映画「ミッドナイト・エクスプレス」のDVDを九日前に見ました。
1978年の作品で、監督はアラン・パーカー、脚本はオリヴァー・ストーン、主演はブラッド・デイヴィスです。
オリヴァー・ストーンは、これでアカデミー賞を取っています。
DVDにはメイキングも付いており、実話を元にした映画ということでした。
汗と泥にまみれて疲弊していくという感じの映画で、焦燥感がひしひしと伝わってきました。
ちなみに、序盤で出てくるので書きますが、ミッドナイト・エクスプレスという言葉は、刑務所の隠語で脱獄を意味するそうです。
以下、粗筋です。(実話なので、特にネタバレを気にせず書きます)
麻薬の密輸の罪でトルコの刑務所に入った米国の青年ビリー・ヘイズ。彼は、四年の刑期終了間近に、裁判をやり直され、懲役三十年になる。
彼は絶望の中、どんどんやつれていく。そして、刑務所のさらに深部に送られ、死を待つだけの状況になる。
彼は、自由を取り戻すために、困難な脱獄を決意する。
映画は、大きく分けて、前半と後半に分かれます。
前半では、出来心から麻薬を密輸しようとした青年が、空港で逮捕されて、焦燥感に駆られながらも、四年の刑期を全うしようとします。
その間、拷問を受けたり、脱獄の誘いなどもありますが、先が見えているので、どうにか耐えようとします。
トルコの刑務所は、まるで北斗の拳のような世界で、暴力と貧困が渦巻いています。本当に、北斗の拳そっくりです。
これは、映像の力が強いと思います。映像を見ただけで、混沌と熱気と焦燥が伝わってきますので。
しかし、残り数ヶ月となった時に、国際情勢の変化から、見せしめ的に密輸犯を無期懲役にする方針に変わり、裁判はやり直しになります。
結果的に懲役三十年になり、主人公は絶望します。あと少しで出られると思っていたところでの、三十年ですから。
そこからが後半で、主人公は外を本気で夢見始めます。そして、足掻き始めます。しかし、そのせいで、さらに刑務所の深いところに送り込まれてしまいます。
後半、主人公はどんどん絶望的なところに追い込まれていきます。前半もかなり焦燥感を感じる映画なのですが、後半はさらに輪を掛けて精神的にきつい状況になっていきます。
まあ、あそこまで追い込まれたら、死ぬか脱獄するかしかないよなと思います。
この映画は、主人公が悲惨な状況で足掻く作品です。
ただ、前半の収監は自業自得なので、後半でも微妙に感情移入しにくい部分があります。主人公が悪いのは悪いので。
映画的には、無実の罪で収監された方が盛り上がるのですが、実話を元にしているので、それはまあ仕方がないなと思いました。
映画で、一番印象に残ったのは、終盤の主人公のオナニーシーンです。
明日にはもう死ぬかもしれないという絶望的な状況で、身も心もぼろぼろになっている主人公に、面会人として恋人がやってきます。
その恋人に主人公は「裸を見せてくれ」と頼みます。恋人はいやいや胸をはだけさせ、主人公は、それを見ながらガラス越しに必死にオナニーをします。
極限状態を感じさせるシーンで、かなり心に来ました。
またそれとともに、まだこの主人公には生きる力が残っているとも感じました。
あれは、いいオナニーシーンだと思います。
まあ映画で、そんなにそういったシーンがあるわけではないのですが。
DVDに付いていたメイキングによると、この映画が切っ掛けで、米国とトルコの間で、相互に犯罪者を交換するようになったとのことでした。
確かに、そういった切っ掛けになりそうな壮絶な映画だなと思いました。