映画「シリアナ」のDVDを六月中旬に見ました。
2005年の作品です。公開当時、見ようと思っていたのですが、タイミング的に見逃した作品です。
監督と脚本は、スティーヴン・ギャガン。「トラフィック」の脚本の人ですね。
製作は何人かいますが、その中に、ジョージ・クルーニーや、スティーヴン・ソダーバーグの名前があります。
ソダーバーグで今まで見ているのは、「セックスと嘘とビデオテープ」「イギリスから来た男」「トラフィック」「オーシャンズ11」「ソラリス」です。割りと見ていますね。
「トラフィック」では、スティーヴン・ギャガンが脚本、スティーヴン・ソダーバーグが監督だったので、そのままスライドしている感じです。
あと、ソダーバーグは、ジョージ・クルーニーが監督、脚本、出演していた「グッドナイト&グッドラック」の製作にも名前を連ねています。また、「ソラリス」でも一緒に仕事をしています。
今回の映画の主役級の人物は、ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライト。
ジョージ・クルーニーとマット・デイモンは、「オーシャンズ」シリーズで仲がよさそうです。
なんだか、そういった「仲良しグループの繋がり」が揃ったスタッフとキャストなんだろうなと思いました。
あと、ジェフリー・ライトについて調べてみたら、「007/カジノ・ロワイヤル」に出ていました。ギャンブルが弱いCIAエージェント役です。
そういえば、そうかもしれないと思いました。
映画は、「トラフィック」の路線に近いなと感じました。
石油利権に関する、アメリカやアラブの国々の話です。
面白かったですが、凄い盛り上がるタイプの作品ではありません。
主役級の人物が三人いることでも明らかですが、視点が入り乱れるタイプの作品です。そして、それが微妙に繋がっており、中盤以降、全体像が浮かび上がってくるという傾向のものです。
強烈などんでん返しを楽しむといった方向性の作品ではなく、じわじわと浮かび上がってくる事実と、その泥沼さに、ぐったりとするのを楽しむといった映画です。
ドンパチ系の映画ではなく、社会派系の映画なので、そういった話が好きな人は楽しめると思います。
逆に「映画で頭を使いたくない」といった人は楽しめないと思います。
個人的に、見終わって思ったのは、「少女マンガ系だよな」ということです。
それも白泉社系。樹なつみとかが、描いていそうな感じです。
アラブ系の王子様が出てきたり、国家的な規模で話が進展したり、大企業が絡んだり、なんだか「花咲ける青少年」を思い出しました。
美形化したら、そのままそんな雰囲気でした。
さて、映画のタイトルの「シリアナ」なのですが、大方のみなさんと同じように、初めて名前を聞いた時には「尻穴」と脳内変換されました。
DVDには「みんなつながっている」と、煽り文句が書いてあります。
「尻穴」が、「みんなつながっている」のかと思いました。
ホモの人がずらりと繋がって、ぐるりと一周している姿を想像しました。
たぶん、みんな、同じ想像をしていると思います。
で、真面目な話に戻るのですが、「シリアナ(SYRIANA)」という言葉は、辞書を引いても出てきませんでした。
現地の辞書にはあるのかもしれませんが、Yahoo!辞書と、英辞郎には載っていませんでした。
そこで、「たぶんこうだろうな」と思ったのは、「シリアという地域を、アメリカのn番目の州」と見立てた言葉じゃないかなということです。
ルイジアナとか、インディアナみたいな感じで、「シリア+ana」で「シリアナ」。
間違っている可能性大ですが、内容的にはそんな感じの映画だよなと思いました。
その後、教えてもらいましたが、映画のパンフレットには、”ワシントンのシンクタンクのジャーゴンで、アメリカの利益にかなう、中東の新しい国”と書いてあったそうです。
概ね合っている感じです。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています。結構複雑なプロットなので、うろ覚えでどこまで書けるか、実験的な意味も込めて、だらだらと長く書いています)
CIAの現地工作員は、アラブの町でアメリカ製ミサイルを見掛ける。だが、それがどこに運ばれていくのか確かめることはできなかった。
黒人弁護士は、二つの石油会社の合併に関して、仕事をすることになる。しかし、そこには不正が隠されていた。アメリカの法律で禁止されている、現地の王族や大臣への賄賂が行われていた。
妻と二人の子供を持つ経済アナリストは、アラブの国王のパーティーに出席する。そこには国王と、第一王子がおり、豪華な家は完全にIT化されており、その設備は第一王子が設置したものだった。
だが、その設備には欠陥があり、経済アナリストの息子がプールに入った時、漏電が起こり、息子は感電して死んでしまう。
CIAの現地工作員は、本国に呼び戻される。そして、非常に高い地位の者から呼び出されて、再び現地入りし、特殊な工作を行うことを指示される。
黒人弁護士は、石油会社の側と、不正を摘発する検事の側の、二つの勢力の間で揺れ動く。彼は、したたかに遊泳して、自分自身の生き残りを図ろうとする。
また、石油会社では、石油採掘を自社にとって都合よく運ばせるために、思慮の足りない第二王子を王位に付けようと企んでいた。
息子を失った経済アナリストは、その謝罪として、第一王子から多額の金をもらう。そして、その縁で、第一王子の私設アドバイザーの仕事を始める。
第一王子は、ヨーロッパに留学経験があり、アメリカの利権から距離を置きつつ、自国の正しい民主化を進めていこうとしていた。経済アナリストは、第一王子に心酔し、この事業を成功に導こうとする。
二つの石油会社の合併話は、現地に思わぬ余波を生んでいた。会社の統合により、経営の効率化が図られ、大量の失職者を生み出していた。
そうやって無職になった若者は、イスラム教の寺院に通っているうちに、そこに出入りする聖職者に声を掛けられる。それは行き場を失った若者たちをテロへと勧誘する魔の手だった。
CIAの現地工作員は現地入りする。彼に課せられた仕事は、第一王子の内偵だった。だが、彼は仕事に失敗し、拷問を受けて本国に送り返される。
石油会社は、第二王子を後押しして王位に付ける。このままでは国がアメリカの利権の食い物にされてしまう。そう考えた第一王子は、革命も辞さない強硬な態度を取る。
失職した若者はテロリストになる道を歩んでいた。彼は、一つのミサイルを渡される。それは、CIAの現地工作員が、かつてアラブの町で見掛けたミサイルだった。
CIAの現地工作員は、自分の仕事が、アメリカにとって邪魔な第一王子を暗殺するための下準備だと知る。彼はその国の情勢をよく理解していた。その国には第一王子が必要だった。
工作員は、第一王子を救うために、再び単身現地入りする。
黒人弁護士は、何人かの大物を切り捨てることで、二つの石油会社の合併を成功させる。そして、現地のガス田の操業が開始され、最初の船が出港する。
CIAの現地工作員は、第一王子に暗殺の事実を告げるために必死に近付こうとする。
しかし、時は遅く、ミサイルによる爆撃のために、第一王子は暗殺され、CIAの現地工作員も巻き添えを食って死ぬ。また、その場にいた経済アナリストは、辛くも命を取り止め、世界の理不尽さを知る。
アメリカ本国では、「今年の石油人」を選ぶパーティーが行われていた。だが、同じ頃、天然ガスを運ぶ最初のタンカーは、現地の若者による自爆テロで吹き飛んでいた。
経済アナリストは、本国に戻り、妻子と再会する。
映画を見ながら思ったのは、「第一王子がんばれ」です。
まあ、がんばったせいで、とんでもない目にあってしまうのですが。
こういうのを見ていると、世の中をひっくり返すというのは本当に難しいなと思います。
アメリカの映画なのですが、アメリカを批判して、かなり、アラブ側によった描き方をしているのが印象的でした。
あと、これだけの話を128分に押し込めるのは、けっこう力業だよなと思いました。
人によっては、話を追えなくなるかもしれません。まあ、普通に映画を見慣れている人には、大丈夫な程度の密度なのですが。
でも、世の中には「市民ケーン」の落ちに対して「全く訳が分からない」と言う人もいるので、そういう人は脱落しそうだなと感じました。
どうでもよいですが、俳優についてです。
最初、ボブ(現地工作員)が、ジョージ・クルーニーだと気付きませんでした。
かなり体を太らせて、髭を着けていましたので。
他の映画を撮る時は、あそこから体を絞らないといけないのかと思うと、俳優というのは過酷な仕事だなと思いました。
まあ、ハリウッド俳優は、それだけのギャラをもらっているのですが。