映画「愛と追憶の日々」のDVDを九日前に見ました。
1983年の映画で、原題は「Terms of Endearment」。「Endearment」は、「(人に対する)愛情を示す行為、言葉」のことだそうです。
監督はジェームズ・L・ブルックス。脚本はアンジェイ・バートコウィアク。
主演はデブラ・ウィンガーとシャーリー・マクレーン。助演はジェフ・ダニエルズとジャック・ニコルソン。
えー、DVDには映像特典で解説が入っていたのですが、この映画はコメディだそうです。見ている間は気付きませんでした。
そういえば、ジャック・ニコルソンが「引退した宇宙飛行士で、好色な駄目男で、なぜか隣に住んでいる」という設定は、もろにコメディです。
映画を見ている最中にも、その設定に「なんで?」と思っていたのに、コメディだと気付きませんでした。
結局、最後まで「宇宙飛行士」の設定の理由は何も出てこなかったです。そりゃあ、コメディなら理由はないでしょう。
コメディということで納得はしましたが、映画を見ている間は、全く笑えませんでした。
ともかく主人公のエマがむかつく奴で、ムカムカしながら見ていました。
さて、映画は、母親役のシャーリー・マクレーンとジャック・ニコルソンの恋愛パートと、娘役のデブラ・ウィンガーとジェフ・ダニエルズの夫婦パートが交互に進みます。
この、母親の恋愛パートはそれなりに面白くて、ホロリとさせるところもあり、なかなかよかったです。
しかし、娘の夫婦パートがひどかったです。
全く笑えないといか、むかつくばかりです。見ていて思ったのですが、これは文化的な背景が大きいと思います。
そのことを痛感したのは、以下のようなシーンです。
娘(既に二児の母)がスーパーマーケットに買い物に行きます。しかし、レジに来た段階で財布にお金が足りません。
そこで、娘は「お金がないけど商品をくれないか」と頼みます。レジ係の女性は「残念ながらそれはできません」と答えます。
そのやり取りを見かねた娘の知人の男性が、お金を少し貸してくれて、どうにか商品を購入します。
娘はレジ係の女性に「あんたニューヨーク出身でしょ!」と喧嘩腰に文句を言って店を出て行きます。
その後、お金を貸してくれた男性が「よく言った、すっきりした!」といったようなことを言い、娘は子供を小突いて追い払い、その男性と不倫の関係になります。
うーん。
アメリカの田舎って、こんな感じなのでしょうか?(アメリカはほとんど田舎の国ですが)
日本人の感覚というか、私個人の感覚からすれば、この一連の流れは全く笑えないばかりか、むかつく一方なのですが。
「金を払わん奴が悪い!」「子供を小突いて追っ払って不倫? アホか!」という感じです。
駄目です。むかつくばかりです。
このシーンに来た段階で、「ああ、この映画のターゲット層ではないんだな、自分は」と思いました。
アメリカ人のかなりの層には受けるのかもしれませんが、私は呆れるばかりでした。
そうやって私にとって「笑えないシチュエーション」ばかりが積み重なった挙句、最後は娘が癌になり、子供たちに急に「いい母親」ぶります。
うーん、これは「駄目な女も、死に際には、いい母親ぶる」というコメディーということなのでしょうか。
笑いの文化的背景が違うので、笑えないなあと思いました。
「笑い」の中でも、こういった文化的背景が共通していないと共感できない「笑い」は、ちょっと難しいです。
たぶん、「お国柄」というものがあるのだと思います。
なんというか、国が違うと「共有できないものが多いな」というのは、よく見受けられます。
逆に母親パートは、文化的背景と関係なく楽しめるなと思いました。
普遍性のある笑いや泣きが多かったです。
その笑いや泣きの要素とは、「老い」と「性」と「恋愛」です。
こういったものは、文化的な差異なく、誰もが経験するものです。
つまり「老いの恋愛」「老いのセックス」。そういったもので、泣き笑いを描いているわけです。
これはなかなか楽しかったです。
というわけで、母親パートはよかったけど、娘パートは全然駄目だと感じる映画でした。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)
夫に先立たれた母親は、娘を女手一つで育てあげた。
娘は、大学の若い講師と結婚する。母親はその結婚には反対だった。
母親は、資産家で、男たちにも崇められるような存在だった。彼女は娘を片付けた後は、自分の家で悠々自適な生活を送っていた。
彼女の隣家には、元宇宙飛行士の男が住んでいた。女出入りの激しい彼を最初は毛嫌いしていた彼女だが、ふとした切っ掛けで食事をともにして互いに恋に落ち、恋人生活を楽しむ。
一方娘は、避妊という言葉を知らないのか、物凄い勢いで子供を生みまくる。そしてお金が足らないと母親に泣き付いてくる。母親は呆れる。
そして、彼女は「お金がない、お金がない」と夫に当たり散らす。
子供は父親に同情してかばおうとするが、娘は構わず夫を責める。
夫は教授に昇進する。だが、彼女は夫の不倫を疑い、自分も不倫を始める。
夫は学部長になることが決まり、その大学への赴任のために引っ越すという。彼女は不倫相手と分かれたくないので、その話に反対する。
そうしている内に、彼女は癌に罹っていることが分かり、夫も本当に不倫していることが判明する。
彼女は子供たちに、自分を愛するようにと言って死んでいく。
子供たちは、娘の母親に引き取られる。
映画を見ている間中、娘の旦那が可愛そうでした。
そりゃあ、不倫もするわな。と思いました。
なんというか、子供が父親に同情して、母親を嫌うのも分かります。
母親が駄目だと、子供は早熟になるのかもしれないなと思いました。