映画「狼たちの午後」のDVDを九月上旬に見ました。
1975年の映画で、原題は「Dog Day Afternoon」です。
個人的には「狼たちの午後」というよりは、「野良犬たちの午後」とした方が似合うなと思いました。
主人公には、狼といった研ぎ澄まされたものはなく、犬のような汚れたイメージしかありませんでした。
映画はそれなりに楽しめましたが、突き抜けた面白さはなかったです。主人公の、アル・パチーノの演技は凄かったですが。
さて、この映画の監督は、シドニー・ルメットです。「十二人の怒れる男」や「ネットワーク」、「セルピコ」の監督です。
「セルピコ」(1973年)では、アル・パチーノと組んでいます。この映画はその二年後なので、かなりアル・パチーノの実力を買っていたのでしょう。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の中盤ぐらいまで書いています)
主人公は、臆病な友人と、ベトナム帰りの友人とともに銀行強盗に入った。
しかし、予想外のことばかりが起こる。まずは、臆病な友人が逃げ出した。そして、銀行に金がほとんどなかった。
主人公と残りの友人は失望する。そして、銀行を出て行こうとする。
だが、そこに、非常に悪いタイミングで警察がやって来る。そのために、主人公たちは、頭取と女性社員たちを人質に取り、立てこもる羽目になる。彼らは、さっさと帰りたかっただけなのに。
そして、主人公たちは、やるはずのなかった篭城を始めることになる。
人質たちは協力的だった。なぜならば、主人公たちが、ただ無事に帰りたがっているだけなのを知っていたからだ。
そして、主人公は警察と脱出の交渉を始める。だが、その交渉はすんなりとはいかなかった。
警察やマスコミは主人公の過去を調べ始める。そして、彼が家庭を持っているのに、ゲイとして男性とも結婚している事実を突き止める。
連れて来られた男の“妻”は、精神病院に入っている患者だった。
そして、その事実はマスコミによってテレビに流れる。
事件は微妙な方向に向かい始める。野次馬が大量に集まり、ゲイの応援団がやって来る。主人公は野次馬たちを煽ったり、金をばらまいたりする。
マスコミに注目されながら事件は緩慢に進展していく。
そして、海外脱出のために用意させたジェット機の待つ空港に主人公たちと人質は向かう。しかしそれは、FBIの仕掛けた罠だった……。
なんだか、緩い映画だなと思いました。
主人公に明確な動機がなく、状況に追い詰められて手を打っていくという内容です。個人的には、知略を廻らせた戦いの方が好みです。
アル・パチーノの演技は鬼気迫っていましたが、話自体は「典型的な行きずり銀行強盗の失敗作」という感じでした。
一応、実話が元になっているそうです。
あと、主人公の友人のサル役のジョン・カザールがよかったです。
寡黙で臆病で死にたがっている絶望系キャラをよく熱演していました。
出ている映画を見てみると、「ゴッドファーザー」(1972年)、「カンバセーション…盗聴…」(1973年)、「ゴッドファーザーPARTII」(1974年)、「狼たちの午後」(1975年)、「ディア・ハンター」(1978年)と五〜六年しか活動していません。
元々舞台俳優のようです。
DVDのキャスト紹介には、「ディア・ハンター」が遺作と書いてありました。享年42歳ですか。若いです。
もうちょっと長生きしていたら、もっといろんな映画に出ていただろうになと思いました。
□Wikipedia - ジョン・カザール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82...
映画の感想を書いた後、元になったのは有名な事件だということを教えてもらいました。
しかし、私が生まれる前のことなので、さすがにぴんときませんでした。
時代背景が肌で分かるかどうかは、やはり観賞時の受け取り方に大きな違いが出るなと思いました。
人間が認識を共有できる範囲は想像以上に狭いです。やはり勉強は必要です。