映画「現金に体を張れ」のDVDを十二月上旬に見ました。
1955年の映画で、原題は「The Killing」。監督・脚本はスタンリー・キューブリックで、白黒の作品です。
キューブリックのハリウッド映画第一作で、監督自体は二作目のようです。(一作目は「不安と欲望」とのこと)
最近見たキューブリックの古い作品がどれもよかったので、期待して借りてきました。
面白かったです。
この映画は、競馬場から現金を強奪しようとする犯罪グループの話です。そこに駄目な男と、欲深い女が絡み、綻びを見せながら結末に至ります。
ラストの結末は2種類あるのですが(集団としてのラストと、主人公のラスト)、どちらも今見れば予想通りの展開なのですが、それでもニヤリとさせられるものでした。
こういった様式美の話は、私は好きです。
さて、映画の物語は、かなり整理されています。
話としては、先ほど書いた通りです。グループ物の話で、映画の冒頭では群像劇っぽく描かれるのですが、すぐに幹と枝に切り分けられます。
そして、枝(脇役の話)は物語に彩りを与える演出として使われ、それとは別に、幹の部分(主要登場人物の話)は二つに切り分けられます。
そして、その幹の部分は、並行では進まず、サンドイッチ構造を取りながら、直列で連結されます。
以下、二つの幹と、枝の部分を示します。
・幹1:犯罪グループの首謀者。最近出所してきた。彼女がいる。一仕事して、彼女と高飛びしようとしている。
・幹2:犯罪グループに入った一般人。小心者。彼を愛していない欲深な妻に振り回される。
・枝:犯罪グループのその他のメンバー。首謀者にスカウトされたり、それぞれの仕事を行ったりする。
二つの幹は、以下のように展開されます。
・映画の冒頭1:幹1
・映画の冒頭2:幹2
・映画の本体:幹2(および幹1)
・映画のラスト1:幹2
・映画のラスト2:幹1
つまり、映画の中心部分は幹2なのですが、それを挟むようにして幹1が存在しています。
そして、この幹1が、全体を犯罪映画として上手くまとめています。
こういうやり方もありなのだなと思いました。
以下、粗筋です。(中盤の終わりぐらいまで書いています。特にネタバレはないです)
出所してきた元犯罪者は、一仕事することに決め、必要な仲間を集めた。仕事は競馬場の現金強奪。
仲間たちは、互いに関係するメンバーだけとしか面通しされず、全体を把握しているのは、首謀者だけだった。
そのメンバーの一人として、競馬場職員の男がいた。
彼はうだつの上がらないサラリーマンで、美人で強欲な妻に愛想を尽かされている時期が長く続いていた。
彼は、この犯罪で大金を作り、妻の愛を取り戻そうと考えていた。
しかし、彼女は既に別の男を見つけていた。そして、夫の計画を嗅ぎつけ、金を全て奪おうと考えた。
彼女は、情報収集のために夫をつける。しかし、首謀者に見つかってしまう。
首謀者は彼女に犯罪が終わるまで大人しくしているように言い含める。しかし、そんなことで手を引く彼女ではなかった。
彼女は夫を焚きつけながら、最終的に全ての現金を手に入れようと企む。
そういった中、犯罪が行われた。
犯罪グループのメンバーたちは、それぞれの役割を果たしながら、圧倒的な現金を獲得しようとする。
しかし、その犯罪の果てには、驚くべき結末が待っていた……。
結末は予想通りです。
タランティーノの映画の一つを思い出します。この映画の影響があるのかどうか、気になるところです。
あと、どうでもいいですが、競馬場の警備の甘さは、古い時代ならではだと思います。
現在ではこの程度のセキュリティーということは、ありえないでしょうから。
当時でも、この程度だったのかは、少し気になりました。
まあ、人間がやることですから、穴があるのは当然かとは思いますが。