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2007年11月13日 12:37:10
ミッシング
 映画「ミッシング」のDVDを十月上旬に見ました。

 1982年の映画で、監督はコンスタンチン・コスタ・ガブラス。原作がトーマス・ハウザーで、脚本が監督と同じコンスタンチン・コスタ・ガブラスとドナルド・スチュワートです。

 1973年にチリで起きたクーデターで失踪したアメリカ青年の話を元にした映画です。

 映画を見ている最中、国名が一向に出てこないので「たぶん南米辺りだと思うけどどこだろう」と思って調べたらチリでした。

 冒頭で書いておいてくれれば、映画中に携帯で調べなくて済んだのに。



 さて、映画は、ミステリ仕立てで進みます。

 チリで軍事政権のクーデーターが起こり、そこでリベラルな新聞を作っていたアメリカの青年たちの一人が軍人にさらわれ、その妻が大使館を通じて探すが、全く見つからないという話です。

 映画では、そこに青年の父親である実業家が乗り込んできて、息子の妻と共同で背後関係を洗い始めて、次第に事件の全貌が分かって行きます。



 映画では、大きな対立と小さな対立が用意されています。

 まず、大きな対立は、軍事政権、アメリカ政府、一般市民の間の確執です。

 そして小さな対立では、詩的な青年夫婦と超現実的な父親という、水と油の関係が描かれます。

 これらの対立から明らかなように、ドラマとしては小さな対立が和解に向かい、大きな対立はその醜悪な面が次第に明らかになって溝が深まっていきます。

 こういった二つの「レイヤーの違う対立」を用意するのは、物語の作り方として理に適っています。

 映画で描きたい主題は上層レイヤーの大きな対立ですが、それだけでは観客が感情移入をすることができません。

 なので、もっと卑近な下層レイヤーが必要になってきます。この「映画の間口」としての下層レイヤーには、誰にとっても身近な「親子の対立」を持って来ています。

 そしてこの二つは、物語の両輪となって、映画を盛り上げています。



 さて、この映画の主人公は、青年の妻と、青年の父になります。

 この二人が、青年の足取りを追っていくことで、二つの対立の物語が徐々に進行していきます。

 大きな対立は観客に静かな怒りを感じさせ、小さな対立は観客の涙を誘います。

 特に、その表現として上手いなと思ったのは小さな対立の描き方です。

 映画の序盤では、青年とその妻は、理想化肌で地に足が付いていない「少しファンタジーの入った人間」として描かれます。

 対して父親は実業家で現実主義者で、この息子を嫌い抜いています。

 しかし、自分が息子の足跡を追って行くことで、徐々に息子が「役に立たないことをしていた人間」ではなく、「彼なりにしっかりとした考えを持って行動していた人間」だったと理解していきます。

 そして、これまで嫌い抜いてきた、青年が作った「役に立たない物」が、父親にとって「掛け替えのない物」に変貌していきます。

 この「価値観の変化」の描き方が上手いなと思いました。



 具体的に言うと、序盤に「青年が、何故かチリにまで来て、作ろうとしていたアニメ映画のスケッチ」というアイテムが登場します。

 これは、父親にとっては破り捨てたくなるような無価値なものです。

 しかし映画の終盤では、これは彼の心にとって非常に重要な物になります。

 こういった分かりやすい描き方は、非常に勉強になります。



 ここで少し、物語について書きます。

 物語は本来、登場人物の変化を描くものです。

「物語を経験することで価値観が変わる」「物語の中で決断して人生を変える」「物語の中で、変わらないことを選んで、周囲が変わるのに自分は変わらないという、相対的な変化をする」など、そのバリエーションは様々ですが、物語の基本は「精神が変容すること」です。

 この映画では、そう言った部分が、「象徴的なオブジェの意味が変わる」という分かりやすい表現でなされており、基本に則ったよくできた展開だなと思いました。



 というわけで、単なる「チリのクーデーター」を描くだけでなく、もっと身近な「親子の話」を、分かりやすく描き、物語の両輪にしてていたので、上手いなと思いました。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています。ミステリー系なので、結末を知りたくない人は読まないで下さい)

 チリで、軍事政権によるクーデーターが起こった。

 チリ在住のアメリカ人青年夫婦も、そのクーデターに巻き込まれる。

 そしてある日、妻が外出して戻ると、家が荒らされていた。近所の人の話では、軍のトラックがやって来て、青年を連れ去ったという。

 妻は、アメリカ大使館に調査を依頼するが、のらりくらりとした対応で埒があかない。

 そうしている内に一週間以上が過ぎ、青年と絶縁状態に近い状態にあった青年の父親が現地に乗り込んでくる。

 青年の父親はアメリカで実業家をしており、政治家を動かして大使館に圧力を掛けながら調査を進める。

 最初、父親と青年の妻はそりが合わなかった。

「この息子にしてこの妻あり」といった感じで、父親の目から見て空想的な生活を送っていたからだ。

 そして父親は、青年の妻が、アメリカ大使館と対立していることを非難する。

 だが、チリに来て数日経ち、息子の妻と調査を続けていくうちに、彼もアメリカ大使館の対応がおかしいことに気付き始める。

 彼らは何かを隠している。あるべき情報がなく、出てくるべき情報が出てこない。

 義父と娘は、共通の目的から団結して調査を進めだす。

 その調査を通じて、父親は息子が何をやっていたのかを次第に理解し始める。彼はチリで、アメリカの新聞を翻訳する仕事をしていた。

 空想だけで生きていると思っていた息子は、自分の考えを持っており、きちんと仕事をしていた。

 そして、そのせいで軍に目を付けられたのではないかと父親は考えだす。

 しかし、さらに調査を進めていくと、違う事実が明らかになっていく。

 クーデターの少し前に、青年はアメリカ軍や大使館の人間と接触していた。そして、アメリカが軍事政権のクーデターを支援する話をたまたま聞いていた。

 それは、実際に事件がおこらなければ何の意味もない話だったが、実際にクーデターが起こった後では、国家機密に属する物だった。

 息子は、軍事政権に拉致されていたが、その軍を陰で操っていたのはアメリカ大使館だった。

 父親はその事実を知って愕然とする。そして別ルートから、父親は息子の死を知らされる。

 息子は既に処刑されており、壁に塗り込められていた。取り出された死体も引き取るまでに数ヶ月掛かり、それが実際に息子のものかどうか分からない有り様だった。

 父親はアメリカ政府と大使館の人間を相手取って裁判を起こす。しかし、その裁判は政府の方針で握り潰された。



 映画では、最後の裁判の下りは文章でざっと説明してエンディングに入ります。

 闇に葬ろうとした事件も、原作や映画で世間に出たことになります。

 国の利益のために個人が犠牲にされるケースは非常に多いと思うのですが、こうやって世間の目に触れるものは少ないと思います。

 こういった映画が撮れなくなる社会は避けなければならないなと感じました。



 クーデターの描写に関しても少し書いておきます。

 映画は、クーデターの描写に関しては、ことあるごとに人が簡単に殺されていくのが印象的でした。

 人の命が軽過ぎる社会は、明らかに非生産的なので避けたいです。

 そして、自分のように、「世間が平和で初めて生きていくことが許される人種」にとっては、そういった社会は敵視すべきものです。

 歴史的に見て、安定社会が長く続くのは非常に難しいので、気を抜けないよなと思いました。



 あとどうでもいいですが、青年の妻役の女優シシー・スペイセクは、着飾った時よりも、ぼんやりした服装の時の方が可愛かったです。

 まあ、美人が隙のある緩い格好をしているのは、けっこう見た目にもいいです。

 たとえば、美人がパジャマみたいなダボダボの服で、頭ぼさぼさで、お化粧をせず、お洒落でない黒縁眼鏡を掛けている姿は非常にそそられます。

 なんか、可愛いので。

 映画の内容とは関係ないですが、メモしておきます。
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