/index.html□大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産
http://monet2007.jp/ このモネ展に行った理由は三つあります。
1.印象派が好き
2.国立新美術館を見てみたい
3.黒川紀章がどんな仕事をしているのか見てみたい
というわけで、上から順番に書いていこうと思います。
1.印象派が好き
展覧会自体は、面白いと思う点もありつつ、どうかなと思う点もありました。
まず、面白いなと思ったのは、モネの作品を時系列ではなく、様々なチャレンジの方向性ごとにまとめており、さらに、その影響を受けた後世の作家の作品を、枝のように配置した部屋に飾ってあったことです。
普段見ないような、現代アート系の作家の作品もあり、こういった試みはありだよなと思いました。
また、その方向性から、内容がバラエティに富んでいたのは、よいのではないかと感じました。
次に、どうかなと思う点です。
まず、壁の文章に、生没年ぐらいは書いておいた方が親切だよなということです。
絵というものは、大きく分けて三種類の見方があって、一つはその作品の年代にこだわらない絶対的な見方、次に、どの時代にどういった文脈で描かれたのかという見方、最後は、その人物の人生のどういった時期に、どういった背景で描かれたのかという見方です。
(見方はこれだけではないですが、便宜的にここではこういう風に区分けしておきます)
美術館の展示というものは、こういった各種の見方を提示し、次に他の目的で美術館に訪れた時に、有機的に知識の網が張られるような展示の仕方をするべきです。
そういった部分が、どこか抜けているよなという印象を受けました。
まあ、そういったことまで知りたい人は、図録を買って読めということだと思いますが、壁の文章にも書いて置く方が親切です。
私は、毎回図録を買いますし、音声ガイドも必ず借りるのですが、そういった人は多数派ではないと思います。
ちょっと不親切だよなというのが実感でした。
今回の展示のように、年齢や時間関係を無視して並べている場合は、特にこういった生没年が示されていないことが気になりました。
そういえば、今回の音声ガイドは小泉今日子でした。微妙に力を入れているようです。
あと、展示されていた絵自体ですが、よい物も何点かありましたが、そうでないと感じる物も結構ありました。
個人的には1.5倍ほどの点数が欲しかったのですが、まあ、こんなものかなと思いました。でも、連作系が、二作や三作のみというのが多かったのは残念でした。
印象派好きには物足りないかもしれませんが、モネ好きは、ある程度満足できるのかなと思いました。私は、もう一歩何かが欲しかったと感じました。
あと、平日に行ったせいか、思ったよりも混んでいませんでした。これは本当によかったです。
2.国立新美術館を見てみたい
個人的には、この建物を「美術館」とは呼びたくないのですが、名前は「国立新美術館」となっています。
□Wikipedia - 国立新美術館
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B...□国立新美術館 - 建築の紹介
http://www.nact.jp/building_intro.html 本来、美術館とは、展示だけを目的としたものではありません。美術品などの収蔵、研究、そして、その研究発表、さらに、文化の発信や、現代への価値の提案といった、多くの目的を持った施設です。
この国立新美術館は、その中から展示の機能だけ取り出して建設されたものであり、収蔵品は一切ないという特異な存在です。
つまり、これは美術館ではなく、単なる展示場です。まさに「箱物」です。
展示場に「美術館」と付けるのは、幾らなんでも詐欺だろうと思います。
そういったわけで、この国立新美術館が、どういった場所なのかを確認しておこうと思い、見てきました。
結果は、展示に特化した、凄い即物的な展示場でした。
国立新美術館の平面図を、文字で描くと以下のようになります。
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黒い四角「■」の部分が展示場で、一階あたり四つ並んでいます。格納庫のようなものです。
その並んだ格納庫の前面に、よくニュースで流れていたような、波状のガラスの壁面と移動空間があります。
この平面図が、三階分、縦に連なっています。終わり。
その余りにも即物的で機能的な構成に、くらくら来ました。
あと、国立新美術館の最寄り駅は、営団地下鉄の乃木坂駅なのですが、駅の中に「国立新美術館入り口」みたいなところがあります。
ここから出ると、国立新美術館の裏手に階段が繋がっていて、建物の前面を見ることなく、建物に入れます。
ちょっと損をした気分になりました。
売りの一つである「建築物の外観」が見られないないじゃないかと。
まあ何にせよ、「本当に展示場なんだな」という印象を持ちました。
あと、地下一階はミュージアムショップになっています。私が行った時は、マンガがテーマだったらしく、いろんなマンガが並んでいました。
宮崎駿や手塚治虫、藤子不二雄のマンガはまあ当然だろうなと思いましたが、その中に異彩を放っている物がありました。
島耕作……。
それは、なんか違うだろうと思いました。
3.黒川紀章がどんな仕事をしているのか見てみたい
□Wikipedia - 黒川紀章
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB... 思った以上に気持ちのよい空間でした。ちょっと意外。
都知事選挙の印象が強かったので、もっと駄目なのを予想していたのですが、建築自体はよいものだと感じました。
先ほどの平面図をまた出しますが、
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この、黒四角の部分はあくまで即物的に作り、反対に前面の移動空間の部分は思いっきり開放的に作っています。
コンクリートの打ちっぱなしや、木や、ガラス窓や、電灯などをうまく配置して、立体的で、直線と曲線をうまく融合させた、広々とした落ち着きを感じさせる空間にしていました。
ちゃんと仕事しているんだと思いました。選挙に変な出方をしなければ、もっと好印象なのに。
しかしまあ、展示機能の部分は、本当に「注文通り作ったんだろうな」と感じました。
凄い即物的だったので。まるで、軍需工場の格納庫を連想しました。
というわけで、モネ展に行きながら、国立新美術館という、新しいスポットを楽しんできました。