映画「わらの犬」のDVDを六月上旬に見ました。
原題は「Straw Dogs」。この題は、老子の「語録」から引用したもので、「護身のために焼く、取るに足らない物」という意味だそうです。
□Wikipedia - わらの犬
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82...□Yahoo!辞書 - 老子(こちらはおまけ)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E8%80... 1971年の白黒映画で、監督はサム・ペキンパー。
主演はダスティン・ホフマン。ダスティン・ホフマンが映画界に進出して名声を得た「卒業」(1967年)から、四年後の作品です。
「卒業」は、ツタヤ ディスカスで予約したので、そのうち見る予定です。(もう見ました)
映画は、非常に根源的でシンプルな話で、私の好みでした。しかし、誰もが楽しめるかどうかは疑問の作品だとも思いました。
特に、「待った無しの暴力」が、人によっては受け付けない可能性があります。
私は、こういった無駄のないストイックな作品が好きなので気に入りました。
また、別の意味でも気に入ったのですが、それについては後述します。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤に入るところまで書いています)
主人公はアメリカ人の数学者。彼はイギリス人の妻とともに、彼女の故郷に行き、数ヶ月の滞在をすることに決める。
その地には、野卑な地元民の若者が多くいた。
主人公は気が強い方ではなく、そういった男たちがからかうのに格好の相手となる。
また、主人公の妻は美人であり、ブラジャーをせずに外出するなど、挑発的な格好をよくしていた。
地元の男たちは、主人公を狩りに誘い、その隙に妻をレイプする。妻はそのことを夫に言えずに、二人はぎくしゃくとした関係になる。
それから数日後、教会での集まりがあった。
そこで、一人の精神薄弱者と女性が姿を消す。その男は、以前から問題があると言われていた男だった。
まだレイプによる心の傷が癒えていなかった妻は、人前に出ることで疲労する。主人公は彼女を連れて家に戻る。
その途中で、精神薄弱者を車ではねてしまう。彼は自分の家に彼を運び込み、医者を呼ぼうとする。
しかし、姿を消した女性の父親と、地元の若い男たちは、精神薄弱者をリンチにするために、主人公の家に殺到する。
主人公は、難を切り抜けるために、元軍人で地元民に一目置かれている男を呼び、事無きを得ようとする。
しかし、女の父親が弾みで彼を殺してしまう。女の父親と、若い地元民たちは、その現場を見てしまった主人公夫婦を、口封じのために殺そうとする。
家に立てこもった主人公は、勇気を奮い、殺到する地元民たちを、一人一人、殺し始める。
映画の序盤の感想としては、「奥さん、そんなエロい格好をしたら、そりゃあ襲われますよ」でした。
美人の女性が、田舎町で、ブラジャーをせずに、薄手のセーターを着て、乳首を立たせて練り歩く……。
そして、その様子を、カメラが執拗に取り続ける……。
どんなに鈍い人でも、「こりゃあ、レイプされたりするよな」と思います。
宗教によっては、女性の露出を禁じています。それは流石に前時代的で、古い因習だろうと思いますが、過剰な露出があらぬトラブルを招くのも事実だと思います。
レイプはする方が絶対的に悪いのですが、だからといって、その毒牙に敢えて掛かりそうな格好をするのはどうかと思います。危険は事前に避けた方がいいです。
まあ、映画として非常にベタで分かりやすい描写なので、正しい描き方だとは思うのですが、そういったことを考えてしまいました。
あともう一点、後半になるに掛けて思ったのは、「ダスティン・ホフマンが演じる主人公の立場に非常に共感するな」ということです。
だいたい私は、故郷を離れて、地元コミュニティと無縁の暮らしをしている人間です。
そして、地元で団結している体育会系乗りとは真逆の考え方をしている人間です。
なので、この映画の主人公の苛立ちや、最後の暴発は物凄く共感できる部分があります。
また、主人公は数学者で、自分が考え事をしている時や仕事をしている時に、他人に邪魔されるのを極度に嫌います。
これも、非常に共感できます。私も、そういった理由で、電話が大嫌いです。物を考えている時に、その思考を断ち切られると、また最初から考え直さないといけないので。
でもまあ、一番共感するのは、地元の団結に対する、個人としての対立です。
おかげで、珍しく主人公に感情移入しながら見ていました。
終盤の、地元民撃退のシーンは、素直に「頑張れダスティン・ホフマン!」と思いました。
でもまあ、普通の人はそういった意味で共感はしないと思います。そのため、私とは違う感想を持つと思います。
なので、「万人にはおすすめできないよな」と思いました。
しかし、故郷を離れて仕事をしていて、「故郷どっぷりの人に違和感を感じる人」には、共感できる部分の多い作品なのではないかと思いました。
少なくとも、地方出身者の関東在住者には、割りと共感できる映画かと思います。
でも、多分、大多数の人は、そういった見方はしないと思いますが。